熊本県JAたまなの長ナス 令和元年を迎え100%「PC筑陽」に切り替わる。(編集部)

2020年2月20日更新

JAたまなのナス栽培

玉名管内は、熊本県の北西部に位置し、有明海に面した県内有数の平坦水田地帯です。中央に阿蘇外輪山を水源とする菊池川が南北に貫流し、水田地域では、水稲とミニトマトやイチゴ施設園芸が盛んです。金峰山・小岱山の山麓地域および山地丘陵の中間地域では、果樹・野菜・水稲を組み合わせた複合経営が行われています。

玉名管内のナス栽培は古く、戦後まもなく夏秋期の露地栽培が始まり、昭和60年代に加温機の導入とともに、「黒陽」の促成栽培が始まりました。平成6年に、品質向上を目的として、全面的に「筑陽」に切り替わり、主に和水町・南関町・玉名市・天水町管内で生産が続いています。現在、ナス専門部会員は夏秋162名、ハウス53名で、共販面積35.8haの栽培です。多くの方が稲作との複合経営でナス栽培の省力化は大きな課題でした。

冬春の作型は8月中旬〜9月上旬に定植し、10月上旬から7月上旬(共販稼働期間)まで収穫されます。株間は65cmで、10a当たり植え付け本数は800本が基準。主枝と側枝の4本仕立てが基本ですが、V〜U字型の誘引のほか、採光性のよい当地独特の垣根3本仕立栽培もみられます。

「PC筑陽」を導入した天水町20代、田中賢将さん

父親の早逝により18歳で就農した田中さんは令和元年で9年目のまだ27歳。苦労を重ねながらも個性を持った取り組みをしたいというチャレンジ精神で、各地のナス栽培を訪ねて得た知見をもとに最新の施設栽培を取り入れてこられました。6m間口の70mハウスを24棟、40aの栽培です。中でも日射量の増減で養液潅水を自動制御するオランダ型のシステムは日本で初めての導入だとか。

ナスの肝である水管理がハウス内環境に合わせコントロールできるほか、早朝から気温を徐々に上げ日中13〜14時にハウス内が30℃近くなる設定にすることで、ナス栽培に適した秋と春の環境を1年中ハウスに再現できるようにされています。

炭酸ガスの活用、自動カーテンなどもプロファインダーでハウス内の状況を把握し、管理。実際、田中さんのハウス内は、天井の高さも相まって、湿気がこもらず快適な環境が維持されています。

草勢の変化に対応し3本仕立てのチドリ植えに工夫された田中さんの「PC筑陽」。
草勢の変化に対応し3本仕立てのチドリ植えに工夫された田中さんの「PC筑陽」。

「PC筑陽」は昨年試作し、今作から100%に切り替わりました。そのメリットとして「ホルモン処理不要」という安心感が一番大きく、4人の研修生の作業効率向上にも寄与しています。これまではきれいな花でなければ次の花につけるなど、着花の選択や一芽残し、二芽残しの判断ができませんでした。すべて着果する『PC筑陽』ではそうした判断は不要となります。規格外の着果もすべて手詰めで出荷されることになります。

「草勢のある『筑陽』は収量が増える春先に向け、厳寒期に摘葉できましたが、『PC筑陽』は春先に生育が止まるのではと不安で今のところ葉がかげません」と話す田中さん。また『筑陽』では、1番果をしっかり成らして収穫することでまっすぐ上に伸びてしまわないよう初期草勢を抑えていましたが、『PC筑陽』では逆に1番花を摘花して草勢がつくよう管理しています。さらにこれまでの4本仕立てから左右1本、2本を交互に繰り返すチドリ3本仕立てに変更。その分、株間45cmから40cmに狭めることで反当りでは10株多い計算となり、枝数で考えると4本仕立て時と収量が減少することはありません。この3本仕立ては思わぬメリットも生みました。

良作には葉面散布に加え発根剤も欠かせないという田中さん。ナス栽培は常に水が必要で根腐れが起こりやすく苦土欠をどうやって抑えるかが鍵という。その理由を葉から果実へは直接養分の還流はなく根を経由するからと説明する。
良作には葉面散布に加え発根剤も欠かせないという田中さん。ナス栽培は常に水が必要で根腐れが起こりやすく苦土欠をどうやって抑えるかが鍵という。その理由を葉から果実へは直接養分の還流はなく根を経由するからと説明する。

「これまで4本目にどの枝を誘引するか研修生には判断が難しかったのですが、3本目までの側枝はきれいに出るので判断がつき、管理が手遅れになることがなくなりました」

収量と太りの両方を求めての3本仕立てへの変更だという田中さん。環境の整った設備を生かして8月上旬から耐候性パイプハウスでの定植がスタートします。4年前に導入した養液土耕で液肥と潅水をコントロールし、炭酸ガスも7年前から取り入れている田中さんの目標収量は反当たり22tです。「ハウスを増やすため単為結果は経営にメリットだと思って切り替えました。期待するところは秀品率と収量性を上げること。ですが見逃せない特長がとげなしの有難さもあります。収穫物をコンテナへ移す際、研修生が表面の傷を気にしなくて作業効率が早まっています。」
8haの稲作と並行して年中手がかかるという田中さん。できれば箱詰めをなくしたいとの思いも。9〜10月の1日の誘因作業の遅れは、1週間の収穫開始のずれにつながると実感する田中さん。「PC筑陽」だけでなく天敵農薬や養液土耕システム等の導入で、「如何に休める時間を作れるか」と話す田中さんらの令和時代の若い農業は理想の形を目指してすでにスタートしています。

天井が高く点滴潅水チューブのハウスでは、遮光もされ37℃の室温にはなるものの8月頭から作業が可能だという。JAたまな指導販売部天水地区木下翔馬さんと(右)。
天井が高く点滴潅水チューブのハウスでは、遮光もされ37℃の室温にはなるものの8月頭から作業が可能だという。JAたまな指導販売部天水地区木下翔馬さんと(右)。
積算日照量でなく熱量で制御するこのシステムのメリットは、シーズン単位の設定でことたりることだとか。農業もデータが大事という田中さん。システムの導入と同時に日々日誌をつけている。
積算日照量でなく熱量で制御するこのシステムのメリットは、シーズン単位の設定で事足りることだとか。農業もデータが大事という田中さん。システムの導入と同時に日々日誌をつけている。
JAたまな南関郷地区で開催された圃場巡回による勉強会の様子

タキイ技術員から中後期厳寒期からの管理ポイントとして、温度設定は14℃目安で保温し実温で12℃を切らないこと。採光性を上げる摘葉をしたいところだが、厳寒期は過度な摘葉は草勢を低下させるので注意が必要で、葉枚数を確保するため遅めに開始し、懐で重なる内向きの本葉から摘葉すること。側枝は収穫後1芽切り戻し1葉摘芯が基本だが葉数が減る厳寒期は2枚残しや2芽切り戻しも検討することなどが確認された。

津留克幸さんハウスにて。右から2番目が伊藤信英ナス専門部会北部支部長。
津留克幸さんハウスにて。右から2番目が伊藤信英冬春ナス専門部会北部支部長。
片山幸次さんハウスの垣根3本仕立て。
片山幸次さんハウスの垣根3本仕立て。
草勢低下時は大果収穫を避け、M〜Lサイズでの定期的な収穫が理想。
草勢低下時は大果収穫を避け、M〜Lサイズでの定期的な収穫が理想。
出荷箱を手にJAたまな指導販売部南関地区園芸指導販売班長本田吉之助さん。
出荷箱を手にJAたまな指導販売部南関郷地区園芸指導販売班長の本田吉之助さん。