産地ルポ

産地ルポ

2024/7/22掲載

埼玉県 JAふかや南部営農経済センター
発芽ぞろいと初期生育がよくなった
「ネオルビーSP」で作業性と収量性が向上!

2024年、「ネオルビーSP」が登場しました。以前より各地で愛用されている「ネオルビー」は耐暑性、早生性と内部色のよさ、作りやすさが評価されていましたが、その特性に加え発芽ぞろいと初期生育のそろいを改良しました。
「ネオルビーSP」を試験導入したJAふかや南部営農経済センター、及び生産者の株式会社ヨシカワの社長、吉川修一さんにその評価をお聞きしました。

編集部 2022年12月8日取材

深谷市の産地概要

深谷市は埼玉県北部に位置しており、北は利根川をはさんで群馬県に接し、南には荒川が流れています。利根川と荒川の栄養分をしっかり含んだ農地が続き、埼玉県で最も野菜の生産量の多い地区で、全国的に有名な「深谷ねぎ」やブロッコリー、ホウレンソウ、キュウリなど全国有数の野菜産地です。京浜市場はもちろん、冬季の東北や北海道向けの出荷も多く、また、流通に関しては農協、商系、出荷組合、個人など多岐にわたり、その多面性がうかがえます。 気候はやや内陸的で、寒暖差が大きく、夏は太平洋高気圧による季節風などの影響で暑く、冬は乾燥した北風(からっ風)が吹きます。晴天の日が年間を通して多い地域です。

JAふかや

「ネオルビーSP」の試験導入をスタート

JAふかやの出荷場は南部、北部、西部の3カ所にあります。
今回お伺いしたJAふかや南部営農経済センターは、藤沢地区の南部にあり、野菜生産はもちろん、ユリの切り花や鉢物生産も多い地区です。野菜販売金額は多い順にネギ、ブロッコリー、その後ナス、トウモロコシなどが続きます。ちなみに花き類はユリの切り花が周年出荷であることもあり販売金額は断トツです。
レッドキャベツの導入は、契約栽培を積極的にすすめているJA全農さいたまから話があり、生産者を募ってスタートしています。取材時の栽培農家は5名、契約は12月中旬〜3月までの安定出荷を前提としていますが、毎年シーズンが終わった段階で次年度の出荷時期、数量と価格のすり合わせをします。出荷形態はコンテナに正味10s入りで、契約出荷数を安定させるために通常のダンボールでの出荷も行っています。

品種は当初から作りやすさで定評のある「ネオルビー」を使用していました。契約上3月までコンスタントに出荷しなければならないので、「パワールビー」など生育期間の長い品種との組み合わせも試みたものの、定植後収穫まで時間がかかり、それが尖り玉の発生や収量低下を招き、導入には至りませんでした。早生で栽培が安定する「ネオルビー」を使用し、収穫適期を見極めながら、出荷場にある冷蔵庫による貯蔵と組み合わせて長く出荷できるようにしています。
その中でネオルビーのそろい性を改良した「ネオルビーSP」の話があり、試作を行いました。「ネオルビーSP」は当地で数年の試験の後、管内で一番レッドキャベツの栽培が多い吉川さんが試験導入されました。吉川さんの栽培方法と評価を紹介します。

JAふかや南部営農経済センター出荷場から出荷される「ネオルビーSP」。

JAふかや南部営農経済センター出荷場から出荷される「ネオルビーSP」。

吉川修一さんの「ネオルビーSP」

吉川修一さんは深谷市藤沢地区を中心に主力であるブロッコリーのほかカリフラワー、キャベツ、タマネギを栽培されており、例年の秋作は約12ha。レッドキャベツは1ha強の作付けですべて農協出荷されています。「ネオルビーSP」の栽培は試験をお願いしてから3年目の2022年に全面的に導入されています。 
「ネオルビーSP」の栽培は主力のブロッコリーの栽培方法に準じており、畝幅65p×株間37pで行っています。育苗は144穴発泡スチロールトレイで28〜30日育苗、本葉3〜4枚に仕立てます。初期はハウス内、後半は野外育苗を基本とし、8月5〜25日の間で定植します。 高温時の定植となるため、ややかための苗の方が定植後の生育が安定するとのことでした。そのうえで定植の際、根部分が露出しないように気をつけているそうです。根部分が浮き上がってしまった場合は、根部に土をかけて手直しをします。また、定植1〜2日前に発根剤の使用も有効とのお話でした。

株式会社ヨシカワ社長の吉川修一さん「ネオルビーSP」は育ち遅れが少なく、そろいも収量性もよいと高評価。

株式会社ヨシカワ社長の吉川修一さん
「ネオルビーSP」は育ち遅れが少なく、そろいも収量性もよいと高評価。

育苗は144穴トレイを使用。

育苗は144穴トレイを使用。

発芽を確認したらハウスに一定期間置いてから露地育苗に移行する。

発芽を確認したらハウスに一定期間置いてから露地育苗に移行する。

「ネオルビーSP」の切り替えで生育がそろい省力

契約栽培が始まった当初より使用していた「ネオルビー」は、栽培上大きな問題はなかったそうですが、今回、「ネオルビーSP」の導入を決めた理由をお聞きしました。

定植後の生育にバラつきが少ない

「ネオルビー」は定植後1カ月程度で生育のバラつきが見られるようになり、それが低温期の結球不良、収獲遅れにつながり、結果として収量減や収穫に手間がかかってしまうことがあったそうです。育ち遅れる苗は定植時に見分けがつきにくいうえ、パート作業員が定植する場合もありなかなかチェックが難しかったようです。
一方「ネオルビーSP」は定植後の生育にバラつきが少ないため、収穫適期や形状のそろいがよく収量アップにつながっています。また、収穫も一斉にできるため省力となったと喜んでおられました。

内部色など品質は美点を引き継ぐ

早生性は「ネオルビー」と同等で当地区でもしっかり太ること、形状が安定していること、内部色がよいなど前品種の美点をそのまま引き継いでいることも高評価の理由でした。契約栽培では品種を替えた際の品質の変化は何かと嫌がられます。品質が変わらないことが生産者、契約先共に安心につながっているようです。
耐寒性、在圃性なども「ネオルビー」と同等と見ていますが、「この地区では圃場に3月末まで置いておくのは難しい」とのことでした。その点については、農協と意見を交換しながら冷蔵庫の利用を含め、なるべく出荷期間が長くなる方策を考えていくそうです。また、「耐病性についても『ネオルビー』と同等と見ており、いつも通りの防除を心掛けている」と話されていました。

吉川さんの圃場で収穫した「ネオルビーSP」2Lサイズによくそろい、内部の詰まり、着色も良好!

吉川さんの圃場で収穫した「ネオルビーSP」
2Lサイズによくそろい、内部の詰まり、着色も良好!