2019/07/22掲載
これからの季節にまくことができる緑肥作物のなかから、この度は景観用作物として地域おこしにも利用されている赤花そば「高嶺ルビーNeo」と、春に美しい花を咲かせ、花が咲く前にすき込むことで生物くん蒸効果も発揮するからしな「黄花のちから」をご紹介します。
「高嶺ルビーNeo」
「高嶺ルビーNeo」は播種後30〜45日で一面に赤いじゅうたんを敷き詰めたように花が咲き、景観用として注目の品種です。
景観用植物として注目を集める「高嶺ルビーNeo」。
信州大学農学部の氏原暉男名誉教授によりネパールで原種が発見されました。その後、タカノ株式会社と信州大学農学部が20年もの歳月をかけて日本でも赤い花を咲かせられるよう品種改良し、誕生したのが「高嶺ルビー」です。そこからさらなる鮮やかな赤色を目指し品種改良を行った結果、進化した「高嶺ルビーNeo」が誕生しました。
ネパールヒマラヤ山麓のふもとに咲く赤花そば。
「高嶺ルビー」(左)と「高嶺ルビーNeo」(右)。
さらに鮮やかな赤色に。
「高嶺ルビーNeo」は土地を選ばず、やせ地や酸性土壌、乾燥地でも栽培することができ、管理もすごく簡単です。また播種後も基本的に無肥料、無潅水で生育することから大面積栽培にもおすすめです。開花後は約1カ月間赤い花を楽しむことができるのも特長です。
土地を選ばず栽培でき管理も簡単なので、大面積栽培におすすめできる「高嶺ルビーNeo」。
そばに馴染みの深い長野県では、「高嶺ルビーNeo」を観光資源として活用している町もあります。休耕地を活用した町おこしの名物としても注目を集めています。また、収量は一般の白花そばの約3分の1程度ですが収穫、精選、製粉、製麺は、普通のそばと同じ方法で行えます。
町おこしのイベント用として「高嶺ルビーNeo」を活用。長野県箕輪町(左上)、長野県中川村(右下)の「赤そば花まつり」の様子。
「黄花のちから」は秋(中間地では10月下旬〜11月)に播種すると、冬を越えて春にきれいな黄色い花を畑一面に咲かせるため景観作物としておすすめの品種です。また、春まきでも播種後約2カ月で花を楽しむことができます。
さらに花が咲く前にすき込むことが条件となりますが、生物くん蒸作物としても注目を集めており、トマト青枯れ病やホウレンソウ萎凋病の軽減が認められています。
景観用作物としてもおすすめでき、花が咲く前にすき込むことで生物くん蒸植物としても利用できるからしな
「黄花のちから」
施設などで連作を続けると、土壌中の微生物のバランスが崩れて病気が多発するようになります。それらを防ぐために、これまでは土壌くん蒸剤が使われていましたが、環境や作業者自身に及ぼす影響が問題となっており代替技術の開発が求められています。
そんな中、カラシナなどを利用した「生物くん蒸」という技術が注目されるようになりました。これらの植物は名前の通り、辛味成分を含んでいるのですが、その辛味成分が有害センチュウや細菌、雑草の発生を抑制することが分かってきました。
辛味成分である「グルコシノレート」が土壌中で加水分解されることによって「イソチオシアネート」と呼ばれるガスが発生し、そのガスにいろいろな抑制効果があるというものです。
すき込み適期はグルコシノレート含量が最も高い、着蕾期〜開花期が目安(草丈1m以上が目安)。
辛味成分が多く含まれ、土壌くん蒸効果が高い。ホウレンソウ萎凋病、トマトのサツマイモネコブセンチュウ、青枯病などの被害低減が期待できる。
土壌中で休眠している根こぶ病菌の休眠胞子を覚まさせ、当品種の根毛に感染させるが、皮層に感染できずに菌密度減少効果が期待できる。根が肥大しないタイプの大根で、すき込み後の雑菌繁殖が軽減できる。
2024年
秋種特集号 vol.58
2024年
春種特集号 vol.57