2020/02/20掲載
(この記事は2018年8月に取材したものです。)
日本一の暑さを記録した埼玉県の熊谷市のお隣の町、ネギで有名な深谷市。松嶋農園さんは、当地で4代続く生産者です。代表の多喜男さんはしばらく医薬品関係の会社勤めを経験したのち就農して30 年あまり。現在は息子さん2人も就職先としても松嶋農園に魅力を感じ就農。2年前から会社組織にされています。
昔から稲はなく、畑作と養蚕を主体に、父の代には苗売りもされていたという松嶋農園さん。現在の主な生産物は春と秋のブロッコリーや、白ネギにカット加工用のロメインレタスなどを、夏季はスイートコーンを栽培されています。オクラの栽培は10年くらい前からで、品種は「アーリーファイブ」と「グリーンソード」。5月のハウスからスタートし露地とあわせ27aほど栽培されています。そんな畑の一画に、「ヘルシエ」が300株ほど定植されました。
足が速く鮮度が命のオクラは主に地元の深谷中央青果さんへ出荷。地元のイトーヨーカドーさんなどに並びます。今年タネから試作した「ヘルシエ」は、タネが届いたのが5月17日で定植が6月20日から。今回は本数も少なく、通常オクラは日に300袋出せますが、「ヘルシエ」は130g9本入りを80〜100袋しか賄えないため、大型店舗のイトーヨーカドーアリオ深谷店のインナイショップの直売コーナーに絞って様子を見ているそうです。「初年度なので価格も通常オクラと同じで販売されていますが、最初に買った方でぼちぼちリピーターがついてきています。一度に3袋とかまとめ買いされていく様子を見ますよ」
松嶋さん自身「ヘルシエ」は「オクラとは差別化してプレミア感を出したい。この粘りは食べてみればよくわかりますから」と、自分も惚れ込んだ食感を如何に価格に反映できるか、売り方を思案中でした。
「ヘルシエ」のよさをさらに引き出すために松嶋さんの栽培は工夫がありました。それは12×15pの株間でひと穴に3粒まきの超密植栽培。これは丸オクラである「ヘルシエ」のやわらかい特長を生かすために、細くやわらかく作りたいとの狙いです。樹が太くなり果梗部も太くなると果肉もかたくなりおいしくなくなるそうです。さらに果梗部の切り口が時間とともに黒く着色し鮮度感を損なうため果梗部は細くしてなるべく目立たないようにする工夫だとか。通常オクラより白い「ヘルシエ」ならなおさらです。
「タキイの品種は発芽勢がいいですね。この品種も発芽がよかったですね」という松嶋さんは苗売りを手掛けていただけあって、「苗半作」の大切さを知る生産者さんです。樹勢は極早生早出し向きの「アーリーファイブ」よりは弱く「グリーンソード」よりは強め、生育はゆっくりだと感じておられます。
草姿は畑を見せていただいたら一目瞭然。草丈は低い順から「アーリーファイブ」「グリーンソード」「ヘルシエ」となります。「花も粘りがあって食べられますよ」と初めてオクラの花を食べてみましたが確かに粘りがあってオクラの味がしました。
イトーヨーカドーやセブンイレブンなどの出荷先をもつ松嶋さんですが、店舗当たりの量を少なくして出荷する店舗数を増やして行きたいという中で、10円、20円の付加価値を如何に伝えられるかを、食味と食感で差別化できる品種としてリピーターの拡大を楽しみにしておられました。
前年のリピートぶりをみて楽しみにしていた結果、地元某大手スーパーからぜひ当店でも売りたいとの話があり、2019年7月より全量通常のオクラよりも50%高の納入価格で出荷させていただきました。「ヘルシエ」の違いが共感でき、嬉しく思います。
販売時には先方が用意したシールを貼りアピールされていました。今年はさらにリピーターが増えると手応えを感じています。
(松嶋 多喜男)
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