産地ルポ
2023/2/20掲載
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2023/2/20掲載
2022年に発表したリーフレタス「フレアルージュ」は、近年の夏季の高温や豪雨などに影響されにくく、各種病害に安定して強いこと、また立性で作業性がよいことが評価され高冷地での導入が進みました。今回は、長野県南佐久郡川上村を訪れお話を伺いました。
編集部
川上村は長野県の東部、南佐久郡の南東部、信濃川の源流地域に位置し、村域全体が1,000mを超える高冷地です。川上村役場は標高1,185mに位置しており、これは役場や役所の所在地としては日本で最も標高の高い場所に位置します。農業の中心はほとんどが標高1,100m以上で日本有数のレタス産地です。
長野県は夏季出荷のレタス産地として突出しており、主に、南佐久、北佐久、松筑の3地区でレタスの作付けが行われています。中でも川上村の位置する南佐久がその中の約5割を、さらに川上村は、南佐久地区全体の出荷量の70%程度を占めており、日本一のレタス産地といっても過言ではないでしょう。これは厳しい気象条件を生かして高原野菜の生産に着手し、特に需要の伸びの大きいレタス生産に特化した農業基盤を確立してきた先人たちの努力の賜物です。
8月上旬、川上村の総合農協であるJA長野八ヶ岳川上支所を訪れました。この地区のレタス出荷は6月10日ごろ〜10月ですが、最盛期は7〜8月中旬。訪問したのは最盛期ど真ん中でした。出荷数は1日当たり玉レタス2万ケース、レッドリーフレタス4,000ケース、グリーンリーフレタス3,000ケース。近年はコンテナによる契約出荷が増えており、ケースと同程度出荷されています。
夜明け前から収穫し箱詰めされたレタスは出荷場に運び込まれ、午前9時には大半のレタスの予冷が始まっています。大変お忙しい中、販売指導課営農指導員の小池敬一さんと生産者の林文典さんにお話を伺いました。
「川上村では平均的な規模です」と話す、林さんの畑の標高は1,350m、栽培面積は約5ha。朝の収穫時に8名ほど、昼間は5名ほどで作業を回しておられます。玉レタスとリーフレタスの栽培ですが、その比率は6:4。林さんが農業の世界に入った9年前にはリーフレタスを生産していましたが「おいしい玉レタスも作りたい」との思いがあり、玉レタスの栽培を増やしてきたとのことです。また、玉レタスの方が商品となる外葉が少ないため、近年多発するゲリラ豪雨や雹による被害が少なく済むメリットもあるようです。出荷はコンテナとケースが1:1の割合です。
夏場のリーフレタスは「フレアルージュ」一本にされた林さん。葉がしなやかで葉折れが少なく、立性で作業性がよい。また7〜8月に多発するゲリラ豪雨にも下葉が強く安定して出荷できると導入を決められました。
育苗はセルトレイ288穴で20日程度、本葉2枚半ほどで定植し、リーフレタスであれば定植後31〜32日ほどで出荷。株間24p、条間45p、年によって変わりますが原則としてレタス→レタスあるいはレタス→ハクサイの2回転で白黒マルチ(0.022×135×400)を全面マルチして栽培されています。
①雨による傷みが少ない
近年7〜8月に降雨日が多くなり、下葉が傷んで出荷できない事例が多い中で、以前作付けしていた品種より格段に下葉が強い。
②作業性がよい
立性でバランスのよい形状でタコ足や腰高がなく、葉がしなやかで折れにくいため出荷調製が容易にできる。
③根腐病全般に比較的強い
根腐病、軟腐病やチップバーンもみられず安心して栽培できる。
「フレアルージュ」は、高温期のリーフレタスとして定番になりつつありますが、今年は一部の圃場で結球症状が見られることが報告されています。原因として、低温や乾燥などのストレスが考えられます。近年の異常気象により、圃場環境を思うように整備できない状況が続いていますが、圃場を適湿に保ち、初期から生育をスムーズに進めること、適期収穫を行うことが大切です。
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