産地ルポ

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2024/2/20掲載

JAぴっぷ町 「グラッセ」を導入し
うどんこ病防除の労力が減り収量増加につながる

右から2番目がJA ぴっぷ町南瓜部会部会長の西間亙さん、その左側に向かって三上雅人さんと筆者。

右から2番目がJA ぴっぷ町南瓜部会部会長の西間亙さん、その左側に向かって三上雅人さんと筆者。

JAぴっぷ町南瓜部会は40名が所属し、約33ha栽培を行っています。2022年度の出荷量は360t、販売額は2300万円程度となります。最近では面積が拡大しているため、コンテナでの道内の加工業者への出荷が中心となっていますが、箱に詰めて道内市場への出荷も行っています。
当地では長年、うどんこ病耐病性をもち多収である品種を模索しており、2021年度より「グラッセ」の試験栽培を開始しました。

比布町農業協同組合 営農販売課 販売係 野林 雅哉
2023年6月23日取材

JAぴっぷ町の概要

JAぴっぷ町は北海道のほぼ中央に位置し、ミネラル豊かな石狩川の水源を利用し、水稲を中心にイチゴ・メロン・オクラ・カボチャ・トマト・ホウレンソウ・キュウリなど多くの青果物の生産と出荷を行っています。
カボチャは5月下旬から6月中旬ごろまで定植作業を行い、8月下旬より収穫・出荷作業を行います。出荷作業は9月下旬まで行っています。

トラクターに専用のアタッチメントをつけ機械であけた定植穴に選定した苗を植え付け、後ろの人が手直しをしていく。

トラクターに専用のアタッチメントをつけ機械であけた定植穴に選定した苗を植え付け、後ろの人が手直しをしていく。

「グラッセ」導入のねらいと経緯

当地ではうどんこ病耐病性があり、多収である品種探しが長年の課題でした。候補として「グラッセ」を含むタキイ種苗の2品種のみがうどんこ病耐病性をもっていたため、2021年度よりJAぴっぷ町南瓜部会部会長の西間亙(わたる)さんを中心に「グラッセ」ともう1品種の試験栽培を開始しました。
試験栽培を行った結果、「グラッセ」はうどんこ病の発病が少なく、収穫前まで葉が枯れませんでした。葉が日よけの役目を果たし、日焼けがなかったことで収量が10a当たり1.5tとなり昨年と比べて1.5倍に増え、秀品率も上がりました。そこで、2022年度より「グラッセ」を部会推奨品種として紹介し、部会員の8割が栽培を開始しました。

高度なうどんこ病耐病性をもち、減農薬栽培が可能なグラッセ。

高度なうどんこ病耐病性をもち、減農薬栽培が可能な「グラッセ」。

従来品種と比較しての栽培管理の違い

「グラッセ」は葉が枯れないため従来の品種と収穫の見分け方が違います。定植後と収穫前にタキイ担当者と生産圃場へ足を運びポイントを確認したことで秀品率向上につながりました。
「グラッセ」の栽培を開始して2年、うどんこ病の防除回数が減らせたことで虫やうどんこ病を除く病気の防除に手をかけることができています。あわせて従来の品種に比べて元肥が必要な品種のため、適切な元肥・追肥管理を徹底し収量・秀品率の向上につなげたいと考えています。

三上さんによると2022年度はうどんこ病耐病性の効果で通常より殺菌剤の散布が2回少なく済んだとのこと。

三上さんによると2022年度はうどんこ病耐病性の効果で通常より殺菌剤の散布が2回少なく済んだとのこと。

昨年の収量成績や秀品率、今期の予想など

2022年度の「グラッセ」の収量は、従来品種と比較すると約2倍の増収、日焼けが少ないことによって秀品率は97〜99%と高い結果となりました。
今年の栽培では、昨年より増収を目標とし、1株当たり5〜6玉サイズを中心に肉質が厚く、濃緑の良品質の「グラッセ」を集荷することができるように努力していきたいと思います。

うどんこ病で葉が枯れない効果が出て日焼けが少なく2022年度の収量は従来品種の約2倍となった。

うどんこ病で葉が枯れない効果が出て日焼けが少なく2022年度の収量は従来品種の約2倍となった。

西間亙部会長の「グラッセ」の評価

西間亙さんは水稲を中心にカボチャ、イチゴを栽培しています。2023年度のカボチャの栽培面積は4.3ha作付けを行いそのうち「グラッセ」を3ha、「ほっこりうらら」を1.3ha作付けしています。水稲との複合経営で全面積のカボチャを摘芯することが難しいため、一部放任栽培を行っています。
2020年から新型コロナウイルスの感染拡大でお米の需要が減少した一方で、加工用カボチャの需要は減らなかったため、水稲の作付面積を減らしカボチャの作付面積を増やしてこられました。

  • ※「ほっこりうらら」は地域限定品種です。

日焼けがなく、2回収穫できたことで増収に

今までの品種はうどんこ病によって終盤に葉が枯れてしまいます。そのため収穫は適期の1回が限界でしたが、「グラッセ」は収穫時も葉が枯れずに残っていたため、1回目の収穫の後、圃場に残した未熟な玉も最後まで肥大し、2回目の収穫が可能でした。今までの品種と違い葉が残ることで玉を探すことに少し苦労されたそうですが、2回目の収穫ができたことで最終的に増収につながりました。

今年の西間さんは、昨年以上の増収を目標としているため、誘引作業を行い、収穫通路を確保することによってつるを傷めないように管理されると聞いています。
2022年度のカボチャの秀品率は約96%でそのうち玉の日焼けが2%を占めていましたが、「グラッセ」に品種変更したことで葉によって日陰ができるため日焼けがなくなり、秀品率が上がったと考えられます。来年以降はさらに秀品率を上げていけるように努力していきます。

葉が残ることで最後まで肥大し収量が上がる。

葉が残ることで最後まで肥大し収量が上がる。