産地ルポ
2022/7/20掲載
産地ルポ
2022/7/20掲載
JA茨城むつみ 境地区 経済渉外 齊藤 伊知郎
茨城むつみ農業協同組合(JA茨城むつみ)は1994年2月1日に境町、五霞町、古河市(旧古河市、旧総和町、旧三和町)、坂東市(旧猿島町)の6つのJAが合併して発足した広域JAです。
当地は茨城県の西部に位置しており、首都圏から約50km圏内にあり、生鮮野菜の重要な供給産地です。
JA茨城むつみ境地区野菜生産部会では、現在100戸の部会員がレタス類(「惚レタス」)、ネギ、カリフラワー(「カリスマフラワー」)、ナス、トマト(「夏娘トマト」)などを作付けし、京浜市場を中心に北海道、東北などへ出荷しています。
レタス類では、玉レタス、サニーレタス、グリーンリーフ、ロメインレタスを春、秋にそれぞれ80haで28万ケースほど出荷しています。その中でグリーンリーフは春に10ha、秋に10haを作付けし、年間8万6000ケースほど出荷しています。
境町でのレタス栽培の歴史は古く、1957年からレタスの栽培が始まりました。そして1984年には銘柄産地として指定を受け、現在に至るまで長年作られています。また、茨城県はレタスの生産量全国2位を誇りますが、境町は茨城県のレタス発祥の地でもあります。玉レタスを中心に長年栽培されてきましたが、近年では農家の高齢化や作業性の観点からリーフレタスの作付け割合が増える傾向にあります。
現在、管内のグリーンリーフは、タキイ種苗の「グリーンジャケット」や横浜植木株式会社の「ノーチップ」を中心に作付けされておりますが、近年の猛暑や異常気象、高温期に適応した品種や晩抽性にすぐれた8月上旬から播種できる品種が求められています。また、出荷の作業性から株元が広がる品種より立性の品種が求められてきました。
そこで、8月上旬から播種ができ、晩抽性にすぐれている「グリーンサンバ」をタキイ種苗からご紹介いただき、担当者の指導のもと、これまで試作を行ってまいりました。
「グリーンサンバ」は8月上旬から播種が始まります。育苗にはセルトレイを使用し20日ほど育苗した後、レタス冬作用の当組合オリジナル肥料などを施用し、白黒マルチを敷いて定植します。育苗期間は老化苗による抽苔を防ぐため、適期での定植を目指します。
病害虫防除では、定植前に殺虫剤を潅注処理し害虫対策をします。定植後は、必要に応じて病害虫を防除しますが、台風や雨が続くと斑点細菌病や軟腐病などの細菌性病害が問題となるため、予防的に薬剤を散布します。
圃場が乾燥しているときは潅水により対策をしますが、極端な乾燥や過湿によってチップバーンが発生することがあるため圃場の適湿を保たなければなりません。
また、「グリーンサンバ」は、管内では発生は少ないのですが、根腐病レース1・2・3に耐病性をもち、主に春作で問題となるべと病にも耐病性があるため安心して作付けができます。
「グリーンサンバ」を試作して評価している点は、①栽培性、②収量性、③調製時の作業性の3つです。
晩抽性にすぐれ、生育の株ぞろいがよいため収穫しやすいです。しかし、極端な早まきによる抽苔や収穫適期を過ぎるとボリュームが出すぎるため、適期の播種や収穫が必要です。
外葉と内側の葉のバランスがよくボリュームも確保できます。適期の播種、収穫により抽苔も少ないため収量に期待ができます。
他品種より葉数が多く、株元が立性で適度な柔軟性があり、芯が折れることも少ないため調製作業や箱詰め作業が容易です。
「グリーンサンバ」を作付けした生産者からは晩抽性や調製時の作業性の面で好評でした。晩抽性にすぐれているため出荷の際に抽苔している株の割合が少ないこと、葉数が多くボリュームが出て調製作業がしやすいことで、出荷規格の統一ができます。また、株元が立性のため、調製作業や箱詰め作業の際に芯が折れることも少ないため、安心して出荷ができます。
リーフレタスは、全国的に作付けが増えたことで販売が難しくなっている傾向にあり、特に近年のコロナ禍において、外食需要が減り販売は非常に厳しい状態になっています。また、近年の気候状況により、これまで作付けしてきたリーフレタスにおいてさまざまな問題が生じており、生産者の意見の中でより晩抽性がある品種の要望や作業性向上および良品多収を求める声が強くあがっていました。
JA茨城むつみ境地区では、「グリーンサンバ」のような栽培性、調製時の作業性にすぐれた品種を各品目で選定、栽培していくことで、安定した収量確保や品質向上に努め、歴史ある産地のファンの期待に応えて消費者のベストパートナーを目指していきます。
2024年
秋種特集号 vol.58
2024年
春種特集号 vol.57