2017/07/20掲載
JA鳥取西部の白ネギの歴史は古く、明治の中期ごろから栽培が始まり、昭和の初期には弓浜半島主要品目となりました。その後各地区に栽培が広がり、西日本有数の産地となっています。
管内の白ネギ栽培面積は270ha(中心となる弓ヶ浜支部で150ha程度)。600人近くの生産者が属しています。生産者は5反未満の小〜中規模農家が多数ですが、若手を中心に法人化や大型化も見られます。春ネギは3〜5月(標高の低い平野部が中心)、夏ネギは6〜9月(標高の高い中山間地が中心)、秋冬ネギは10月〜2月(地域全体)、というように地域内のリレー出荷も行われ、周年出荷体制が構築されています。JAではこうした周年のメリットを生かし、安定した価格で優位販売を実現しているのです。
管内は5つの営農センターに分かれ、土質や標高(0〜800m)など千差万別なことから、品種構成は支部ごと、作型ごとに分かれています。弓ヶ浜の砂浜にハマヒルガオが咲き始めると初夏が訪れますが、「初夏一文字」は、11月から播種を行うトンネル栽培専用作型向きの夏ネギ品種としてJAの推奨品種となりました。トンネル作型は全体で4ha程度ですが、トンネル資材を唯一使う作型であることから、高価格が期待される作型です。「初夏一文字」は過去2年の試作で、そろいのよさと葉枚数(収量)がとれることなどが評価されてきました。
境港市の生産者は若い方を中心に増えています。梶谷重幸氏(39歳)は境港市で20名程度の若手グループ「ネクスト」の代表を務める中心的人物で、個人としても先ごろ法人化を果たされました。法人名は「株式会社葱屋KAJITANI」。出荷ケースの生産者名や相棒の軽トラには星形に夢を込めた屋号が印字されています。
梶谷さん方は、ご両親を含む8名の労働力で4haの栽培面積。売り上げは1000万を超えています。当面の目標は売り上げ4000万。グループ内には8.5haの面積で1億以上を稼ぐ仲間もいて、互いに刺激し合い、やる気を引き出してくれるライバルもいるそうです。
そんな梶谷さんにとって「初夏一文字」は、そろいと太りがよく、白根もきれいな品種だと言います。パートの方が調製の際、「秀」品かどうかで迷わなくて済み、時間当たりの箱数が増えると経営者としての目線からも評価されています。2Lサイズに揃うと2本で1結束がまかなえ、1ケース10束入りの出荷効率が上がります。今年は、過去2年の試作に比べ、年内の暖冬による初期生育の進み過ぎと年明けの大雪による低温感応で抽苔株が目立ちますが、それでも反収1,100ケースは出ていることから、「来年ももちろん初夏一文字の面積を増やしますよ」と決意の表情でした。栽培面でも芽出しや苗立ちもよく、圃場では葉鞘部が短く、風に強いため曲がりにくいと、大山から吹き降ろす強風に耐える姿に感激されていました。
ネギの生産者であった祖父の姿は見ていたものの、父は会社員で農業には全く興味がなかったと言う梶谷さん。自衛隊に入隊し違う道を歩みだしていたのですが、運命はめぐって今はこの農業に大きな夢を抱く毎日です。リーダータイプではないと謙遜しながらも、気付けば若手グループネクストの代表者を任されたという梶谷さん。
「グループ内には目標となる、すごい稼ぎや面積をこなす仲間がいて刺激し合えますし、疑問なことを教え合ったりできます。グループ単位の方が農政との情報交換なども機会を持ちやすいメリットもあると思います」
仲間たちから刺激を受けて法人化も実現した梶谷さん。さらに若い生産者が産地に加わるように、今年は研修生も1名を受け入れました。
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