品種ピックアップ

品種ピックアップ

2023/7/20掲載

「一号」からはじまったタキイのキャベツ

タキイのキャベツは40品種以上!

寒玉系、良質系、春キャベツ、レッドキャベツやメキャベツなど現在、タキイが販売しているキャベツは40品種以上。葉菜類の中で最も消費量が多いキャベツは、地域や季節ごとに栽培できる品種が異なるため、作型に応じてさまざまな品種が販売されています。春キャベツの千葉県、夏キャベツの群馬県、冬キャベツの愛知県は大産地として有名です。元来冷涼な気候を好むキャベツですが、鹿児島から北海道まで多様な作型が確立し、全国各地の産地をつなぐリレー出荷で1年を通して供給されています。

キャベツの歴史

ヨーロッパ原産のキャベツは不結球性の「葉キャベツ」で、徐々に改良が進み、結球性のものが誕生しました。13世紀ごろにはヨーロッパ全域で広がり、日本へは18世紀初めにオランダからもたらされました。当時は外国人居留者用に栽培されていましたが、欧米から多くの品種が導入され、徐々に日本人の間にも広がりました。大正時代には一般的に栽培されるようになり、日本の気候や風土に合わせ改良が進められていきました。

江戸時代後期、キャベツは食用ではなく園芸観賞用に改良されていた。「ハボタン」は日本生まれの園芸植物で近年、切り花としても世界的に人気。

江戸時代後期、キャベツは食用ではなく園芸観賞用に改良されていた。「ハボタン」は日本生まれの園芸植物で近年、切り花としても世界的に人気。

待望のF1「一号」誕生

戦後の復興期、食料不足から野菜生産の安定が最も求められた時代に誕生したのが1950年(昭和25年)に発表されたF1キャベツ「一号」です。商品のキャッチフレーズは「玉がそろってグングン太り、収量が上がる」F1ならではの特性をもった品種が開発されました。世界初の自家不和合性利用による育種と採種に成功し、翌年にはA.A.S.(オールアメリカセレクションズ)で銅賞を受賞しました。戦争で中断していたF1(一代交配)の研究を再開し、アブラナ科植物がもつ自家不和合性を利用し多量採種に成功しました。禹長春ら歴代農場長や研究者たちが地道に研究を続けた結果、画期的な品種が誕生しました。その後、野菜のF1化が一気に進んでいきました。

A.A.S.銅賞を受賞し世界にタキイの名が知れ渡ることになった。発表から70年以上経つ現在も現役品種として活躍している。

A.A.S.銅賞を受賞し世界にタキイの名が知れ渡ることになった。発表から70年以上経つ現在も現役品種として活躍している。

海外で人気のタキイのキャベツ

「一号」発表後、「秋蒔中生」「秋蒔極早生」といった秋まきキャベツ、冬どりの「四季穫」など次々と新品種を発表していきました。海外では、東南アジアとくにインドネシアでは「四季穫」は「N−S CROSS」として販売され、人気品種となりました。1957年にはメキャベツ「早生子持」を発表、1株に従来品種の2〜5倍の50球以上が収穫でき、イギリスやアメリカで爆発的なヒットとなりました。1977年発表のちりめんキャベツ「サボイエース」、コールラビ「グランドデューク」もA.A.S.で入賞するなど、海外でも高い評価を受けました。

ちりめんキャベツ「サボイエース」

ちりめんキャベツ「サボイエース」

コールラビ「グランドデューク」

コールラビ「グランドデューク」

国内でも消費拡大

高度経済成長期に「食の欧米化」が進み、野菜の調理方法も煮物や漬物からサラダやスープ、炒め物など多種多様になりました。生食、炒め物、煮込みに利用できるキャベツの需要は増大し「一号」「四季穫」「初秋」「早秋」「晩夏蒔四月穫」「早生子持」が全盛の1970年ごろには、採種が追いつかず、海外に採種地を求めるようになっていきました。

1985年ごろのポスター。周年栽培を目標に、作型に適した品種の育成が進められた。

1985年ごろのポスター。周年栽培を目標に、作型に適した品種の育成が進められた。

「彩」シリーズ誕生!リレー栽培・出荷ができるように

キャベツの国内収穫量は約148万トン。野菜の収穫量ランキング1位のジャガイモに次ぐ収穫量です。おいしくて、栄養価が高く、調理がしやすいと人気があり一年中、一定の品質で、安定して供給できることが求められています。
1995年に発表された「彩ひかり」は萎黄病や黒腐病に耐病性の冬どり中生種です。都市近郊の中規模産地は減少し産地の大規模化が進む中、連作による土壌病害の発生が増加し耐病性をもった品種育成が急務となりました。一方、市場では高品質のキャベツが求められ、流通では10kg平型段ボール箱での出荷が一般的になるなど、形状の安定化も課題でした。彩シリーズの「彩風」「彩音」「彩里」「彩峰」は各作型に必要な特性を備え、高品質なキャベツの安定生産と供給を可能にしました。

収穫期幅が広く低温期の甘みは抜群の「彩音」。

収穫期幅が広く低温期の甘みは抜群の「彩音」。

加工・業務兼青果用の「おきなSP」

コンビニ、スーパーやデパ地下でサラダなどの中食用として、外食チェーン店への業務用としてキャベツの需要は増加しています。加工適正、色や食味、食感、加工後の日もちなど高いレベルの品種力が求められています。「おきなSP」は生育旺盛で玉肥大がよくL〜2Lの大玉サイズによくそろい、在圃性が高く病気にも強いため安定供給ができると好評です。

生産労力の半数近くを占める収穫作業の機械化が進んでいる。

生産労力の半数近くを占める収穫作業の機械化が進んでいる。

コンテナで出荷される加工用キャベツ。

コンテナで出荷される加工用キャベツ。

寒玉系の夢シリーズ「夢いぶき」カット野菜に向く寒玉系の生産量が増えてきている。

寒玉系の夢シリーズ「夢いぶき」
カット野菜に向く寒玉系の生産量が増えてきている。

在圃性・貯蔵性にすぐれ安定出荷に適している「夢舞妓」葉色が濃く、品質がよいと産地からの評価が高い。

在圃性・貯蔵性にすぐれ安定出荷に適している「夢舞妓」
葉色が濃く、品質がよいと産地からの評価が高い。

ゲリラ豪雨・高温対策に複合耐病性の「BCR龍月」

良質系の「岬」や在圃性の高い「夢」シリーズも発表され、産地間でのリレー出荷が進み周年で高品質なキャベツの供給が整ってきました。各産地では品種選定や栽培方法の検討が重要視され、深刻な問題となっている土壌病害に対する耐病性品種を求める声が高まってきました。また、近年多発するゲリラ豪雨、スーパー台風、高温などの異常気象下でも安心して栽培できる品種が切望されています。「BCR龍月」は高温・多湿条件で発生する難防除病害の黒腐病や根こぶ病に強い耐病性をもつ品種で、収穫期の強い降雨でも倒伏しにくい特性を併せもつ次世代の品種です。

茎が短く倒伏しにくい。玉尻からの腐敗が少なく収量アップが期待できる。

茎が短く倒伏しにくい。玉尻からの腐敗が少なく収量アップが期待できる。

根こぶ病耐病性比較 左「従来品種」、右「BCR龍月」予防的防除と品種力を組み合わせることで、発病リスクを低減できる。

根こぶ病耐病性比較 左「従来品種」、右「BCR龍月」
予防的防除と品種力を組み合わせることで、発病リスクを低減できる。