産地ルポ

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2021/7/20掲載

根こぶ病、黒腐病に強い「BCR龍月」
〜茨城県・千葉県での導入事例〜

関東地区では、根こぶ病に困っている産地が各地に点在しており、同じ地区でも発生する圃場と、しない圃場があるのが現状です。根こぶ病が発生する圃場では、苗床の消毒とネビジン粉剤、フロンサイド粉剤、オラクル顆粒水和剤などの薬剤施用と耐病性品種選定の組み合わせによる防除で、根こぶ病の発生する下地をもっていながらも、なんとか安定した生産を確保しているといった状況です。
その中で「BCR龍月」は、根こぶ病はもちろん、萎黄病や黒腐病にも強いことから注目され各地で導入が進んでいます。ここでは、茨城県・千葉県での導入事例をご紹介します。

神奈川県での導入事例についてはこちら

編集部

事例1茨城県石岡市八郷地区 宮崎 みやざき 大輔だいすけさん

宮崎大輔さん

産地の概況

茨城県石岡市の八郷地区は、県のほぼ中央、東京から約70kmのところに位置し、筑波山系の国定公園、県立自然公園と、豊かな自然に囲まれた盆地です。北関東内陸なので冬季は晴れが続き、夜温はしっかり下がり、リンゴの南限、ミカンの北限と言われています。その気候の中、果物から切り花まで幅広い作物が栽培され、野菜も多品目かつ、加工原料から有機農産物までさまざまな用途のものが作られている産地です。

茨城県石岡市八郷地区

減農薬栽培のため耐病性品種を導入

宮崎さんはキャベツ、ニンジン、ハクサイなどを栽培されていますが、加工用と青果用で出荷形態を変えておられます。また、特別栽培に準ずるよう、できるだけ農薬を使用しない栽培を心掛けています。秋冬キャベツは約3haの圃場で栽培し、10月末〜1月末まで出荷していますが、約3年前から一部の圃場で根こぶ病が発生するようになりました。そこで減農薬を維持したいという思いから、耕種的防除を行いつつ、耐病性品種の模索を始めました。そんな中、2019年に「BCR龍月」を試作したところ、根こぶ・黒腐病に強いことが確認できたため、発売されるとすぐに導入しました。

安定した耐病性をもち、玉ぞろいもよい「BCR龍月」

2019年の試作同様、2020年の栽培でも「BCR龍月」は、黒腐病と根こぶ病の両病害に強く作柄が安定し、玉ぞろいもよかったことから、引き続き来シーズンも栽培されるそうです。ただし、
①熟期はやや遅い
②低温期に入った場合の玉じまりがゆっくり
③収穫が遅れると、少量だが内部障害が見られる
などの心配があるようです。その対策として、2〜3日早い播種、または若苗定植を心掛けることに加え、黒腐病に強く、内部障害が発生しにくいことで定評のある「あさしお」と、耐黒腐病と在圃性のある「夢いぶき」の2品種も組み合わせ、作付け圃場の調整などを行い、10月下旬〜1月末まで安定生産ができるよう、計画しています。

播種は7月20日、128穴プラグトレーと市販の培養土を使用し、ハウス育苗。露地圃場への定植は8月22日に、条間60cm、株間35cmで行った。根こぶ病に対する農薬および除草剤は使用せず、元肥のみを施用。11月20日〜12月中旬にかけて収穫した。

播種は7月20日、128穴プラグトレーと市販の培養土を使用し、ハウス育苗。露地圃場への定植は8月22日に、条間60cm、株間35cmで行った。根こぶ病に対する農薬および除草剤は使用せず、元肥のみを施用。11月20日〜12月中旬にかけて収穫した。

「BCR龍月」は根こぶ病、黒腐病の病徴は見られない。

「BCR龍月」は根こぶ病、黒腐病の病徴は見られない。

「BCR龍月」は根こぶ病、黒腐病の病徴は見られない。

「BCR龍月」(右)は「足」が短く、座りがよいのも特長。

「BCR龍月」(右)は「足」が短く、座りがよいのも特長。

株ぞろい、玉ぞろいのよい「BCR龍月」。

株ぞろい、玉ぞろいのよい「BCR龍月」。

事例2千葉県銚子市新町地区 五十嵐 いがらし 靖浩やすひろさん

五十嵐靖浩さん

産地の概況

千葉県銚子市は関東最東端に位置し、周囲は海に囲まれています。関東では珍しく、夏は涼しく冬は暖かい海洋性気候です。沿岸部の東部地区では、冬季でも温暖な気候を活用して春キャベツが盛んに栽培されていますが、最近は内陸部の中部地区においてもキャベツの栽培が増えており、一部では寒玉の栽培も見られます。

千葉県銚子市新町地区

根こぶ病耐性の比較試験を実施

五十嵐さんの圃場では、近年一部で根こぶ病の発生が見られたことから、2020年に根こぶ非耐病性品種、他社耐病性品種、「BCR龍月」の3品種を用いて比較試験を行いました。

7月29日、消毒した苗床に4cm×1粒(シーダーテープ加工)で播種を行い、防虫ネットをトンネル被覆して育苗。8月25日に条間57cm、株間37cmで定植。収穫中期の11月13日に調査を実施しました。

耐病性に加え、作業性も高く評価

薬剤を施用しても非耐病性品種は根こぶ病が発生し、生育の悪い株が見られ、不ぞろいで小玉でしたが、耐病性を有した2品種では、さすがに根こぶ病は見られませんでした。その内「BCR龍月」は、根こぶ病への耐性に加え、コンパクトな立毛で、CR品種の中では玉じまりが早く、さらに箱詰めしやすい形状、玉ぞろいのよさなど、高作業性を有する点が評価されました。

2020年は、例年発生が心配される黒腐病の発生が全体的に少なく、この点の比較はできませんでしたが、根こぶ病に充分な耐病性があることが確認でき、安定した生産が見込めることから、来期は根こぶ病の発生が懸念される圃場への「BCR龍月」導入を計画されています。

比較試験を行った圃場

非耐病性品種は根こぶ病により、小玉になってしまった。

比較試験を行った圃場。左側が根こぶ病非耐病性品種、右側が「BCR龍月」。非耐病性品種は根こぶ病により、小玉になってしまった。

非耐病性品種(左)は根こぶ病の発生が見られ、根が少なくなっている。

非耐病性品種(左)は根こぶ病の発生が見られ、根が少なくなっている。