
産地ルポ
2026/7/21掲載

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新品種「結岬」を手にするJAちばみどりの中島慎平さん。風力発電の風車が、風の強さを物語っている。
編集部(取材・文・撮影 三好 かやの)2026年1月19日取材
千葉県東端に位置する銚子市、旭市を中心に、1950年代よりキャベツを栽培。太平洋を照らす犬吠埼(いぬぼうさき)灯台をシンボルに、「灯台印のキャベツ」として、一大ブランドを築いてきた。海洋性の温暖な気候と、肥沃な土壌を生かし、10月から翌年6月まで長期間出荷可能な体制を実現。首都近郊のキャベツの有力産地として、生産量を伸ばしている。

千葉県の東部の海岸沿いに位置する「JAちばみどり」は、全国有数のキャベツの産地。冬暖かく、夏涼しい気候を生かし、10月から翌年の6月までの9カ月間「灯台印」のキャベツを出荷しています。
銚子市でキャベツを栽培する横後和実さんは、ダイコンを主体に、キャベツを60a栽培。太平洋を臨む海岸近くの畑に、1月下旬に収穫を迎えた新品種がありました。
海岸近くの横後さんの畑。「結岬」は、外葉がコンパクトなため、畝間に入って作業しやすい。
「これが『結岬』。これまで『TCA588』として試作してきたキャベツです」
ひと玉ひと玉、手のひらを押し当てて、その感触を確かめてからザクッ。軸がやわらかく切りやすいのもこの品種の特長で、株元に包丁を当てて切り取り、出荷用のダンボールへ詰めていきます。
「1箱に8玉。Lサイズで、しっかり葉が詰まっている。これはいい」そんな手応えを感じていました。
長期間キャベツを出荷し続ける銚子では、時期に応じて多彩な品種が栽培されていますが、12月中旬〜3月上旬は、耐寒性があって低温でも肥大し、しかも葉がしっかり詰まった品種が求められてきました。
中でも耐寒性にすぐれた従来品種は、2月の厳寒期にもしっかり肥大するのが特長です。ところが長期間出荷し続けるには、少し課題がありました。
「同じ冬のキャベツでも、初期の12月や、後半の3月に出そうとすると、玉は十分大きいのに重さが足りなかったり、肥大しすぎて箱に入りきらないことがあるのです」

海岸近くの横後さんの畑。「結岬」は、外葉がコンパクトなため、畝間に入って作業しやすい。

切る前に、ひと玉ずつ手を当てて結球具合を確かめる。「結岬は、過肥大せずに、中身がしっかり詰まるから、箱詰めしやすい」と横後さん。
キャベツには、先に外葉を形成して後から内葉が充実していく「充実型」と、先に内側の葉が小さな葉球を作り、1枚1枚の葉が肥大していく「肥大型」の2タイプがあります。JAちばみどり営農センター銚子の中島慎平さんによれば、
「暖秋・暖冬の影響で生育が前進すると、過繁茂となることで中身の詰まりが遅くなり、適サイズで収穫するとブカ玉で量目不足に。詰まりを待つと肥大となってしまいます」
利根川の河口に位置する銚子市周辺は土壌が肥沃で、他のキャベツ産地と同じ品種を作ると、結球せずに葉が広がってしまう傾向にあります。
一方、新品種の「結岬」は、中心部からじわじわと大きく育つ「肥大型」。だから大きさが基準に達していれば、中身もしっかり詰まっていて、重量不足になる心配はありません。
長年キャベツを作り続けてきた横後さんも、「結岬」の詰めやすさを実感されたようで、
「1〜2月は寒さに強い従来品種を。その前後は箱に詰めやすい『結岬』が、主力になっていくでしょう」と話されていました。
![「結岬」の断面[右]。先に内側の葉が生長して、葉球全体が充実していく肥大型。](images/p03.jpg)
「結岬」の断面[右]。先に内側の葉が生長して、葉球全体が充実していく肥大型。

切りたての「結岬」。腰高で葉数が多く、内容も充実。外葉を2枚つけて箱に詰める。

「結岬」は、L玉を8個詰めてもはみ出さず、球じまりがよいので、重量不足の心配もない。
さて、銚子市でキャベツの栽培が始まったのは1953(昭和28)年。その5年後には「灯台印」銚子蔬菜出荷組合連合会を結成しました。犬吠埼の灯台を冠したロゴは、当時からこの産地のシンボルで、かつて竹カゴでキャベツを出荷していた時代に使われた荷札にも、灯台が描かれています。
その後、キャベツ栽培は沿岸部から内陸へと広がり、栽培面積は系統出荷のみで約1211ha。令和7年度の出荷量は、年間630万ケースに達する見込みです( JAの集計による)。
沿岸部周辺では、巨大な風力発電の風車が何機も回っていて、風の強い地帯であることを物語っています。それはキャベツにも影響していて、結球した玉の上部が寒風で傷んですだれ状なり、まるで「トンボの羽」のようになってしまうのも悩みの種。冬季の強風に負けない、強い品種と株作りを探求し続けてきました。
それは育苗にも及んでいて、銚子では幼苗を大量に育てるセル苗ではなく、昔ながらの地床栽培が主流。「結岬」は、8月中下旬に播種をして、地床で苗を育て、9月下旬〜10月上旬に定植。12月〜3月の収穫を迎えます。
「大きめのしっかりした苗を作ることで、風に揺さぶられても負けずに育つのです」(横後さん)
かつて銚子では冬はがっちり寒玉系、春はふんわり春系と、作り分ける傾向がありました。しかしここ20年ほどの間に市場のニーズも変わり、季節で品種を差別化するより、キャベツそのものの品質が重視されるようになっています。
「肝心なのは、病気に強く、傷みがないこと。形状がまとまっていて、量目不足にならない。それが大事です」
葉肉が厚く、過肥大しにくい良質系キャベツ「結岬」は、伝統ある「灯台印」キャベツの新たな一員に加わって、産地の期待に応え始めています。

「結岬」は、70年以上の歴史と実績をもつ「灯台印」の新たな一員として、有望視されている。

かつてキャベツを竹カゴで出荷していた時代に使われていた、灯台印の荷札。

12月〜3月に出荷する作型の中で、初期と後期に「結岬」、厳寒期は寒さに強い従来品種を出荷する作型が、理想的。
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