2019/07/22掲載
こうした品種改良を経て、多種多様な形質の品種が生み出された葉牡丹ですが、やはり日本国内では和風の正月飾りのイメージが根強いものでした。
タキイでは「今までの葉牡丹のイメージを脱却する新たな商材は考えられないか?」との狙いで、1980年代から新たな葉牡丹の品種開発をスタートします。アイデアの一つとして「葉のブルームが抜けたら色がもっと美しくなるのでは?」との着想を得ました。
従来の葉牡丹は、葉の表面にブルーム(白い粉)がつき、グレー味を帯びた色彩になります。このブルームをなくすことができれば、鮮やかな色彩の照葉になり、より洗練された花材としてユーザーにアピールできるのではと考えたのです。
従来葉牡丹の葉にはブルームという白い粉がつき、その色みはグレーががっている。
プラチナケール「ルシール」(左)、普通種(右)。ブルームがないことで葉に光沢が出て色も鮮やかになる。
そこで、葉牡丹は言うに及ばず、キャベツなどその他のアブラナ属作物にまで素材探しを進める中で見つかったのが、ブルームレス葉牡丹です。それは、葉牡丹の育種圃場のなかに一際色鮮やかな個体が見つかったことから始まりました。その素材をもとにして、葉色・葉形各種の固定を進めたのです。しかし、このブルームのない系統にはいくつかの劣悪な形質もあり、育成は試行錯誤を繰り返しました。
およそ15年余りの月日を経て、ようやく2008年に東京丸葉系の高性切り花用品種「
「ルシール」は、世界で葉牡丹をリードするタキイが、葉牡丹の枠を超えた新たなジャンルの品種として具現化したものです。葉牡丹の名称をあえて使用せず、総称として「プラチナケール」と名付けました。品種名の「ルシール」は、スペイン語で“光る(Lucir)”を語源としています。
「ルシール」シリーズの最大の特長は、葉色の輝きにあります。この輝きが今までの切り花や花壇苗にはないメタリックな質感と高級感を生み出しました。
鮮明な発色で、外葉の緑色と着色部の紅色とのコントラストが明瞭です。色合いも落ち着きのある色調で、クリスマスの飾りつけにも向く品種です。葉はやや開きぎみで、光沢のある着色部が広く見えます。
葉色は従来種の灰色味ある緑色とは違い、鮮明で着色部の白色を引き立たせ、コントラストが美しい。葉は立葉で葉枚数の多い品種です。
矮化剤を使ってポット仕立てにした「ルシール」。
花壇用花材としての需要も大きい。
こうして世に出たプラチナケール「ルシール」はフラワーアレンジメントの世界に新しい素材として普及し、これまでお正月の花材のイメージの強かった葉牡丹がクリスマスアレンジにも使用されるようになりました。そして、矮化剤利用による花壇用の苗物としても人気を博すこととなるのです。
「ルシール ワイン」を使った華やかなクリスマスアレンジ。
「ルシール ワイン」と「ルシール バニラ」を使ったリース(右)と、姫りんごをそえたカジュアルなアレンジ(左)。 いずれも、クリスマスからお正月まで管理次第で長く楽しむことができる。
2024年
秋種特集号 vol.58
2024年
春種特集号 vol.57