品種ピックアップ
2021/2/22掲載
品種ピックアップ
2021/2/22掲載
近年の異常気象はトマト栽培にも大きな影響を及ぼしています。地球温暖化により昔に比べ気温が下がらず、裂果や日焼け、黄変果など高温障害が増加の一途をたどっています。また、ゲリラ豪雨など極端な気候変動も多く、湛水による根傷み、曇天などによる生理障害発生なども見られます。
このような気候変動による多くの問題と上手に付き合うためには、さまざまな方面からのアプローチによる対策が必要です。今回は、異常気象に耐えられるように“どのような根域を作るか”をテーマにして、関連する品種と生産資材についてご紹介します。
熊本研究農場 中山健治
タキイでは圃場に合わせて選択いただけるように「グリーンガード」に代表される浅根型の台木、深根型の「グリーンセーブ」、浅根+深根で根量のすぐれる統合型の「グリーンフォース」といったさまざまな台木を揃えています。
高温による青枯病の増加、極端な気候変化による草勢低下などを考えると、今後はより草勢維持のしやすい強勢台木であることに加え、いかに青枯病に強いかということが重要になってきます。その要望にお応えできるのが、新発表した「キングバリア」です。「キングバリア」は発根力が旺盛で根量も多く、深層まで広い根圏を形成する統合型の台木です。そのため、穂木の生育初期から後半まで樹勢維持がしやすく、しおれにも強くなっています。さらに、弊社の台木の中で最も青枯病に強い台木であり、土壌への適応幅も広く、不良条件下でも能力を発揮できる品種です。ぜひ導入をご検討ください。
キングバリア
青枯病に非常に強い耐病性をもつため、青枯病激発環境で威力を発揮。
グリーンフォース
初期から発根力にすぐれ、活着も速い。地力に乏しい圃場向け。
グリーンセーブ
草勢は初期中庸で後半は強い。耕土層が深い、肥沃な土質の圃場に向く。
グリーンガード
初期から強勢になりがちな肥沃地、耕土層が浅い圃場に適する。
Tm-2a=トマトモザイクウイルス(ToMV)Tm-2a型
【凡例】
穂木品種については、樹勢が強くスタミナのある促成・半促成栽培向けの「桃太郎ネクスト」、冬場の草勢維持のしやすい抑制用TY品種「桃太郎ホープ」、桃太郎シリーズの中でも裂果に強い夏秋用品種「桃太郎ワンダー」、高温期の着果も安定するミニトマト「TY千果」などがおすすめです。
桃太郎ネクスト
草勢が旺盛で、肩部黄変果・すじ腐れ果・軟果など、生理障害果の発生も少ない。
桃太郎ホープ
すぐれた低温伸長性に加え、節間が詰まりすぎず葉が込み合わないため、低日照下での採光性も良好。
桃太郎ワンダー
玉が硬く裂果に強いほか、チャック・窓あき・変形・空洞果などの生理障害の発生が少ない。
TY千果
裂果の発生やヘタどれが少なく、トマト黄化葉巻病(Ty-3a型)への耐病性をもつ。
また、健全な根を維持するには、栽培面でのフォローも重要です。気候変化に対応するためには、勘に頼る部分が大きい従来の栽培管理から、少しずつデータに裏付けされた管理方法へ移行していくのもいいでしょう。
今回紹介する「みどりクラウド」は、圃場にセンサを設置するだけで作物の生育環境や状況を自動で計測し、クラウドに記録できる装置です。データはPCやスマートフォンを使って、離れた場所からでも常時閲覧可能。ハウス内の環境(気温や湿度など)だけでなく、地温や土壌水分も計測・確認できるので、根域環境の把握に役立ちます。さらに導入コストも比較的安価で、圃場の“見える化”を手軽に実現可能なコストパフォーマンスの高い商品です。
みどりクラウド
データ計測のほか警報機能も付いており、環境の異常をメールやアプリで通知。承認した生産者同士でデータ共有もできる。
より簡易に土壌水分だけ分かればよいという方には、「土壌水分計 テンションメーター」がおすすめです。真空計を使用した測定器で、pF値を参考に、作物の状態に合わせた潅水タイミングを判断するのに役立ちます。
土壌水分計(テンションメーター)
圃場に設置して水分量を管理。写真の一般用のほか、「高節栽培用」や「ポット用」もある。
今回は“どのような根域を作るか”ということに焦点を当てましたが、もちろん遮光資材や循環扇の利用による施設内高温対策や、作物自体の活性化、土壌改良なども必要です。根の活性を維持するための酸素供給剤「オキソパワー5」、土の物理性を向上させる「グリーン・ベラボン」、不良環境時に栄養を補給できる「ヨーゲンアクセル」などさまざまな資材を効果的に活用して、異常気象を乗り越えていきましょう!
オキソパワー5
4〜5カ月の長期間にわたり、自足的に土壌へ酸素を供給する。
グリーン・ベラボン
畑に加えるだけで、通気性・排水性・保水性などの物理性を改善させる。
ヨーゲンアクセル
高い吸収率を誇る葉面散布剤。台風などの気象ストレスからの早期回復が期待できる。
2024年
秋種特集号 vol.58
2024年
春種特集号 vol.57