産地ルポ

2024/2/20掲載

草勢が落ちない複合耐病性 ピーマン台木「TPE-173」
臭化メチルの使用が全面禁止され約10年、先進産地では総合的な耕種的防除の手段のひとつとしてピーマン台木による接ぎ木防除への期待が高まっています。

左:穂木品種×TPE-173台木、右:穂木品種(自根)、(7月上旬調査)

編集部 2023年6月27日取材
茨城県JAなめがたしおさい 波崎地区

低日照、長雨、豪雨、猛暑など気象条件は年々厳しさを増しており、農業の生産現場においてもこれまで以上に安定的な生産が難しくなってきています。一方で、青果物の市場価格は出荷量によって変動し、品質の安定したものを長期的に出荷することが収益化を目指すうえでの課題となっています。
連作障害対策として中心的な役割を果たしてきた臭化メチルの使用が2013年から全面禁止されて以降、各産地では果菜類を中心に代替農薬への転換を図り、土壌くん蒸剤だけでなく台木の使用や病気を媒介する害虫の防除対策などさまざまな耕種的防除が行われてきました。
ナス科野菜として代表的なトマトは土壌病害対策として多くの台木が発売され、今や接ぎ木苗の使用は当たり前となっています。一方でピーマンでは台木の使用率は低いのが現状でした。その理由は、既存台木は耐病虫性にはすぐれていても草勢がおとなしく、自根苗と比べて着果数が減少するという収量性の課題があったからです。
現在、試験中のピーマン台木「TPE-173」は青枯病、ネコブセンチュウ、疫病に耐病虫性をもつ業界初の強勢ピーマン台木です。2022年より茨城県のJAなめがたしおさい管内で試験を開始しています。
試作の経過として、2年目は栽培初期から生育後半まで草勢の低下が見られず、最終的な収量が自根苗と比べて約1割程度増加する結果が出ています。その要因は根量が多く栽培後半まで草勢を維持できること(上部写真)、着果数が低下せず、果形の乱れが少ないこと(写真1)、耐病性によりセンチュウ害が減少したこと(写真2)が主な要因と考察されました。
2023年度の結果を受け、JAなめがたしおさい波崎営農経済センターの小松裕司副センター長は「来年も増加見込みで、産地として安定出荷できる長期作維持のために期待している」と産地の評価も上がっています。

写真1(6月27日撮影)

穂木品種×「TPE-173台木」

穂木品種×「TPE-173台木」

穂木品種(自根)

穂木品種(自根)

写真2(6月27日撮影)

穂木品種×「TPE-173台木」

穂木品種×「TPE-173台木」

穂木品種(自根)

穂木品種(自根)

「TPE-173台木」を使用することで、草勢は自根苗と同程度でセンチュウ被害による葉の黄化が抑えられていた。

  • ※「TPE-173」は試作品種のため、一般販売、タキイネット通販での販売はありません。

2024年春 新発表予定(2024年秋より春種受注開始)