産地ルポ
2021/7/20掲載
産地ルポ
2021/7/20掲載
広島県JA福山市箕島園芸組合に導入されているタキイホウレンソウの種子は、すべてLサイズを指定されています。Lサイズ種子にこだわる理由、栽培の様子をうかがいました(写真はホウレンソウ「伸兵衛」のLサイズ種子)。
編集部
広島県東部の2市1町を管内とするJA福山市は、南北60km東西25kmのエリアを擁する大規模なJAです。特産のクワイは生産量日本一を誇り、果樹のブドウや稲作などバラエティ豊かな農産物に恵まれた地域です。
JA福山市管内ではさまざまな地域でホウレンソウの栽培をされていますが、中でも福山市南部に位置する箕島町は、ホウレンソウ栽培に適した水はけのよい砂地が広がっています。ホウレンソウの栽培は、露地とハウスの併用で8月20日ごろ〜翌年5月15日ごろ(播種は3月いっぱいで終了)の期間内に2回転、多いところでは3回転と長期間出荷されています。
減農薬にも積極的で、圃場各所にフェロモントラップを設置。誘殺された害虫から発生状況や時期を予想することで適時防除を行い、農薬の使用を極力減らしているそうです。
収穫したホウレンソウは調製作業の後、1箱に20袋(1袋200g)詰めにして箕島共同選果場へ持ち込まれ、ていねいに仕分けて地元の福山市場や、岡山市などへ出荷されます。
楠部会長(左)とJ A福山市グリーン箕島店の佐藤さん(右)。「伸兵衛」の播種を終えたハウスの前にて。
10月15日まきの「伸兵衛」(11月9日の圃場)。露地圃場はさらっとした水はけのよい砂地が広がる。
「試作のとき、タキイの兵衛シリーズは草姿が立性で下葉とりなどの調製がはかどると感じました」。そう話すのは、取材に応じていただいた箕島園芸組合ホウレンソウ部会の楠隆雄部会長です。部会のメンバーは現在15戸で全体面積は約9ha。楠さんはハウス12棟(40a)と露地60aで栽培。ご自身と奥様、一人のパートさんで経営されています。
例年は、トマト、メロン、シロウリなどをハウスで7月まで収穫し、土壌消毒後のお盆を過ぎたころからハウスでホウレンソウの栽培が始まります。品種は、暑さに強い「タフスカイ」からスタート。通常株間は4.5pですが夏は風通しをよくするために5.5pと広めにとります。遮熱シートは必ず用いますが、遮光シートの使用は控えて、色のりをよくするそうです。
次いで播種期幅の広い「福兵衛」、10月後半からは低温でも伸長性のある「伸兵衛」へとリレー。品種の特長をうまく使い分けています。
また、食味面でも工夫を重ねられています。楠さんは4年の年月をかけて肥料試験を行い、理想の食味を追求されました。例えば、硝酸態チッソを3000ppmに抑えると、ホウレンソウ特有のえぐみがなくなり「伸兵衛」の味が一段とおいしくなりました。これには部会の誰もが絶賛したそうです。こういった栽培や味を追求する努力が市場の評価につながっています。
12月27日、年末の出荷に合わせてハウスで栽培中の「伸兵衛」。
箱詰めされたホウレンソウは、福山市場を経て地元のスーパーや学校給食に。
「タフスカイ」と兵衛シリーズは、収穫のとき葉折れが少なく、下葉の調製も容易。
部会のこだわりはもう一つあります。それはホウレンソウ種子のサイズです。箕島園芸組合では、通常産地が播種機の関係でMサイズを求めるのに対し、Lサイズの種子を好んで使用されています。「Lサイズの種子の方が、発芽のそろいがよく、子葉が大きいように思います。葉軸もしっかりしています。タキイさんはMサイズとLサイズを選択でき、同じ粒数で値段も変わらないからお得ですね。Lサイズが人気になって、手に入らなくなったら嫌だからあんまり言いたくない秘密だけれど(笑)」と、Lサイズを選ぶ利点を話してくださいました。取材時は2020年11月上旬、年末に2000ケース出荷を目標に「伸兵衛」のLサイズ種子をまき終えたところでした。
Lサイズのホウレンソウ種子は、子葉が大きく、葉軸がしっかりするため初期生育がすぐれており、箕島園芸組合ではLサイズを指定している。
楠さんは、播種機「ごんべえ」にLサイズの「伸兵衛」のタネを入れ、穴径7o(半径3.5o)のベルトを使って1粒まきをされている。穴径が小さ過ぎるとタネが詰まってしまうので、タネのサイズに合ったベルトを用意している。ベルトは簡単に交換できるそうだ。
2025年
春種特集号 vol.59
2024年
秋種特集号 vol.58