
産地ルポ
2026/2/20掲載

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2026/2/20掲載

「グランバギー」(左)と「台助」(右)の根(2024年11月6日掘り取り調査)
2025年8月7日取材
執筆 JAおおいた 本店営農企画部 営農支援課 広域営農指導員 山田 晴夫
JAおおいたのピーマン部会は、夏秋型栽培であり、6支部で構成され部会員約380名、約55haで栽培しています。出荷量としては年間約4600tで、県下3カ所の共同選果場で選果し、県統一ブランドとして関西から中国地方および九州各地に出荷し、夏秋ピーマンの出荷量としては茨城・岩手に続き全国3位、西日本では1位の産地を築いています。
また、県内外からの新規就農者の受け入れ施設・体制を強化して近年では、30〜40代の若い生産者も増えています。
ピーマンを主として、甘藷(ブランド名:甘太くん)、白ネギ(これも西日本一の産品です)、スイートピーなどの複合経営で安定した経営体を形成しています。
3つの潅漑用ダムを利用した畑作が多いですが、水田を活用した栽培もあります。


左から筆者とピーマン生産部会豊後大野支部の木本恭輔支部長。
ミニハウス(間口1.8m、3m)【写真1】と通常の単棟ハウス(間口6m)の雨よけ主体に一部露地栽培で構成されており、定植は3月上旬に始まり、4月下旬から11月下旬まで出荷しています。
【写真1】

3mミニハウス。
穂木品種は、(公)園芸植物育種研究所(以下「園研」)の「さらら」および「TSRさらら」が主体で露地では「みおぎグリーン」が栽培されています。
一部セル苗からの2次育苗はありますが、ほとんどが定植苗の購入です。
整枝方法は、ミニハウス中心に横に網目の広いネットを3〜4段設置して、やや放任的に栽培する方法が主体で、間口6mハウスでは糸つり4本仕立て栽培も一部あります。
出荷は6月下旬が最初のピークで、その後8月にもピークが来るのですが、近年の猛暑・乾燥で需要期の7〜8月の出荷低迷が産地の大きな課題となっています。
害虫ではアザミウマ、タバコガ類、病害では斑点病対策に苦慮しています。
また、近年は異常高温が続いていますので、白系の寒冷紗の被覆、散乱光フィルム、天井塗布剤(石灰系など)、散水処理などによる対策をする生産者が増えています。
従来自根栽培が主体ではありますが、青枯病対策のため数種類の台木品種を利用してきました。ピーマンの接ぎ木の場合は、草勢がおとなしくなり収量性が自根より劣る傾向が大きな課題でした。
そういう状況で、強草勢が期待される「グランバギー」を2022年から約3年間、大分県農林水産研究指導センターの試験と並行して現地組合員が率先して現地試験に取り組んできました。
その結果、外品率が低く特に穂木品種の特性的に多い尻腐症が少なくなるなど、「グランバギー」の草勢や品質・収量性を確認して、2024年産から本格的導入に踏み切りました【表1】。2025年産では県全体の接ぎ木率約33%のうち「グランバギー」の割合は3分の2を占め2024年産より倍増しました。
【表1】大分県農林水産研究指導センターの試験結果



「グランバギー」使用の接ぎ木苗は初期草勢がおとなしいが、取材時(2025年8月7日)にはほぼ自根苗並みの草勢になっていた。
大分県農林水産研究指導センターの調査では、自根や従来の台木品種と比べて収量性も問題なく、尻腐症などの障害果も少ない傾向となりました。一方でタキイ種苗の調べによると「グランバギー」は初期に草勢がおとなしい傾向がありました。圃場によりますが、出荷始めの5〜6月は自根より収量が少なく、7月以降に自根と同等以上になり、終盤までなり疲れしない特性を示しました【図1】。
【図1】ハウス夏秋ピーマン月別収量データ
(2023年 タキイ種苗調べ)

「グランバギー」台木を使用した株は、梅雨明け後の収穫谷間が減り、収量を維持。
主根が湾曲して根域がやや偏る自根に比べて、「グランバギー」は直根性のうえ横根も多く【写真2】、広く均等に根域を形成して、中盤以降の根量の違いが大きいと思われました。
【写真2】

接ぎ木苗(「グランバギー」:左)と自根の2025年3月13日定植苗の比較。
根量が多いことで、蒸散量に応じた吸水力によって、この夏場の異常高温による障害果(尻腐症など)の発生抑制や収量増につながっています。なお、初期の草勢がおとなしい課題を解決するために、本格導入した2024年度には「グランバギー」の特徴を生かした栽培方法の研修会を各支部で4回開催しました。2025年産では初期生育を強くするために定植後の潅水施肥量を増やし、発根促進剤などのバイオスティミュラント資材の利用推進、摘果を2番果までするなど、初期の草勢強化にむけた管理を行い、5〜6月の収量減を昨年よりは抑えている状況です。
以前のミニハウスでは、連作障害対策で定期的にハウスの移動もしていました。近年では移動せず連作するようになったこともあり、当地では青枯病対策だけでなくセンチュウも含めた連作障害対策としても接ぎ木率が年々高まっています。さらに2025年の夏も梅雨明けが早いなど強烈な猛暑が常態化しているので、夏を制する大きな手段として吸水力の高い「グランバギー」には大きな期待がかかっています。土壌病害がない場合は、収量性・苗代のコストを含めて、接ぎ木より自根の方がよいという声もあるため、今後「グランバギー」の特徴をより生かした栽培管理を行い、夏秋ピーマン産地を支えていきたいと思います。



2026年
春種特集号 vol.61

2025年
秋種特集号 vol.60