前回(最前線vol.50)までのあらすじ
IoTを積極的に導入している山中農園にお邪魔した里山一家。そこで目の当たりにした最新技術の数々に、IT企業勤めの息子、未来はすっかり夢中。農作業をサポートする機器以外にはどんなものがあるのか山中さんに聞いたところ、まだまだおもしろい事例があるようで…!?
Web連載
2021/2/22掲載
ロボット技術やICTを活用して省力・高品質化などを実現する新たな農業「スマート農業」。
名前は聞いたことがあるけど、どんなものか分からない…。そんな農家の方々に向けて、
マンガで分かりやすく「スマート農業」をお伝えする連載企画です。
父:里山 匠(63歳)
就農30年のベテラン農家。ハウストマトと稲作を営む。トマト栽培の高い技術をもつ。本心は農学部を出た次男未来に農業を継いでほしいと思っている。
母:里山 菜々美(57歳)
匠と結婚して30年。実家は農家ではなかったが、匠と二人三脚で頑張ってきた。息子たちには好きな仕事をさせてもいいと思っている。
息子:里山 未来(26歳)
里山家の次男。大学の農学部を卒業したが現在は都内のIT関連企業に勤めている。いずれは就農に興味をもっているが、やるならば新しい農業にチャレンジしたいと思っている。
指導員:橋本 哲弥
農業家族にいろいろな知識を教え、農業の楽しさを広めている。
スマート農業には、農作業だけでなく事務作業などを効率化して、農家の多岐にわたる仕事の負担を軽減するねらいもあります。複雑な計算を自動化できたり、経理や会計などの裏方業務が楽になれば、農作業に集中しやすくなります。新たな事業に取り組む気持ちの余裕も生まれる上に、空いた時間で身体を休めたり、家族とゆっくり過ごすこともできるのです。
スマートフォンのアプリ上で、希釈倍数と散布液量を入力すれば必要な薬剤の量を算出できます。それぞれの数字を選択(入力)する必要はありますが、紙の希釈倍率表と違って、目で数字を追うために起こる確認ミスを減らせます。アプリによっては混用事例の確認や、画像から病害虫のAI診断ができる機能も備えています。
農作業や販売管理をアプリ上で行ってくれます。画面上で作業日誌をつけたり、伝票作成や注文・売上管理をすることができ、面倒な事務作業を効率化できます。作業中にスマートフォン上で内容を確認できるだけでなく、クラウドに保存しておけば自宅や事務所のパソコンでも閲覧ができ、家族や従業員と情報共有ができるなど、仕事をスムーズに引き継ぐ役割も果たしてくれるのです。
出納帳への記入や確定申告の手間を省いてくれます。クラウド上で預金口座の取引や、カメラ撮影したレシートや領収書の画像を読み込んで、預金出納帳や現金出納帳を自動で作成。もちろんそれらのデータは確定申告に用いることができ、勘定科目を細かく設定すれば大幅に仕訳作業や書類作成の簡素化を図れます。
補助金は国や自治体などが政策目的の達成のために、税金を使って企業や個人事業主を支援する制度です。融資とは異って返済は不要で、条件を満たし審査が通れば受給できます。またスマート農業支援をうたったもの以外にも、機械導入や設備投資を対象としたスマート農業の導入にも活用できる補助金制度もあります。
スマート農業に特化すると、ロボット農機やデータ駆動型園芸施設の導入支援など高額な設備投資を支援するイメージが強いですが、タブレットやIoT機器の導入などに用いることのできる「経営継続補助金」や「IT導入補助金」など対象範囲が広いメニューもあります。農林水産省のホームページで一覧を確認できるので、スマート農業に興味のある方はチェックしてみてください。
国より少額な場合が多いですが、その地域の特性に合った独自のメニューが用意されています。国の補助金と合わせて使うことができたり、国の方で該当しない細かな取り組みが支援対象になる場合もあります。各自治体のホームページでチェックしたり、各地域の担当普及員や役所の農政課などに聞いてみてもいいでしょう。
監修:橋本 哲弥さん
農家、農業・園芸分野のライター。東京農業大学、茨城大学卒業後、園芸店勤務を経て農家に。農業の傍ら農業・園芸関連の実用書などで執筆活動を行う。
2024年
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