Web連載

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2021/2/22掲載

売れる!売場コーディネート術 第1回「直売のいろはを知ろう」

監修:渋谷 祐輔
東京農業活性化ベンチャー、(株)エマリコくにたち副社長。農家窓口や小売店を担当。一橋大在学中に地域活性化活動をしていた仲間と2011年に創業。地元農産物の直売所と、地元野菜を活用した飲食店を計5店舗展開。スーパーへの東京野菜卸売のほか、直売所やアンテナショップへの助言・コンサルティング等も行う。

売場

近年、農業や野菜への興味・関心が高まっています。都心を中心に農家が販売するマルシェや、インターネットを通じて生産者から購入できるネット産直サービスの人気が伸びています。全国の農産物直売所は2万店舗以上あり、その売上は1兆円規模となるなど、直売が盛んになってきているのは明らかです。

直売のいいところ

では、なぜここまで直売が盛んになっているのでしょうか。市場流通と比較すると、生産者・消費者それぞれにとってメリットがあります。
生産者にとっては、まず「自分で価格を決められる」というのが最大の魅力でしょう。もちろん売れる価格の範囲内にはなりますが、栽培した作物の商品価値に合わせて価格を設定できます。次に、「差別化がしやすい」のも大きなメリットです。野菜は見た目だけではその価値が伝わりにくいもの。説明しながら販売することで、その野菜のこだわりのポイントを伝えることができます。最後に、中間マージンが少なくなるため「手取り単価が上がりやすい」のも良い点です。
一方、消費者にとってもメリットがあります。まず、「生産者の顔がはっきり見える」ことで、安心感につながります。また、鮮度が良いものが手に入りやすいうえ、さまざまな品種の野菜と出会えるのも魅力の一つです。

生産者のメリット ・価格決定権を持てる/・説明したりP O Pを付けたりすることで差別化しやすい/・中間マージンが少なく、手取り単価が増える

消費者のメリット ・生産者の顔が見えると安心感につながる/・鮮度の良いものが手に入る/・珍しい野菜が買える

知っておきたいさまざまな直売方法

直売といっても形態はさまざま。代表される5つの形態をご紹介するので、メリット・デメリットをしっかり見極めて、自分に合った方法でトライしてみましょう。

■農産物直売所

直売所周辺の農家や農協・JAなどが設置した、地元の農産物を販売する施設のこと。道の駅などもこれに分類される。

◎メリット
  • 定期営業である場合がほとんどなので、売上が大きく出荷もほぼ毎日可能。
  • 魚介類、卵など複数の食材を販売していることが多く、「ついで買い」が期待できる。
×デメリット
  • 直売所自体の集客力や取り引き農家によって売り上げが大きく変わる。
  • 多くの農家が出荷するので、お客様に選ばれるための差別化が必要。
農産物直売所

■マルシェ

自ら生産した農作物、水産物、畜産物および加工品、工芸品などを持ち寄って販売する市場のこと。市や町主催の定期的なものから、個人で不定期に開催しているものまで形態はさまざま。

◎メリット
  • 消費者と直接コミュニケーションが取れる。
  • 商品を効率的に認知拡大できる。
  • マルシェの開催そのものが地域活性化に期待できる。
×デメリット
  • 自身で販売に出ることになるため、負担が大きい。
  • 鮮度や保存状況に不安を抱く消費者もいる。
マルシェ

■移動販売

特定の店舗を持たずに、車で移動しながら商品を販売する形態。商品や顧客ターゲットに応じて、自由に販売場所を変えることができる。

◎メリット
  • いろいろなお客様に購入してもらえる機会がある。
  • 集客が見込める場所での販売が可能。
  • 買い物に困っている人に貢献できる。
×デメリット
  • 体力的な負担が大きい。
  • 雨天時のリスクが大きい。
移動販売

■インターネット販売/ネット産直

インターネットにて野菜を販売すること。自社サイトで販売する方法のほかに、大手サイトへの委託販売などさまざまな方法があり、近年注目が集まっている。

◎メリット
  • 説明を記載できるため、商品のこだわりを伝えやすい。
  • 全国各地の消費者に届けることができる。
  • アプリ上でのやり取りができ、ファンを作りやすい。
×デメリット
  • 競争が激しい。
  • 発送の手配などもしなければならない。
  • いつ注文が入るのか分からない。
インターネット販売/ネット産直

■軒先販売(有人/無人)

自宅の庭などの空きスペースで野菜を販売する方法。無人と有人があり、自販機を活用することもできる。

◎メリット
  • 価格を自由に設定できる。
  • 立地によっては高い売上が期待できる。
×デメリット
  • 無人の場合は盗難対策が必要。
  • 環境の影響を受けやすい。
軒先販売(有人/無人)

■スーパーマーケットインショップ

デパートやショッピングセンターなどの大型店の売場に、比較的小規模の独立した店舗形態の売場を設置すること。

◎メリット
  • 市場流通品が横にあるため、消費者に鮮度や品質を比較してもらいやすい。
  • 集客力があるスーパーであれば客数が多い。
×デメリット
  • 外装の制約がある。
  • スーパーのモチベーションによって、売り場のクオリティ・コントロールが左右される。
スーパーマーケットインショップ

差別化するのに必要な「売り場コーディネート」術

このように、「直売」とひと言に言ってもさまざまな方法があるのです。
販路の多様化に伴い、青果販売自体の競争はますます激しくなっています。
そのなかで、自分たちの野菜を選んでもらうには、さまざまな工夫が必要です。もちろん、最も大事なことは野菜の品質。新鮮でおいしい野菜を栽培することが、消費者に支持されることは大前提です。
ただし、それだけでは買ってもらえないのも事実。手に取ってもらうこと、楽しい買い物をしてもらうこと、おいしく食べてもらうことなど、考えることはたくさんあります。
小売店は販売のプロ。直売するということは、そのプロと競争することになります。そのためには、ただ野菜を並べるだけでなく、自社の商品をより魅力的に見せるための売り場づくりが必要となってきます。次回以降では、そんな「魅せる売り場コーディネート」について考えていきましょう。

売り場コーディネート

■実録!魅せる売り場■

食品の店おおた 高幡不動店

shunka shunkaコーナー
新鮮な野菜が買えると人気!
スーパーの地場野菜コーナー

明るい色の看板を設置して、目を引く売り場を演出。
各野菜のPOPを用意するだけでなく、一部野菜には農家紹介POPを付けることで、農家との距離が近くなり身近に感じてもらえます。
さらに、整然とボリュームを持たせた陳列にすることで、スーパーで通常販売している野菜とは違う「マルシェ感」を演出しています。