産地ルポ

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2026/2/20掲載

福岡県 JAふくおか八女
「TYフルティカSC」のトマト黄化葉巻病耐病性で
精神的負担が軽減
夏秋作の黄変果対策も!

JAふくおか八女、中玉とまと部会の吉田盛寿部会長(左)と営農指導員の橋村周一さん(右)。

JAふくおか八女、中玉とまと部会の吉田盛寿部会長(左)と営農指導員の橋村周一さん(右)。

編集部 2025年8月6日取材

地域概況

JAふくおか八女は福岡県の南部に位置し、八女市、筑後市、広川町の2市1町で構成されています。福岡県下最高峰の釈迦岳、御前岳を源とする総延長61qの清流矢部川が有明海へと流れ、管内西部にはJR鹿児島本線、九州新幹線、九州自動車道が走り、交通の便にも恵まれた環境となっています。豊かな自然に恵まれた管内では、米や果樹、花卉などのほか販売高のトップに位置するイチゴ、ナス、トマトなどの野菜、そして八女茶の生産が盛んに行われています。

JAふくおか八女

“はなひめ”ブランド

JAふくおか八女のトマト栽培は、大玉トマトと中玉トマトの2タイプがあり、大玉トマトは冬春栽培のみで約8.1haの作付け。桃太郎系品種(「桃太郎ブライト」30%、「桃太郎ホープ」65%、その他5%)を生産しています。中玉トマトはこれまですべて「フルティカ」を栽培していましたが、2025年産から全体の5割以上が新品種の「TYフルティカSC」の作付けとなる予定で、夏秋栽培は1.6ha、冬春栽培は6.5haの栽培面積を誇ります。
当地での中玉トマトの栽培は生食用の契約栽培から始まりましたが、その条件が徐々に変わり、契約という形での継続が難しくなりました。そこで、契約出荷用トマトからの転換を図るため、2000年代中ごろに「フルティカ」を導入。現在は中玉とまと部会として部会員32名が所属するまでに発展しています。

「市場には味を評価してもらっている」
と話してくださったのは、中玉とまと部会で部会長を務める吉田盛寿さん。皮が薄く、甘みと酸味のバランスがよい“はなひめ”ブランドとして、全国の大型量販店をはじめ、生協などへ福岡中央卸売市場を経由して運ばれ、多くの消費者の心をつかんでいます。

JAふくおか八女の中玉トマトのブランド“はなひめ”。

JAふくおか八女の中玉トマトのブランド“はなひめ”。

中玉トマトは機械による選別ができないため、すべて手作業で選果、パッキングを行う。

中玉トマトは機械による選別ができないため、すべて手作業で選果、パッキングを行う。

黄化葉巻病に対する苦慮

“はなひめ”ブランドの評価が上がる一方で、ブランドを支えてきた生産者の方々を悩ませていたのが終息の見えないトマト黄化葉巻病の蔓延でした。これまでにもさまざまな耕種的防除は講じてきましたが、暖地で周年栽培するという特性上、タバココナジラミを完全に抑えることは非常に難しく苦慮していました。果実が実っていても、感染の拡大を防ぐために被害が出た株は抜き取り処分せざるを得ず、手塩にかけて育ててきた株を廃棄することは、非常に大きな精神的負担となっていました。トマト黄化葉巻病は作付け時期に関係なく発生し、ひどいときは1日に10本単位で抜き取り廃棄することもあったといいます。

「TYフルティカSC」を導入し、トマト黄化葉巻病の発生が抑えられていた。

「TYフルティカSC」を導入し、トマト黄化葉巻病の発生が抑えられていた。

「産地としても、トマト黄化葉巻病の耐病性をもつ中玉トマト品種を最優先で探していました」
病気の被害が深刻になる中、「フルティカ」からの品種転換を検討していたと、JAふくおか八女で営農指導に当たる橋村周一さんは打ち明けてくださいました。

「TYフルティカSC」への期待

「TYフルティカSC」は試作品種の段階から数年間の栽培試験を経て、2025年度夏秋作から正式に採用を決定。待ち望んだ耐病性品種として期待は大きく、夏秋栽培では約9割で導入、冬春栽培でも約5割で導入を計画しています。
トマト黄化葉巻病の耐病性が付与されたことへの安堵感は大きく、長らく切望していた黄化葉巻病耐病性は、栽培中の夏秋作でも安定した能力を発揮しているとのことでした。

JAふくおか八女管内で収穫された「TYフルティカSC」。黄変果の発生が少なく、収量増が期待できる。

JAふくおか八女管内で収穫された「TYフルティカSC」。黄変果の発生が少なく、収量増が期待できる。

耐“黄変果”で収量増に期待

最終的な収量データの数値が出ないと確実な評価はできないとしつつも、「TYフルティカSC」の“黄変果”が発生しにくい特性にも期待が高まっています。昨年までは夏秋作は8月以降、収穫量の約半数が“黄変果”などで廃棄となっていましたが、2025年の夏は8月現在の高温下でも品質が維持できており、最終的に収量増につながるのではと期待しています。
これまでの夏秋栽培は病気や障害果の発生により欠品覚悟が前提だったため、「TYフルティカSC」の導入によって収穫量、販売量の増加も見込んでいます。
一方で、冬春栽培後期の6月ごろには、栽培終盤での草勢低下と強日照の影響により、果実品質の維持が一層難しくなることを想定しています。そのため、「TYフルティカSC」の黄変果になりにくい特性に加えて、2026年の春に向けた耕種的な対策についても検討していきたいと吉田部会長は準備に余念がありません。

遮光資材の導入やハウス妻面の通気性をよくするなど、暑さに対して耕種的な対策も進めている。

遮光資材の導入やハウス妻面の通気性をよくするなど、暑さに対して耕種的な対策も進めている。

遮光資材の導入やハウス妻面の通気性をよくするなど、暑さに対して耕種的な対策も進めている。

高品質、安定収量を目指して

夏秋栽培では、定植が4月上旬ごろ、冬春栽培の出荷が終わる6月下旬ごろから出荷が始まります。9月中旬ごろに摘芯し、降霜時期に合わせて11月まで出荷するため、多くて20段程度まで収穫します。仕立て方は基本的に2本仕立てですが、「フルティカ」では黄化葉巻病発生での収量減少を考慮し、株数を確保するため株間を狭めていました。しかし、「TYフルティカSC」を導入したことで罹病による廃棄のリスクが減ったため、栽植本数を減らして株間を広くとることも可能となりました。通気性がよく管理がしやすい栽培条件に変更され、品質向上も期待されています。

斜め誘引で段数を増やし、多くて20段まで収穫する。

斜め誘引で段数を増やし、多くて20段まで収穫する。

当地ではより安定した収量、品質向上を目指して低段密植栽培を活用した二毛作の試験も進めています。栽植本数が増える分コストもかかりますが、短期収穫で果実品質が安定しているため、最終的な収量は一作で長期作の全収量と変わらないという試算も出ています。また、垂直に誘引する方法で栽培労力の軽減も期待できます。こうした新たな取り組みにも「TYフルティカSC」の特性がより生きると考えています。
販売促進やPR、新たな栽培方法の検討など、生産から販売までが力を合わせ、“はなひめ”ブランドのさらなる発展を目指している当地の将来に「TYフルティカSC」が貢献していくことを願っています。

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