2018/07/20掲載
一方、消費の現場に目を向けると、ハクサイの消費減少の流れは止まることなく、2007年には栽培面積1万8700ha、生産量91万8800tと1968年の半分以下の数字となってしまいました。2000年の調査では一世帯当たりの家族数は2.7人となり核家族化も進み、ハクサイなどの重量野菜はカット販売が一般的になってきます。
カット販売は衛生面や日持ちの点からも問題があり、普通ハクサイを密植して小玉で収穫するミニハクサイも市場に出回っていたのですが、望まれる収穫サイズや早生性、耐病性が不足しており、定着に至っていませんでした。
そんな中タキイでは「普通ハクサイの小型化ではなく純粋なミニハクサイを育成する」というコンセプトで、
@サイズを普通ハクサイの1/4カット並み(600〜700g)にすること
A外葉を立性・コンパクトにして密植適性を高めること
B熟期を50日とすること
C風通しが悪いと発生するべと病に耐病性であること
を目標に育成をスタートしました。
その結果2005年に生まれた「お黄にいり」は、高齢化が進む農家にとっては重い箱を持たなくて済む利便性を高いものに仕上がりました。生育が早いため、農薬の散布回数を大幅に減らすことができ、安心・安全といった観点からもすぐれています。カット販売されているものよりも新鮮であり、使い勝手がよいことも特長です。サイズが小さいのでスペースの小さい家庭菜園でも栽培でき、またサクサクした、やわらかくて歯切れのよい食感はサラダでおいしいと期待通りの評価を得ることができました。
さて、「黄ごころ」登場前に先進的すぎて、今、再ブレイクをしたハクサイがあります。
黄芯系ハクサイが市場に出回り始めた当初、「黄ごころ」シリーズに先駆けて1986年に発売された、球内色が鮮やかな橙黄色の画期的なハクサイ「オレンジクイン」です。
タキイでは黄芯系ハクサイの人気の高まりを受けて、1979年ごろから、球内部の黄色味が強く、しかもフレッシュサラダにも合う歯切れのよさとうまみをもち、青臭さのない従来とは全く違う新しいハクサイの育成を開始しました。
「オレンジクイン」は、タキイの開発部による中華料理店への売り込みなども手伝って、認知度が高まり、売上を伸ばし、当時、消費が落ち込みつつあったハクサイ消費の回復にも少なからず貢献しました。
近年になって、シス型リコピンを多く含むことが判明し、おいしさプラス機能性の面で脚光を浴び「ファイトリッチ」シリーズの一つとして、再び注目を集めています。
こうして時代の変化を敏感にキャッチし、市場と産地両方のニーズに応えて進化してきたタキイの黄芯系ハクサイ。
現在の国内農業をめぐる状況を見ると、気象変動の問題は避けられません。産地ではゲリラ豪雨やひょう害、干ばつなど局地的で極端な気象が増加していて、これからのハクサイには「耐病性」「生理障害耐性」がさらに重要になると考えられます。また、近年需要の高まっている外食、中食用途である業務加工向けの契約栽培が増加する中、計画出荷に欠かせない在圃性(畑に長くおいておける性質)や加工段階における「加工適性」も重要な特性になりつつあります。
タキイでは、これら市場のニーズに応えるのはもちろんですが、産地で作りやすく、高品質でおいしいハクサイにこだわり、育成を進めて参ります。
2024年
秋種特集号 vol.58
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春種特集号 vol.57