産地ルポ

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2024/2/20掲載

JA熊本うき
赤肉メロン「レノンスター」が
秀品率の高さと品質で作付けを増やす!

「レノンスター」に期待をよせるJA熊本うき メロン専門部会の稲葉勇児部会長(左)とJA熊本うき 営農指導部園芸三課 辻󠄀貴之課長。

「レノンスター」に期待をよせるJA熊本うき メロン専門部会の稲葉勇児部会長(左)とJA熊本うき 営農指導部園芸三課 辻󠄀貴之課長。

宇城地区のメロン栽培は小川地区の連棟ハウスの立体栽培と周辺の単棟ハウスの地這い栽培があります。小川地区はJA熊本うきのメロン栽培の6割を占め、当地区メロン栽培の中核を担っています。
今回はJA熊本うきメロン専門部会の稲葉勇児部会長と営農指導部の辻󠄀貴之課長のお二人にお話を伺いました。

編集部 2023年4月19日取材

温暖な気候条件を生かした多彩な農作物を誇る農業地帯

JA熊本うきが位置する宇城市は熊本県の中央に位置し、2005年の平成の大合併で宇土郡三角町・不知火町と下益城郡松橋町・小川町・豊野町が合併して新設されました。北の熊本市、玉名市、南の八代市に次ぐ熊本県有数の野菜生産地域です。
温暖な気候を生かし、平坦部ではメロン、トマト、キュウリ、ナスなど、中山間地域と海岸島しょ地域では果実などが栽培されています。

メロン栽培のハウスが立ち並ぶ小川地区(砂川の河川敷から)。

メロン栽培のハウスが立ち並ぶ小川地区(砂川の河川敷から)。

うきのメロン

稲葉部会長は就農以来メロン栽培一筋のベテランで、赤肉メロンの栽培は約20年になります。合計1.1haのハウスで4月上旬から5月中旬まで出荷されており、奥さまと息子さん、娘さん2人のご家族での経営を主体に取り組まれています。
タキイから紹介された「レノンスター」は比較試験の試作から5年目。導入までの経緯を辻󠄀課長に伺ったところ、「従来品種がつる割病で問題になっている中、品種比較試験の一品種として試験を実施しました。初年度から及第点に達しており試験栽培を続けてきました」と、常に実施されている比較試験の中から評価を重ねてきた品種とのことでした。稲葉部会長は赤肉の主力品種と同じ条件で栽培した場合は、草勢が徒長傾向になりますが、数年間の試験の末、特性を理解した2年前から導入を決断。現在はすべて「レノンスター」に切り替え、栽培いただいています。宇城地区全体では昨年1.8haから2023年は部会員13名での栽培に拡大し、合計3.7haに増加し、さらに増加する見通しとのことです。

秀品率の高さが魅力

現在、赤肉の主力品種「クインシー」は、当地でも長く栽培され、市場も含めブランドとして知られています。ここにきて「レノンスター」がなぜ生産者に評価されているのか、一番の特長は「秀品率の高さ」にあります。辻󠄀課長は「とにかく秀品率が高いです。従来赤肉品種の秀品率がおよそ6割ぐらいなのですが、この品種なら8〜9割の秀品率です」
稲葉部会長も「着果すれば、ほとんど秀品で収穫できます」とお二人とも秀品率の高さを一番の魅力にあげられました。出荷は5s箱で2Lの5玉、3Lの4玉が一番値段が付く中で、「レノンスター」の玉はネットや玉の乱れもほとんどないため秀品での可販果率が上がると喜ばれています。

あと2〜3日で収穫を迎える「レノンスター」。着果と肥大が安定し、きれいなネットに仕上がっていた。

あと2〜3日で収穫を迎える「レノンスター」。着果と肥大が安定し、きれいなネットに仕上がっていた。

自根栽培と作りやすさで経費削減と省力化が可能に

辻󠄀課長は、「生産者のためになることが一番」と、営農指導の立場から評価されています。それは、つる割病に全レース対応できたことで、自根栽培が可能となったことです。接ぎ木が不要となり、労力と経費削減につながっています。「(ご承知のように臭化メチルが使えなくなり)土壌消毒が難しくなる状況で、これまでは保険の意味で台木を用いていましたが、台木を使わなくて済むのは助かります」と生産者の経費削減につながったことは間違いないようでした。

また、稲葉部会長が栽培性で注目されるのは、「低温伸長性にすぐれるため、温度が低い時期に従来品種より低い温度で管理ができる」と暖房費の削減が見込めることです。昨今の重油価格高騰で膨らむ栽培経費の抑制にも貢献できているようでした。
「メロン栽培の基本的な温湿度管理は必要ですが、従来品種と比べて全体的にふわっとネットが入り始めて、そのあとの管理はそこまで神経を使わなくてよい作りやすさもあります」と辻󠄀課長。「レノンスター」には懐の深い栽培性があるとの印象です。

メロンを栽培して20年の稲葉部会長。「レノンスター」導入に至るまでには失敗もあった。

メロンを栽培して20年の稲葉部会長。「レノンスター」導入に至るまでには失敗もあった。

糖度15度が出荷目安
後半のつるもちがよく糖度がのる

栽培は2本仕立ての3果どりで着果後約55日で糖度15度が出荷の目安。辻󠄀課長は着果から50日目の試し切りで糖度を計り、各生産者と出荷のタイミングを確認されます。稲葉部会長のハウスは着果後52日目で糖度「14.8度」を示していました。最近の陽気で気温が上昇していることもあり、「今週には出荷できそうですね」と稲葉部会長と順調な生育に安堵の笑みを浮かべておられました。

「糖度14.8度ですね」。着果後50日前後で1軒1軒糖度を確認し、15度以上になる日を想定し収穫日を決める。

「糖度14.8度ですね」。着果後50日前後で一軒一軒糖度を確認し、15度以上になる日を想定し収穫日を決める。

肉厚で緻密な肉質
すっきりとした甘さが特長

味について市場の評価はどうなのか、主力品種と差が出ないのかと心配を口にすると、「従来品種と同じ食味ではありませんが、すっきりとした甘さで肉質がしっかりしているから、収穫して10日目ごろに食べごろを迎えるので輸送には適しています。カット後のドリップが少ないため、店頭で日もちしてカット販売にも向くと思います」とのことでした。

栽培面では耐病性だけでなく、秀品率の高さ、作りやすさで生産者に貢献していることを実感できました。今後は、赤肉メロンの牽引役として「レノン」シリーズ特有のピリピリ感のない、さわやかな食味や食感と皮が薄く果肉が多い特長を多くの方々に知っていただき、産地の発展に寄与できればと願っています。

従来品種より1日長く店もちし、カット売りにしたときも糖度が安定していて肉厚で見た目もよく販売しやすい。

従来品種より1日長く店もちし、カット売りにしたときも糖度が安定していて肉厚で見た目もよく販売しやすい。