産地ルポ
2022/2/21掲載
産地ルポ
2022/2/21掲載
JA板野郡 西部事業所営農指導課 佐藤 大樹
徳島県阿波市吉野町は温暖な気候に加えて吉野川の豊かな水資源と沖積土壌を生かして夏は果菜の夏秋ナス、冬は暖地レタスを中心に各種葉菜類が作付けされています。
一条地区におけるスイートコーンの栽培は1977年ごろより数名の生産者が前作のレタス栽培で使用したトンネルやマルチを活用して栽培を始めたことが部会発足の始まりだと資料に記され、阿波市農業振興課の資料によると、当時吉野町全体で約30haの作付けがされていたようです。生産者の高齢化などから作付け面積が減少しましたが、新規就農者の作付けや稲作からの転作を契機に再び面積拡大に転じ、若手生産者を中心に現在も先人の栽培技術を引き継いで、部会員20名、栽培面積は5haの規模で生産に取り組んでいます。
スイートコーンの出荷時期は5月下旬から7月中旬で、関西や中国地方の市場に約1万2000ケースを出荷しています。
かつてスイートコーンの品種は、バイカラーや大穂の品種が中心でしたが、市場からの要望や生産者が栽培面で試行錯誤を毎年続け、現在は「ほしつぶコーン」を部会一丸となって栽培に取り組んでいます。「ほしつぶコーン」に切り替えた大きな理由は、生育ぞろいのよさに加えて、草丈が高くなく倒伏に強いことや先端不稔の少なさ。しなびに強く、出荷後に店頭で店もちが長いという品質のよさにあります。
収穫後、特に「しなび」に強いことが近年市場からの強い要望でした。また当地は台風の通り道でもありますが、通常でも春先から風が強いため、「風による倒伏に強いこと」が生産者側の条件です。「ほしつぶコーン」は市場性と作業性がマッチングしたことで、当地の作付け面積拡大の大きな引き金になっています。
米澤部会長によると、かつては主役であるレタスの後にあまり手間をかけずトンネルやマルチを利用し、残肥の吸収を兼ねたクリーニングクロップとして栽培する二毛作的な位置づけでした。近年、作業時間が少なく期間も短めながら反収も上がりやすい品目であることから、新規就農者には積極的に導入をすすめています。
「ほしつぶコーン」の播種は3月中旬より開始し、作付け規模の大きい生産者は5月中旬まで行っています。主幹が太いため倒伏には強いのですが、密植すぎると生育後半に風通しが悪くなり病害虫の発生につながることもあったため、従来品種よりやや広めに株間を広げて播種するようにしています。
肥料は、前述のようにレタス収穫後の圃場を活用して栽培を行うので、作付け前に元肥や土壌改良剤などは施しませんが、その分、中耕時に十分追肥を行います。初期生育は旺盛なため、本葉5〜6枚時の追肥は遅れずに行い生育を促します。
害虫防除対策は、雄穂が見え始めたころの「アワノメイガ」対策は必須として必ず実施し、発生状況を見ながら再度の防除も行います。さらに、天候や予察情報をもとにアブラムシやカメムシなどの病害虫の防除を適時行っていきます。
現在、2021年度の栽培が終了し、生産者の方は秋冬野菜作付けに日々奮闘されています。今年度(2021年)は、特に4月後半の乾燥や5月下旬からの長雨に悩まされました。乾燥は圃場への入水で対応し、肥大不足はある程度回避できましたが、長雨になかなか対応できず「アワノメイガ」や「オオタバコガ」の防除がやや遅れ気味となり、一部の圃場では穂先での被害が見られました。来期は、早い梅雨入りを想定した病害虫防除ローテーション設計も視野に入れています。
また、新規就農者のなかには前作がレタス以外の部会員も増えています。部会からは、前作にレタス以外の品目を栽培した圃場から作付け時の施肥量の指針の作成が求められています。
JAでは部会の各種要望に応えるべく、生産者との日々の会話を大切にし、他産地に打ち勝つ力強い生産部会になるよう常にアンテナを広げ、さらなる生産部会の発展を目指して行きたいと考えています。
2024年
秋種特集号 vol.58
2024年
春種特集号 vol.57