産地ルポ

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2026/7/21掲載

カブの有力産地JAいるま野に形が美しく、軸もしっかり
作業性の高い「ふゆばな」加わる

低温肥大性が安定しており、根部の形状が丸く、軸もしっかりしている「ふゆばな」。洗いたての真っ白な肌が美しい。

低温肥大性が安定しており、根部の形状が丸く、軸もしっかりしている「ふゆばな」。洗いたての真っ白な肌が美しい。

編集部(取材・文・撮影 三好 かやの)2026年2月5日取材

地域概況

JAいるま野は都心から30〜60q 、埼玉県南西部に位置する10市3町からなる広域農協です。西部は山岳丘陵地帯、東部は水田地帯、中部から南部は畑作地帯が広がっていて、その多彩な立地条件を生かし、コメ、ホウレンソウ、サトイモ、ニンジン、ダイコンなどを栽培。中でも川越市、富士見市、三芳町、ふじみ野市、狭山市、所沢市、日高市では、カブの露地栽培が盛んに行なわれていて、全国有数の産地を形成しています。

JAいるま野

埼玉県のカブの生産量は全国第2位。中でも南西部に位置する「JAいるま野」管内での栽培が、その大半を占めていて、川越、東部、狭山、所沢の4支部、合わせて年間約30万ケースを出荷。現在35人の生産者が栽培を続けています。冬場のカブ畑を訪れると、アーチを描いた通称「ベトコン」と呼ばれる小型のハウスが、何棟も連なる光景が広がっていました。

乾燥が続く冬場もしっかり丸くなる品種を

埼玉県川越市大野原地区は、カブの栽培が盛んなエリア。「JAいるま野かぶ部会」の部会長を務める田中健一さんは、2003年からカブを栽培。父の茂吉さんが、手探りでカブの栽培を始めたころから数えると、約60年作り続けています。
2haの圃場を年間約2.5回転させて、夏場にエダマメを栽培する他は、秋作、冬作、春作と、切れ間なくカブの栽培と収穫、出荷が続きます。
冬作のカブは、10月末の播種後すぐに圃場にネットをかけ、11月中旬にさらにその上から上部に穴あきトンネルフィルムをかけるスタイル。軒高が低く、中を移動するには背をかがめなければならないので、「ベトコン」と呼ばれています。

父の時代からカブを作り続け、自身はカブ部会の部会長を務める田中健一さん(左)と、JAいるま野販売部の柴田圭吾さん(取材時)。

父の時代からカブを作り続け、自身はカブ部会の部会長を務める田中健一さん(左)と、JAいるま野販売部の柴田圭吾さん(取材時)。

冬場のカブは、「ベトコン」と呼ばれるミニハウスで栽培。長さ50mのアーチ型のハウスが、何棟も並んでいる。

冬場のカブは、「ベトコン」と呼ばれるミニハウスで栽培。長さ50mのアーチ型のハウスが、何棟も並んでいる。

10月末に播種した直後にネットをかけ、11月中旬に上部に穴あきトンネルフィルムを被せて保温と通気を保ち、時折裾を上下しながら室温を調整する。

10月末に播種した直後にネットをかけ、11月中旬に上部に穴あきトンネルフィルムを被せて保温と通気を保ち、時折裾を上下しながら室温を調整する。

近年田中さんを悩ませているのは、冬場の降雨が少なく、乾燥が続いていること。それがカブの形に影響を及ぼすのです。
「去年、今年と、雨がこんなに少ない年はありません。水分が少なくても、丸くなってほしい」
カブの食用部分は根ではなく胚軸(茎)で、先端に伸びる細い根から養分と水分を吸収します。なので水分が欠乏すると、根が太くなり、胚軸の先端が三角形に尖るのです。地元ではそれを「レモン球」と呼んでいます。カブは、白さと形が命。丸くなければ商品価値が落ち、クレームの対象にもなるのです。

