第4回

2017/07/20掲載

タキイ園芸専門学校〜春の風景〜

入学式での総代の宣誓

私がタキイ専門学校の校長を務めたのは平成17年4月から27年3月末までの10年間ですが、校長当時の生徒の様子を振り返りながら、私が若手農場技師として、生徒たちとかかわった昔も思い出してタキイ園芸専門学校生の1年を振り返って行きましょう。先ずは「春の風景」からお話します。

1.入学の応募者減を乗り越える

平成元年に200万人いた18歳人口は、30年後の平成29年は102万人に半減。急速に少子化が進みました。少子化の影響は、普通・商業・工業・農業高校を問わず、高等学校の統廃合に拍車を掛けました。農家の後継者不足など農業離れの影響で、農業高校は総合高校に合併または廃校が進み、減少の一途を辿っています。私の概算では、農業科進学者で植物栽培に携わる生徒は全国でほんの数%、およそ3,000人程度に留まると考えます。

現在、タキイ園芸専門学校の定員は本科・60名、専攻科・30名の合計90名です。私が校長に就任した平成17年4月以降、本校も50人台だった生徒数が30人台になることもありました。
「このまま生徒数が減り続けては学校として成立しなくなる。これまでのように募集や推薦を待っているだけではだめだ」と、強い危機感をもったのです。

これを契機に全国の農業高校(約230校)、農業大学校(約30校)をこちらからどんどん訪問し、本校の紹介と生徒への推薦をお願いしました。衝撃を受けたのはそれまでも毎年全国の高校・専門学校約4,500校へ、本校の学校案内・入学願書を送付しているにも拘わらず、大半の学校はもちろん、農業高校ですら本校の存在をほとんど認識されていないことでした。一方、全国42の道府県が設置する農業大学校も少子化で定員割れを起し、就農生徒は毎年数名に留まり、県の農業振興に貢献していないと学校の存続そのものが問われる状況にあることを知りました。こうした現状を知るに至って、「井の中の蛙」であったと反省し、「募集方法」の改革に着手したのです。

近年、高校卒業者の応募者が減少する一方、農業生産法人、JA、農業資材会社からの出向者の入学が増えています。こうした応募者の多くは大卒者が多いのですが、入学後は年下の高卒者と同じ扱いで学んでもらうことになるため、校長自らが面接して本校の理念を説明、目的意識が低い人、やる気の見えない応募者は、年下の生徒にも悪影響を与えますから、入学を断わることにしました。また、高校生は併願が多く合格発表を早めてほしいとの要望が多くでていました。そこで、願書受付締切りから合格発表の期間を2カ月間早め、就農意欲の高い生徒に門戸を開くよう改めました。また、実習主体の学校を理解してもらうため、応募者には全員、学校見学に来ていただき、面談を必ず行うこととしました。見学会はご両親にも一緒に来ていただいてご子息を預けるに安心なのか見ていただくようにもしています。

こうした取り組みが功を奏したのか、その当時、非農家出身ながら新規就農を目指す新卒生徒の入学も徐々に増えてきたのです。その背景には、政府の「農業競争力強化プログラム」による業界再編成への期待、新規就農者が6万人を超えたこと、農業生産法人の長期雇用者数が10年前に比べ10万人に倍増するなど、若者の就農志向の受け皿が整備拡大されたことが大きな要因になったと思います。農業生産者の多くが高齢化を迎えた今日、受け皿としての農業生産法人の存在はますます重要となり、本校卒業生の進路先として存在感を増しています。

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