産地ルポ

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2026/2/20掲載

茨城県 (株)大島種苗店
着果とつるもちのよさに太鼓判
スイカ台木用カンピョウ「ギガント」で収量増

収穫間近に迫った生産者の鈴木さんのハウスの小玉スイカ。台木を「ギガント」に切り替えて、着果節位がそろうようになった。

収穫間近に迫った生産者の鈴木さんのハウスの小玉スイカ。台木を「ギガント」に切り替えて、着果節位がそろうようになった。

編集部 2025年5月12日取材

地域概況

関東平野のほぼ中央で、筑波山を南東に臨む茨城県西地域の北部に位置する筑西市、桜川市を中心とする地域に小玉スイカの産地が形成されています。
東京から60〜80km圏内にあり、東部は筑波研究学園都市があり北部は栃木県に面しています。河川流域の水田地帯は沖積土壌、畑作地は関東ローム層に属し、この豊かな大地と恵まれた環境で穀物(コシヒカリ、常陸秋そばなど) をはじめとし、野菜や果実など数多くの品目が栽培されています。

(株)大島種苗店

小玉スイカの一大産地

筑西市、桜川市周辺は全国でも有数の小玉スイカの産地として知られています。出荷は3月上旬に始まり5月下旬から6月に最盛期を迎え、7月中旬ごろまで続きます。諸説ありますが、1950年代後半、長岡交配時代の黄肉の小玉スイカ「こだま」を栽培し始めたことが当地の小玉スイカの始まりと言われ、その後赤肉の小玉スイカの導入によって栽培面積が拡大、一大産地として発展してきました。

草勢が強くても着果がよい「ギガント」

筑西市と鉾田市に店舗を構える株式会社大島種苗店は、オリジナル商品である小玉スイカの「紅トップ」や緑肉メロン「オトメメロン」をはじめとした種苗、その他農園芸資材の販売を行い、地元に75年以上根差した種苗店です。自社商品以外の苗も、生産者の要望に応じて仕入れ、販売を行っています。
スイカ用台木としてカンピョウ「ギガント」の試験を開始したのは2022年。次の年には導入を希望する生産者の方もおられ、試験開始から4年目となる2025年産では小玉スイカの販売苗数全体の約35%、カンピョウ台木では約45%が「ギガント」に切り替わりました。

「ギガント」のよさについて伺うと、
草勢が強めで安定し、着果がよい、
2番果も安定して大玉が収穫でき、収量が上がる、
つるもちがよく、うどんこ病の発生が少ない、
ということでした。
12月〜翌2月にまたがる定植期全般で導入されており、地下水位、土質の異なる地域でも幅広く適応できています。また、「ギガント」の低温条件下でのつる伸びのよさを生かし、より低温伸長性が求められる前半の作型で「ギガント」を選択する生産者もおられるとのことでした。

左から株式会社大島種苗店の津久井健吾さん、大島俊泰社長、神田敦樹常務。

左から株式会社大島種苗店の津久井健吾さん、大島俊泰社長、神田敦樹常務。

台木に「ギガント」を使用した穂木品種。全体的に葉が立性で草勢が安定していた。

台木に「ギガント」を使用した穂木品種。全体的に葉が立性で草勢が安定していた。

収量2割増の手応え

「ギガント」を導入した生産者の鈴木千弘さんは、赤肉の小玉スイカの発売当初から小玉スイカの栽培をはじめたこの道46年のベテランです。鈴木さんはご夫婦でハウス24棟、60aで小玉スイカを栽培しています。台木は2023年までは他品種を使用していましたが、2023年に「ギガント」の接ぎ木苗を試作し、その特性を気に入り2024年産から台木をすべて「ギガント」に切り替えました。

2025年は2月10日、同月20日の2回に分けて定植し、2月10日定植のハウスは3月27日〜4月9日に1番果を手交配し、交配後約45日での収穫を見込んでいます。
20日定植のハウスは4月7〜15日に1番果を手交配し、交配後約40日後からの収穫予定です。その後、ハウス1棟につきミツバチの巣箱を1つ入れ、ハチを使って2番果を交配します。

ミツバチを使って受粉した2番果。平均して2L〜L玉サイズまで肥大する。

ミツバチを使って受粉した2番果。平均して2L〜L玉サイズまで肥大する。

2番果着果後も大きい花が咲く。

2番果着果後も大きい花が咲く。

台木を「ギガント」に切り替えて感じた変化は、1番果の着果節位がそろい、肥大が安定していること、ミツバチで交配した2番果も安定して着果、2番果まで着果してもつるもちが非常によいことでした。現在では全体で2割程度出荷量が増加していると「ギガント」を導入した手応えを感じておられました。

以前使用していた台木の接ぎ木苗では、1番果着果後につるが細くなり、2番果が着果しても果実の肥大に限界がありました。また、着果後のつるのしおれによる玉品質への影響もあったといいます。しかし、「ギガント」の接ぎ木苗では、着果後に草勢が急激に衰えることがなく、2番果でも玉サイズが2L〜L中心で出荷できています。生育後半の草勢低下や曇天後の晴天によるしおれ、うどんこ病の発生もほとんどないため、日焼け果やうるみ果も少なく玉品質が安定しているとのことでした。そのため、例年6月中旬ごろだった出荷終わりが、7月上旬ごろまで延びています。

「ギガント」を台木として使うことで、着果後も先端のつるが太い。

「ギガント」を台木として使うことで、着果後も先端のつるが太い。

「ギガント」の特性を生かす栽培指導を

「ギガント」の接ぎ木苗を初めて導入した生産者の方からは、「ギガント」の草勢が強いことを不安視する声もありました。スイカは1番果がうまく着果しないと草勢が強くなる傾向があるためで、2025年の春先が曇天続きだったことも影響していたといいます。
「ギガント」は強勢台木の中では、初期草勢が比較的おとなしく着果が安定しやすい品種です。

穂木の品種との相性については、主力品種については問題がないと見ていますが、当地域で1割程度使われている草勢が強い穂木品種との相性については、空洞果の発生などにつながらないか慎重に見極める必要があります。また、当地では作付け前にクロールピクリンでの土壌消毒が一般的ですが、中には消毒をしない生産者もいるため、そのような方にはつる割病のカンピョウ菌に対する耐病性が中程度の「ギガント」は推薦できないと神田さんは言われていました。
安定しない天候が常態化した昨今、地元種苗店の方々、生産者の皆様と共に「ギガント」が茨城県西地域の小玉スイカの生産を下支えしていきます。

左から、普段から生育状況の確認に回る津久井さん(左)と生産者の鈴木千弘さん(中)と奥様(右)。

左から、普段から生育状況の確認に回る津久井さん(左)と生産者の鈴木千弘さん(中)と奥様(右)。

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