産地ルポ
2021/2/22掲載
産地ルポ
2021/2/22掲載
関東地方は北海道に次ぐスイートコーンの生産量を誇り、特に千葉・茨城・群馬の3県が栽培の盛んな地域です。2020年に発売したホワイト種「ホイップコーン」は、これらの地域でも注目の品種。タキイでは2020年春に千葉・茨城・群馬3県で「ホイップコーン」を試験的に栽培していただきました。今回はその結果の一部をお届けしようと思います。
タキイ関東支店 潮田 安志
茨城県八千代町 坂入清史さん
坂入清史さんは茨城県の特産野菜を、首都圏の生協などを中心に幅広く出荷しておられます。これまでスイートコーンはイエロー種のみ出荷されてきましたが、「今後、ホワイト種も必要になる」と考えられて、今回はほかのホワイト系品種数種とともに「ホイップコーン」を200株、栽培していただきました。 坂入さんは開口一番、「茎が太く、草丈は約170p程度と低い方で、倒伏はなかった」と草姿に関して報告してくださいました。また、ほかの白粒系品種に比べ「熟期はやや遅く、穂は軸太で、先端不稔は少なかった。穂先の苞葉のかぶりもよかった」と「ホイップコーン」の栽培性を評価され、結果として「収量は上がりました」と、こちらとしてもうれしい言葉を頂戴しました。
茨城県八千代町坂入さんが収穫した「ホイップコーン」、自然な色合いの白粒に仕上がった
雌穂に関しても「粒色は真っ白ではないが自然な色合いで、粒皮はしっかりしていて、しなびには強い」といわれ、食味も「ほかのホワイト種と遜色なく、作りやすい中生・多収のホワイト種」と一定の評価をいただきました。
群馬県太田市 斎藤和宏さん
地元スーパーと直売所を中心に多品目の野菜を供給されている斎藤さんは、食味のよさを第一に考えておられます。今回は食味と見映えが両立できる品種を探しておられ、「ホイップコーン」を200株栽培していただきました。
「ホイップコーン」はハウスで試作、右手のハウスでは早生イエロー種を栽培。
収穫直後のハウス内(6月30日撮影)。斎藤さんは軸を切りながら収穫されています。
試作された斎藤さんの評価は、「草姿、穂ともにちょうどよい大きさで、穂先の詰まりもよく、苞葉のかぶりもよかった」というもの。やはり栽培性のよさに注目されておりました。
また、「先端まで子実が充実した状態で、糖度は十分でしなびもなかった」といわれ、「ホイップコーン」の食味は、これまで食味を第一に考えられてこられた斎藤さんにも合格点をいただけたようです。
斎藤さんは地元スーパーの直売コーナーへ、ホワイト種とわかるように「苞葉むき、防曇袋入り」で出荷されており、これもすこぶる好評で、現在は抑制栽培にも挑戦していただいております。
収穫直後、苞葉のかぶりもよい斎藤さんの「ホイップコーン」。
斎藤さんは苞葉をむいて中身を見せる形で直売所に出荷しています。
群馬県太田市 清水利行さん
清水さんの現在の主力はホウレンソウ、コマツナだそうですが、それ以外にも直売所向けにたくさんの品目を栽培されています。
「新品種にはできるだけ挑戦する」という清水さんに、早速400株ほどを栽培していただきました。
2020年6月30日、清水さんの畑の「ホイップコーン」。開花時の様子です。
まずはその栽培性。イエロー種と比べて「開花から収穫までの日数はやや長いように感じられた」ようです。途中、7月8日の荒天による強風で倒伏したとのことですが、比べるものがなく、「耐倒伏性は不明」とのことでした。
穂は「特に大きい方ではないものの、バランスのとれた形。穂先の苞葉のかぶりは良好」。粒も「しなびはなく、色は純白ではないが、違和感のない白色で、糖度は19度以上あり、食味も満足できるもの」と清水さんには高評価をいただけました。
肝心の販売面でも夏場の需要が後押しし、イエロー種と同等かやや高い価格で販売できたとのことでした。
収穫直後のハウス内(6月30日撮影)、斎藤さんは軸を切りながら収穫されています。
千葉県野田市 谷島勝美さん
収穫作業中の矢島さんご一家。
野田市の谷島勝美さんはハウスでトマト、ホウレンソウ、春ダイコンを、露地ではキヤベツを栽培し、出荷されています。
今回は自家用として「ホイップコーン」を200株栽培していただきました。
谷島さんは「ホイップコーン」の栽培性について「草丈は170p前後で軸は太く、葉幅が広く草姿は良好」といわれ、「倒伏もなかった」といいます。
雌穂も「重さ400gぐらい、糖度は19度ほどで非常に甘く、先端の旗葉の色も悪くない。穂の先端の粒の露出もなかった」とどちらも高評価でした。
収穫直前の谷島さんの「ホイップコーン」。
ただ、キセニア対策のため少量を隔離栽培したところ、例年になく雨が続いたことから、「受粉していない粒列が見られたのが残念だった」と課題も指摘されました。
それでも谷島さんは「先端不稔はなく、例年にない低日照、低温の中でもしっかり糖度があがり、しなびがなかった」ことから、総合的に判断すると「作りやすい品種」といわれます。大変ありがたい言葉でありました。
旗葉もしっかりした色の谷島さんの「ホイップコーン」。苞葉付きで400gあります。
スイートコーンの生産盛んな関東地方の試作で、どの生産者も「ホイップコーン」が倒伏に強いなど、その栽培しやすさに注目しておられました。これはタキイにとっても品種の特長が実証された形で、大きな収穫でありました。
一部、天候による不稔の課題などもありましたが、雌穂の糖度も高いという評価もいただき、大きな自信になりました。
ぜひ、みなさまも一度、栽培容易な中生ホワイト種「ホイップコーン」を栽培してみてください。
2025年
春種特集号 vol.59
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