第4回

2017/07/20掲載

5.座学中の居眠りをなくすため

本校のプログラムは実習だけではありません。座学の講義では「農業のプロ」にふさわしい理論・知識・技術を体系的に習得する時間です。従って、講義は本講義と呼ばれる外来講師による基礎知識の習得と、農場技師による野菜・花の生理生態や最先端の栽培技術習得を目的とした30分講義の2本柱から成り立っています。

本講義は京都大学、京都府立大学などの教授を招聘し、作物育種学、土壌肥料学、花卉園芸学、植物病理学、果樹園芸学、農企業経営情報学、農学概論などを毎週水、土の午前中に履修し、前期、後期に試験が実施されます。その内容は大学農学部・教養課程と同レベルで密度の高いものです。一方、30分講義は本講義前に、農場技師が果菜、葉菜、根菜、花卉の栽培に関する最先端技術を圃場、屋内で現物を見ながら講義するもので、こちらも月末ごとに試験を行います。この試験問題は植物栽培に必要な実用技術で、修得を必須と課しています。この試験で80点未満の者は100点を取れるまで再試験を実施するよう改めました。入学後半年が経過すると赤点常習者はほぼ固定するのですが、彼等は赤点を取るたびに呼び出され、校長のお小言を頂戴する羽目になります。毎度のお小言が嫌で後期までに赤点者はほとんど姿を消していきます。

さて、本講義で毎年問題となるのが授業中の居眠りです。入学当初は緊張感から居眠りは少ないのですが、慣れてくると日ごろの実習の疲れで講義開始と同時に大半が居眠り状況になります。外来講師の先生方に大変失礼に当たりますから、講義中はしっかり目を開き必死に聞くようにと再三注意しますが睡魔には勝てません。明かりを落としたスライド講義にでもなれば、開始するや否や全員が爆睡状態に陥ります。今日は危ないなと感じれば、講義中の部屋にしばしばお邪魔し、心地よく夢心地の生徒の肩を叩きました。はっと目覚めて振り向いた生徒は驚愕の表情を浮かべ、周囲は笑いをこらえます。以後の居眠りは流石に激減しますが、疲れた体に襲い来る睡魔にはいくら言っても勝てないものです。私は多少のウトウトはやむなしと黙認し、隣の生徒に20分ほどしたら肩をたたいて起こしてやれよと声をかける場合もありました。

もちろん授業内容も工夫しました。私が校長時、農学概論は校長の担当でしたが、2年目から講義のやり方を変えました。概論のテキストは全部で12章に分かれます。本科生は5名編成でちょうど12実習班ありましたから、月1回の半日講義にあたり生徒自身で各章のレジメを作成し、各自30分で内容を発表する形式に変えたのです。発表をより充実させるため、専攻生1名を講義担当係に指名し、発表1月前に各自のレジメを提出させ、内容を精査し、2〜3回検討を重ね本番に臨みます。全員卒業までに最低1回は講師を体験してもらいます。生徒たちが講師役をすることで居眠りは皆無となり効果がありました。

スライド授業ではついウトウトしがち
農業経営学などの講義が興味深かったという卒業生も
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