品種ピックアップ

品種ピックアップ

2022/2/21掲載

根強い人気の「紅まくら」
〜おいしさの秘密と差別化をねらう栽培ポイント〜

ユニークな外観が目を引く「紅まくら」。

温暖化の影響か「暑いっ!」と感じる日が増えている気がします。猛暑日の多さに比例して、スイカの消費は好調で、全国的に卸売市場価格は上昇中です。一方、直売所やネット通販も巣ごもり需要をうけて人気ですが、リピーターをつかむには真においしいスイカを出していきたいところです。

枕型スイカ=おいしい!
嗜好品であるスイカはやはり「おいしさ」で差別化するのが一番で、見た目にそれが分かればなおよいでしょう。誰が食べても分かる圧倒的なおいしさで枕型の「紅まくら」は、そんなニーズにうってつけのスイカです。そのおいしさの秘密と、それを引き出す栽培ポイントをご紹介します。

タキイ研究農場 岡田 淳

ここがポイント! 「紅まくら」栽培法

糖度を上げるには

私たちはスイカのおいしさを①糖度②食感③味に因数分解しています。「紅まくら」は糖度が高い品種ですが、その要因は大きめの葉で多くの光を受け、たくさん作った糖分を、つるや根ではなく果実に集中して送る性質にあります。その反面、着果後に草勢が一気に落ちるリスクがあり、葉の色が抜けたり、しおれたりすると糖度は上がりません。着果までに、養分がこなくても働けるがっちりした茎葉と広い根圏をつくることがポイントです。活着後は潅水を極力控え、被覆資材を開閉して蒸しこみを避けましょう。

シャリ感を出すには

スイカといえば独特のシャリシャリした食感も重要です。近年はカット販売向けの緻密な硬肉の品種が多いなか「紅まくら」は果肉の繊維が粗く、きめの細かいかき氷のような心地よい噛み応えとともに果汁があふれ出す本来のシャリ感をもっています。実は食感も栽培の影響を受けており、株がばてると、果肉の組織も弱くフニャッとした食感になってしまいます。もしも、着果後に草勢が落ちる兆候が見えたら、液肥や葉面散布で草勢を維持しましょう。

草勢に注意し葉を健康な状態に保ちましょう。

草勢に注意し葉を健康な状態に保ちましょう。

おいしさの秘密に迫る!

衝撃的な甘さ!糖度12〜13度・・・以上!?

「紅まくら」は他品種に比べて酸味が少ないのが特長です。タキイ研究農場での分析の結果、全糖に対する有機酸の比率が小さいことが分かりました(図1)。また、甘みを強く感じる果糖の割合が高いとの報告もあります(図2)。鼻から抜ける香りも強く、それらトータルで糖度以上の甘さを実現しています。

図1 スイカの糖分含量

図2 スイカの甘み成分

リコピン豊富な「紅まくら」

トマトに多く含まれ美容や健康によいと知られているリコピン。実は、トマト以上に豊富に含まれているのがスイカです。従来品種に比べ濃い桃赤色の果肉が特長の「紅まくら」はリコピンも豊富です。同じスイカでも品種によって含量は違ってきますので差別化を図ってみてはいかがでしょうか。

スイカにおけるリコピン含量の品種比較

スイカは追熟しない

スイカはトマトやバナナのように収穫後は追熟して甘くなりません。収穫したときのおいしさ、甘さが勝負です。「紅まくら」は味への期待を裏切らない品種です。

本データは、細心の注意を払って行った実験・調査事実にもとづくものでありますが、実際栽培での結果を保証するものではありません。