岩手県の夏秋トマト 岩手県JAいわて中央「桃太郎ワンダー」の全面導入で秀品率の底上げを

地域概況
米や畜産をはじめ多くの特産品

岩手県は全国でも有数の野菜の産地。昼と夜の気温の較差が大きく、この温度差が野菜をおいしく育てます。そして、冷涼な気候は病害虫の発生を阻んでくれ減農薬栽培が可能です。 
JAいわて中央は盛岡市、矢巾町、紫波町の1市2町で構成されています。岩手でも県央に位置し、農業が盛んで、管内で作られている野菜はキュウリ、トマト、ミニトマト、ネギ、ピーマン、ズッキーニ、レタスなどで販売額は約16億円。なかでもキュウリ、ミニトマト、ネギは県内有数の主力産地で、全国各地に出荷されています。

JAいわて中央

秀品率がアップ

JAいわて中央のトマト栽培は面積10haをやや切る程度で、1億8000万の販売金額を見込んでいます。トマト専門委員会は紫波、矢巾、盛岡、都南の4地域に分かれ80人ほどの規模になります。トマトは盛岡市地域が中心で、都南には光センサーを利用したフリートレイタイプの選果機が導入され2年目となりました。

C品はスタンドパック包装の通いコンテナでそのまま店頭に並べられる出荷を。

C品はスタンドパック包装の通いコンテナでそのまま店頭に並べられる出荷を。

当産地も「桃太郎」ブランドを基本とし「桃太郎8」以降、「なつみ」「サニー」「セレクト」と変遷してきましたが、3年間の試作を経て、前年の好成績から100%「桃太郎ワンダー」に切り替わっています。定植は4月25日から5月5日の期間。「桃太郎ワンダー」は初期から草勢が強い品種です。1〜3段果房までの空洞果や窓あき果、チャック果などの障害果の発生が少なく、5段目以降の細み果もひどくありません。果形はきれいな甲高にそろって秀品率がアップしました。
JAではC品の有効活用に特需規格として500g入りのスタンドパックを導入し、1トレイ15袋入りの通いコンテナで消費地へ出荷するという取り組みをはじめて2年です。メリットとしては4kgダンボール箱で出荷するより輸送コストが半減できることだそうです。平成30年の厳しい天候では4割のC品が発生していますが、スタンドパックに切り替えたおかげで逆に値がつく場面が続いているようです。とはいえ、産地としてもC品率を少なくすることが課題だったため、「桃太郎ワンダー」は全体の秀品率を底上げしました。A品が少ない昨夏は無印扱いのB品の価格がA品並みについているようです。紫波地域営農センターのトマト担当藤原裕介さんは、「花つき、花質もよく売れ筋のMサイズによくそろいます」と「桃太郎ワンダー」切り替えの成果だと評価をいただきました。

秀品率のよい甲高果形の「桃太郎ワンダー」導入でAB品率が底上げされた。

秀品率のよい甲高果形の「桃太郎ワンダー」導入でAB品率が底上げされた。

「食味の変化も心配しましたが出荷先から味のクレームは全くありません。逆に軟果玉が発生せず店もちがいいのでクレームが来なくなりました」と、市場の信頼度は向上しています。
こうして「桃太郎ワンダー」の全面導入に踏み切ったJAいわて中央ですが、「桃太郎ワンダー」にあわせて栽培指針もすべて変えられました。元肥をすべて100日のロングタイプの独自配合に変更、水分要求量の多い「桃太郎ワンダー」にあわせて潅水も回数を増やし高温期にも水を与えていくという指針に変わりました。

色のまわりが遅めのため、白マルチや畦シートを活用し後半の着色を促す。

色のまわりが遅めのため、白マルチや畦シートを活用し後半の着色を促す。

高温続きで裂果などが多い中、順調な生育に胸をなでおろす藤原さん。

高温続きで裂果などが多い中、順調な生育に胸をなでおろす藤原さん。

「桃太郎ワンダー」と総合的管理で裂果を防止

紫波町のトマト専門委員である池田さんご夫妻を訪ねました。池田さんは通常作の「桃太郎サニー」(4月25日定植)に加え、水稲育苗ハウスの空きを利用して、6月15日定植の抑制作で導入されました。台木「Bバリア」を使った幼苗接ぎ木の定植で「桃太郎ワンダー」を作付けされました。収穫のピークを9月以降にずらすのが狙いです。通常45pの株間を抑制作は30pの密植気味としています。潅水は点滴チューブを導入されましたが、「桃太郎ワンダー」との相性もばっちりです。
「当初ワンダーは花が小さくて心配しましたが、玉はきれいで大きいし、花つきがよくて鬼花がありません」と花質のよさに感心の様子。「桃太郎ワンダー」を作付けした4軒ハウスは、高い天井で上部が高温になりにくいうえ、白黒マルチを導入して高温期の地温低下と光量の減る秋口からの光合成を促進する工夫もされています。
今夏は当地も高温続きで裂果が例年以上に発生していますが、葉陰が多くなる斜め誘引の生産者は発生が少ないそうです。

池田さん夫妻。

池田さん夫妻。

収穫中の則子さん。

収穫中の則子さん。

「今年はあえてハウス内で西側の葉は摘葉しなかったの」という奥さまの則子さん。葉面積が大きく短節間で日よけになりやすい草姿が特長の「桃太郎ワンダー」に加え、ハウスの工夫や生産者の知恵で9月初旬の草姿は元気そのもの。11月中旬くらいまでの収量に期待を寄せる状況でした。「ホストマト(葉面散布用亜リン酸液肥)の葉面散布も有効で割れが少なかった一因かなと思います」と言う池田さん。毎年の異常気象で、もはや東北も夏の猛暑は当たり前という状況は、軒の高いハウス、換気扇、点滴潅水、葉面散布、白黒マルチ、畝間の白色畦シート、品種、仕立て方などの総合的な活用で品質向上を図ることが必要だと感じました。
「『桃太郎ワンダー』の導入で、栽培が楽になった」と池田さん夫妻。残暑に比して涼しげな表情が印象的でした。