そこで田中さんは、3年前から「ふゆばな」の試験栽培を始めました。10月24日に播種をして、2月初旬に収穫を迎える作型。低温期でも安定して肥大し、同時期に栽培している慣行品種に比べ、レモン球の発生が少ないと実感。そして、
「次作から本格的に導入したい」
と、話されていました。

「ふゆばな」(右)は、他品種(左)に比べると軸が太くて折れにくく、根部の先端が三角形になる「レモン球」が少ないことがわかる。

「ふゆばな」(右)は、他品種(左)に比べると軸が太くて折れにくく、根部の先端が三角形になる「レモン球」が少ないことがわかる。

軸がしっかりしていて束ねやすい品種を

収穫を終えたカブは、土つきのまま作業場へ運び、出荷作業が始まります。円形の作業台はくるくる回転するようになっていて、パートタイマーのスタッフが汚れた葉を取り除き、茂吉さんが台に乗せ、そこから田中さんが同じサイズのカブを選び、L玉以下は5玉、2〜3Lは3玉、それ以上は2玉に結束。同時に葉先を切り落とします。
「カブを丸く(=結束)する作業が一番大事。全体のペースが決まります」
選果→結束→調製が同時進行なので、作業が止まったりスピードダウンすると、その日の出荷量が減ってしまうのです。冬のカブは、寒さで葉先が黄変するだけでなく、葉軸がはがれてしまうことも。そのたび結束作業が滞ります。
「その点、『ふゆばな』は、軸がバリッとしていて束ねやすい」
寒さによる葉軸の傷みが少なく、軸がクタッとなりにくいことが「ふゆばな」の特長。
カブはとても繊細で、肌が弱く、小さな衝撃でも傷つきやすいため機械化が難しく、選果や結束も手作業が中心。多くの農家が家族と数名のパート従業員でチームを組んで栽培と出荷に当たっています。その中で、軸が強くて抜きやすく、束ねやすいのも「ふゆばな」の強み。作業効率の向上にもつながります。

JAいるま野管内で生産・出荷された「ふゆばな」。束ねたカブの軸を内側にして、ダンボールに詰めて出荷する。

JAいるま野管内で生産・出荷された「ふゆばな」。束ねたカブの軸を内側にして、ダンボールに詰めて出荷する。

カブの選別基準。Lサイズ以下は5玉、2〜3Lは3玉で結束して出荷している。

カブの選別基準。Lサイズ以下は5玉、2〜3Lは3玉で結束して出荷している。

不要な葉を取り除き、回転台に並べられたカブから瞬時に同じサイズを選び出し、テンポよく結束する田中さん[写真左]。このスピードが、その日の出荷量を左右する。

不要な葉を取り除き、回転台に並べられたカブから瞬時に同じサイズを選び出し、テンポよく結束する田中さん[写真左]。このスピードが、その日の出荷量を左右する。

結束したカブを洗浄機に通し、真っ白に洗い上げる。

結束したカブを洗浄機に通し、真っ白に洗い上げる。

2Lの3玉をメインに評価と価格も上昇中

かつて関東産のカブといえば、1束5玉で結束して出荷する、小ぶりなMかLサイズが中心でした。ところが、
「2年ほど前から、2Lの3玉を中心に販売するようになりました」
と話すのは、JAいるま野販売部販売促進課主任の伊藤聖さん。カブの大きさに対する嗜好は地域によって異なり、都市部よりも地方の市場では大きめのカブが好まれる傾向にあるようです。そこに着目した伊藤さんは、地方へ向け積極的に「2L3玉のカブ」を販売しました。すると他産地との差別化を図ると同時に評価も高まり、価格もじわじわ上昇中。
一方、生産現場では結束の回数も減るので、作業効率も上がっています。伊藤さんの元には、販売先から「もっとカブを送ってほしい」との声も届くのだとか。
首都圏内のカブ産地で、田中さんのような40代の生産者が元気に活躍中。繊細な手作業が多い中、軸が強く形も美しい「ふゆばな」の小さな違いは、産地の「大きな飛躍」へとつながっていきます。

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