産地ルポ

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2022/7/20掲載

作りやすさとリコピン含有量がパワーアップした
「京くれないEX」で西洋ニンジンと差別化!

岐阜県各務原市 阿部農園 阿部透宏さん 阿部さんの圃場にて。「京くれないEX」を手に。

岐阜県各務原市 阿部農園 阿部透宏さん 
阿部さんの圃場にて。「京くれないEX」を手に。

編集部

地域概況

各務原市は、岐阜県南部に位置する人口約15万人の都市です。江戸時代の面影を残す宿場「中山道鵜沼宿」や木曾川を挟んだ各務原方面からは愛知県にある国宝犬山城が望めるなど、歴史を感じるスポットが点在しています。市の南部に流れる木曽川の間に広がる各務原台地では「各務原ニンジン」が栽培され、県内で随一の生産量を誇ります。比較的温暖な気候で、春と冬に収穫期を迎えるニンジン以外に、カブ、ダイコンなどの露地野菜栽培が盛んな地域です。

阿部農園

「京くれないEX」の作型表

「京くれないEX」の作型表

「京くれない」で差別化 味にも太鼓判!

岐阜県各務原市鵜沼地区には、保湿性にすぐれた黒ボク土壌が広がり、その肥沃な土で育った「各務原ニンジン」は色が鮮やかでおいしいと市の特産品になっています。当地でニンジンの栽培を代々受け継いでいる阿部透宏さんは差別化を図るため「京くれないEX」を導入されています。
「面積を増やすのは限界。単価を上げるために何か特色が出せないか」と悩まれていました。そんなとき、タキイ園芸専門学校に通っていた息子さんから、金時ニンジンと五寸ニンジンの中間型で通常のニンジンにはほとんど含まれないリコピンが豊富な「京くれない」という品種があると聞いて、興味をもたれたのがきっかけです。
直販を行う阿部さんですが、手応えは上々。阿部農園の畑、約1haのうち、当初は秋まきの5割は「京くれない」を作付けされました。「EXになって発芽のそろいがよくなった」と2021年はさらに作付面積を8割に増やされています。
「ニンジンにカロテンが含まれているのは普通だけれど、リコピンが豊富なのは話題になる」
阿部さんは畑でとれた「京くれないEX」の成分分析を業者に依頼し、成分量を販売袋に記載することで消費者にも納得して購入してもらう工夫をされました。また、商品名も直感的にわかりやすい「リコピンにんじん」と名付け販売することに。
阿部さんのねらい通り、鮮やかな見た目とあいまって、リコピンという付加価値がついたことで、西洋ニンジンより高い単価が付きました。バローやイオンなど地元のスーパーマーケットに個人出荷され、1袋に2〜3本入り(500g)が200円の高値で販売されています。スーパーでの販売はMサイズが主流ですが、「阿部農園のリコピンにんじん」としてLサイズ2本入りでの販売は「ボリュームがあってよい」とお客さんにも好評だそうです。
また、阿部さん自作の無人直売所では、規格外のものを1袋(1s)200円で販売されますが、2〜3日で山積みされた袋が売り切れるほど人気です。「見た目からしておいしそうでしょう。生絞りジュースにすると最高ですよ」と、加工品として試作中の特製ニンジンジュースをいただくと、独特なニンジン臭が少なく、のどごしがさわやか。納得のおいしさでした。

洗浄され、土が落とされた「京くれないEX」は鮮やか。このあと重さで選別され袋詰めされる。

洗浄され、土が落とされた「京くれないEX」は鮮やか。このあと重さで選別され袋詰めされる。

岐阜県公衆衛生検査センターでの成分分析結果がパッケージに印刷されていて、「リコピンにんじん」として販売される。

岐阜県公衆衛生検査センターでの成分分析結果がパッケージに印刷されていて、「リコピンにんじん」として販売される。

「京くれないEX」の今後の展開に期待

この地域では全国的にも珍しいニンジンの二期作を行なっており、秋作は、8月中旬まき、12月末〜2月が収穫のピークになります。春の作型は2月20日ごろから播種、5月の連休あたりから収穫が始まります。阿部さんの秋作は「京くれないEX」が中心です。春作はベタがけ栽培で西洋ニンジンがメインとなり、タキイの品種では「向陽二号」を栽培されています。今期は晩抽性が向上したことで春作も「京くれないEX」を作付けされました。
収穫、洗浄、選別、袋詰め、「リコピンにんじん」としての販売のコーディネートまですべて自分で行っておられます。その努力が地元のテレビ局(CCnet Web TV 関連動画はコチラ)や新聞に取り上げられ、各務原市観光協会の「推奨特産品」に認定されたり、郵便局のふるさと小包2022年度カタログに掲載されたりと、販路を着々と広げられています。今後も阿部農園の「リコピンにんじん」がどう展開していくか、期待が高まります。

阿部透宏さんお手製の直売所は見通しのよいカーブの角地にあり、赤いニンジンがよく目立つ。規格外でもおいしさは変わらないのでお得感があると、地元の方に親しまれている。

阿部透宏さんお手製の直売所は見通しのよいカーブの角地にあり、赤いニンジンがよく目立つ。規格外でもおいしさは変わらないのでお得感があると、地元の方に親しまれている。