産地ルポ
2022/7/20掲載
産地ルポ
2022/7/20掲載
2021年に発売した「寒兵衛」は今期収穫の終盤となり、栽培した各産地からその評価が寄せられています。今回は高品質なホウレンソウの出荷で定評があり、販促キャラクター「とれ蔵(とれぞう)」をマスコットに野菜作りに力を入れる埼玉県JAいるま野の栽培農家さんにその評価を伺いました。
編集部
JAいるま野は埼玉県の南西部に位置し、東京都心から30〜60qの首都圏にあります。管内には小江戸と呼ばれる川越市があり、豊かな歴史と文化を誇り、観光地としても大変人気があります。
野菜栽培の盛んな地区は、その中でも東京に隣接した地区(所沢、狭山、川越、富士見市など)で、高速道路を使わなくてもいち早く京浜市場に野菜を届けられる産地です。目標に向かって絶えず努力し続ける生産者が多く、高品質の野菜産地として知られており、その販売価格は京浜市場で常にトップクラスです。
また、JAいるま野ではマスコット「とれ蔵」(冒頭参照)を製作し、このキャラクターが当地の農産物の消費拡大、消費者とのコミュニケーションに大活躍しています。
多彩な品目が作られていますが、中でもホウレンソウ、サトイモ、カブ、エダマメ、ニンジンが主力です。ホウレンソウは最近では貴重になった250g束出荷が多く、その品質は各方面で評価されています。
では、この産地の中で「寒兵衛」はどんな風に評価されているのでしょうか。以下2人の栽培農家に伺いました。
ホウレンソウ主体の経営で、出荷は9月中旬〜5月中旬、荷姿は高温期では防曇袋170g、低温期は束250gで、系統出荷がほとんどです。夏期はエダマメ栽培となります。
栽培方法は3515マルチ8p穴に5粒播種し、霜が降りる時期の前後に2号換気トンネルで被覆を行います。
2021年の冬どりでは「伸兵衛」を主力にしていました(今年も一部で栽培)。低温期に伸びがよく、作業性も良好で、べと病に対しても比較的強かったからです。ただ、残念ながらべと病については一部圃場で発病が見られるようになってしまいました。
いつでも、農薬の効率的な施用を模索するとともに、①べと病に安定して強く、②株張りと厳寒期の生育スピードが安定している品種を探していますが、その中で2021年試作した「寒兵衛」が上記①②の条件にいちばん近いと思い、今回「寒兵衛」を本格導入しました。
特に11月10〜20日まき→翌2月収穫用として好結果でした。
①なによりべと病の発生がなかったこと
②葉色よく、葉ぞろいのよいこと
③生育スピードがちょうどよかったこと
④株張り性にすぐれていること
⑤低温期に問題となる葉軸のパンクに安定して強い
この5つのポイントが高評価につながっています。
「寒兵衛」の葉軸は中位で、実はもっと折れにくく株張りのよい品種もあれば、もっと立性の品種もありますが、それは各農家の好みで、私は「寒兵衛」の形状が気に入っています。作業性で不満をもったことはありません。
べと病については2021年の「寒兵衛」では発病は見られず、一安心です。2022年の冬収穫も「寒兵衛」が主力です。ただ、今後もべと病の発生には注意し、農薬の効率的な施用とともに、よりよい品種を探求していきます。
ホウレンソウは12月末〜5月まで出荷。出荷は系統出荷主力で少量直売。防曇袋包装機を使用して、全期間通じて防曇袋で出荷。スタッフは家族3名+パート2〜3名。そのほかサトイモ、ニンジン、エダマメなどを栽培。
栽培方法は3515マルチ8p穴に5粒播種し、霜が降りるころをめどに2号換気トンネルをかけます。
2021年の冬どりでは「福兵衛」を主力にしていました(今年も一部で栽培)。べと病は他地区ほどの発生はみられず、「福兵衛」は安定して強いと思います。が、2021年に「寒兵衛」として試作した際に、
①「福兵衛」よりややゆっくりした生育が気に入った
②他社品種では1月になると葉に黄ばみが出たり、縁どりが出たりすることがあるが、それがなかったこと
③全体の形状バランスがよかったこと
などから導入しました。
2021年の試作の通りの結果でほぼ満足しています。この時期に問題となる圃場での軸割れもない。 洗った後に軸がパンクしていることがありますが、それは他社品種も同じで今後の課題です。
「寒兵衛」初年度の評価は上々でした。
お忙しい中、対応していただいた農家さん、農協の皆様、ありがとうございました。
2024年
秋種特集号 vol.58
2024年
春種特集号 vol.57