シリーズ私の提言 5 これから求められる魅力ある園芸店の売り場

2018/07/20掲載

フリーアナウンサー 高田 薫(たかだ かおる)

フリーアナウンサー 高田 薫(たかだ かおる)

東京生まれ。『手づくり花づくり』(サンテレビ)、『テレビドクター』(読売テレビ)、『プレママ-net』(サンテレビ)のレギュラー司会のほか、在阪主要局で活躍。現在、司会、ナレーションを広く行うかたわら、エッセイストとしても活動。グリーンアドバイザー、ハンギングバスケットマスター、日本医学ジャーナリスト協会幹事。

この度は、23年半にわたって担当した園芸番組の経験をふまえて、私が考える「魅力ある園芸店」についてお伝えしようと思います。

園芸店は今

50代以上の店長さんは、1986年から1991年ごろにかけての好景気、いわゆるバブルのころの商品の売れ方は忘れられないと口を揃えておっしゃいます。仕入れても仕入れても飛ぶように売れていったそうです。

そのバブルがはじけると、一転して物が売れない時期に入り、園芸店も秋風が吹くように寂しい時代が訪れました。その後は、お金だけではなく一般の人の心や時間にも余裕がなくなり、園芸店に足を運ぶということ自体が少なくなっていくのです。

しかし、インターネットの時代が来るとネット販売が盛んになってきます。家にいて、ネットの写真を見ながら注文すれば、次の日にでも届くのですから気楽に購入できてとても便利です。植物を販売するお店にも春の兆しが見えたように思われました。

ただ、店舗はどうでしょうか。今も売れ行きが芳しくないという話を本当によく耳にします。「買い物がしやすいような高さに商品を置いて、話題の品種もそろえているのに」と努力をしていらっしゃるようですが、単に商品を置くだけでなく、何か他の店との違いを前面に出してアピールしなければいけないということなのでしょう。

行きたくなるような園芸店の工夫

入りたくなるような園芸店は、立地によって違います。駅前、人通りの多い道沿い、ショッピングモールに入っているなどのお店は、狭くても美しい鉢花や雑貨をセンスよくディスプレーすることがポイントです。花付きの鉢花の鮮やかさが目に留まれば、誰でも入ってみたくなります。今人気の、多肉植物や苔のテラリウムなどは、雑貨屋さんがうまくインテリアとして売り出したところから火がつきました。そのように、おしゃれに、モダンに、あるいは可愛く飾ることで小さな商品もボリュームのある植物もお互いに引き立てあうことができるのです。お店の中に、一つ「これは、何だろう?」と思わせる目玉商品が置いてあればなおよいですね。

ディスプレーが上手なお店にはお客さんが集まる。
ディスプレーが上手なお店にはお客さんが集まる。
ナチュラルなイメージの売り場。
ナチュラルなイメージの売り場。

お店が駅から遠かったり、郊外にある場合は、「品ぞろえを豊富に」と言いたいところですが、消費者の興味が多岐にわたっている今、よほど大きなガーデンセンターでない限りはすべてのカテゴリーを網羅するのは現実的ではありません。

そこで、私の提案は、「うちの店いいでしょう。ここ見て!」といえるオリジナルの魅力を出すことです。それは、寄せ植えに特化していることでも、扱っている植物の特徴でもいいのですが、自信をもってお店の人がお客様にすすめられる何かがあることだと思います。もちろんよい苗を扱っていることが大前提です。そして、店で扱っているものを質問されたら、確実に正しく名前や育て方を答えられる人がいるということが信頼につながります。店員さんとの明るく和やかなコミュニケーションによってリピーターが増えるだけでなく、よい評判が口コミで広がっていくのではないのでしょうか

私の好みは…

私の好きな花は、春はアリッサムとアネモネ、梅雨時期のアジサイ、夏はアサガオ、秋のコスモス、冬はビオラとスノードロップです。従来のシンプルなものもいいのですが、珍しい品種を見るとその植物の前で立ち止まり、店員さんや知らないお客さんとおしゃべりしてしまいます。

筆者の好む梅雨のアジサイたち。
筆者の好む梅雨のアジサイたち。

本当は、さまざまな植物に彩られたカフェが併設してあるとたくさんの方が喜ばれるのでしょうが、無理な場合でも、少しのスペースを、散策路のように見せたり、イスとテーブルを店の片隅に置いてゆっくり楽しめるようにしてあると、休みの日には通い詰めてしまいそう。そして、私はこれからの色は、白、クリーム、アプリコットをほかの色の間に配置させる上品さではないかと推測しています。

売り場の傍に椅子とテーブルがあるだけでも落ち着ける。
売り場の傍に椅子とテーブルがあるだけでも落ち着ける。

ターゲットと発信

お店のある地域にはどんな植物を好む方が住まれていて、どのくらいの価格帯のものを求めているのかをリサーチするのはとても重要です。それによってターゲットを絞り、品ぞろえをすることが、地域の中での園芸店としての位置づけを確かなものにしていくのではないでしょうか。

そんなに高価ではなく、小さくてお洒落なギフトのコーナーがあれば、女性も足を運んでくれるでしょう。もちろん、男性もちょっとしたプレゼントを探しているでしょうから、棚1つでも作って置いてみてはいかがでしょう。季節のリースやハーバリウムなどもいい素材の一つです。

そんな素敵な園芸店をどうやって多くの人に知らせるのか。SNSを使うのもホームページを作るのも有効です。そして「今週の一押し!」などの商品を載せて、とにかく更新をこまめにするのが大切です。植物好きの人は、情報発信を待っています。お店までのアクセスも必ず載せてください。対面でのコミュニケーションとインターネットでの情報発信、そして口コミがあれば、もうお客さんの心をつかんだのも同然です。そんな魅力あるお店が増えたらうれしいですね。

お店の中にあるギフトコーナー、季節のリ−スやハーバリウムなど話題の商品を置いてみては。
お店の中にあるギフトコーナー、季節のリ−スやハーバリウムなど話題の商品を置いてみては。