産地ルポ

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2021/2/22掲載

JA晴れの国岡山 びほくトマト部会出荷進発式を開催
コロナ禍の今こそ、おいしい桃太郎トマトを届けたい!
〜「びほく 天空の実り®=鬼退治 桃太郎トマト」の
新しい部会ブランド名でみんなを元気に〜

JA晴れの国岡山は県内8農協が合併し、組合員数全国1位の規模で2020年4月に発足。管内の特産
品桃太郎トマトは京阪神市場を中心に食味と品質の安定で絶対の信頼度をもつ。中でも備北地域は半
世紀を超える歴史をもち、岡山県産「夏秋トマト」の出荷量60%を占めるトップ産地。

JA晴れの国岡山 びほく広域営農経済センター販売課 梶田 宏之
岡山県備中県民局農林水産事業部 備北広域農業普及指導センター 池田 久美子

トマト栽培の現状

JA晴れの国岡山びほくトマト部会は高梁市を中心に長い歴史の中で、味のよい甘熟品種として普及した桃太郎トマトにこだわりをもって栽培に取り組んできました。ハウス雨よけ栽培や養液土耕、マルハナバチの導入など新技術や環境にやさしい栽培方法を順次取り入れ、安全で安心なトマト生産に努めています。現在、部会員75名、栽培面積11・6haです。令和2年度の計画は、10a当たり収量11t以上、販売数量1300t、販売金額4億5000万円を部会目標としています。

A晴れの国岡山 びほく統括本部

選果員の目視検査と合わせ、昨年に選果場の整備を行い、機械選別装置(カラーソーター)の機能向上による選果ムラの軽減、また品質や棚もちを重視したコールドチェーンの強化を図るなど、各市場へ高い品質を維持したトマトを安定出荷できる体制づくりを行っています。

A晴れの国岡山 びほく統括本部

A晴れの国岡山 びほく統括本部

新ブランドのお披露目ともなった進発式のあいさつに立つびほくトマト部会の仲山部会長。

部会ブランド「天空の実り®鬼退治 桃太郎トマト」ネーミングの経緯

2019年に、トマト部会、JA、全農、市、県、普及指導センターでマーケティングプロジェクトチームを結成し、販売面をさらに強化していくためには「びほくのトマト」の知名度アップがますます重要と考えました。そこで地域と結びついた新ネーミングを設定し、PR戦略を充実、拡大することになりました。
ネーミングにあたっては、これまで「桃太郎トマト」にこだわって栽培してきたこと、「桃太郎=岡山県」という地域をイメージしやすいことから、「鬼退治」に挑む「桃太郎」の如く鬼や病気を打ち負かし「元気で健康になってもらいたい」という想いを込めてつけました。改めて4kg出荷箱に名入れするとともに販促用スタンドパックやのぼりを作成し、PR活動を展開中です。

  • ※「天空の実り®」の由来は、中山間地特有の昼夜の寒暖差の中で育まれることでおいしさを増す当地のトマトの特長と、地域のシンボルでもある天空の山城「備中松山城」で秋にだけ発生する幻想的な雲海にあやかり、当地特産のプレミアム感を伝えるため命名しました。

進発式典を終え、安堵の表情でハウスを案内いただいた仲山部会長。

進発式典を終え、安堵の表情でハウスを案内いただいた仲山部会長。

「おいしい桃太郎トマトをお届けします!」と新ブランドで切り替え予定の出荷ケースを手にする選果場の芳賀しま子主任。

「おいしい桃太郎トマトをお届けします!」と新ブランドで切り替え予定の出荷ケースを手にする選果場の芳賀しま子主任。

「桃太郎」トマト栽培秘話

岡山県びほく地域の吉備高原と呼ばれる標高350〜500mの台地上では、昼夜の温度差が大きく、昔から園芸産地として品質の高い農産物を生産しています。昭和30年代に当地域でトマト栽培が始まり、昭和58年には初代「桃太郎」を西日本で初めて試験導入し、当時のタキイ種苗担当者と力を合わせて栽培技術の確立に尽力してきました。そのため、びほくのトマト生産者の熱い想いに感謝を込めて、岡山の伝説「日本一の桃太郎」から「桃太郎」という名前がつけられたそうです。その後も当地では味にこだわり、30年以上一貫して「桃太郎トマト」シリーズを作り続けています。

「桃太郎」ブランドを育ててきた自信と誇り

「桃太郎トマト」の栽培は、「桃太郎」から始まり、平成6年夏秋品種の「桃太郎8」、平成21年以降は「ギフト」、「サニー」、「セレクト」を順次導入していきました。現在中心品種となっている平成29年から導入された「桃太郎ワンダー」は、果形がよく、秀品率が高いので、栽培面積が増加しています。一方で、尻腐れ果や葉先枯れ症状が発生しやすいので、給液管理や葉面散布をていねいに行い、長年培ってきた栽培技術で理想の草勢を保つよう心掛けています。

「安全で安心なトマト作り」へ意識を向上

普及指導センターでは、産地の「桃太郎」トマトへのこだわり、おいしいトマトを消費者に届けたいという想いの実現のため、近年の大雨や異常高温でも安定した収量が確保できるよう調査や新技術の試験を重ね、栽培指導で産地を支援しています。「ワンダー」の導入時には、潅水量を1〜2割増やしたり、PK資材の葉面散布や、酸素供給剤の元肥施用などの試験を行い、生理障害の発生を軽減できることを確認しました。

また、8月の着果不良の対策として、後半の草勢が強めの台木「キングバリア」を昨年から試作しています。半身萎凋病や青枯病の発生は少なく抑えられていますが、現場での草勢や着果がどうなるかは調査中です。普及指導センターでは、今後もトマト産地のさらなる発展のために、新規栽培者の確保・育成やマーケティング活動の支援も行っています。

藤井副支部長から栽培状況を聞き取る筆者の池田さん。

藤井副支部長から栽培状況を聞き取る筆者の池田さん。

藤井副支部長のハウス内。現在びほく地域の品種は約5割が「桃太郎ワンダー」。

藤井副支部長のハウス内。現在びほく地域の品種は約5割が「桃太郎ワンダー」。