インフォメーション

  • Facebook
  • Twitter
  • Line

2020.11.06

リハビリテーション医療のツールとして農業の有効性検証へ
グリーン・ファーム・リハビリテーション®に関する連携協定書を締結
京都大原記念病院×京都府立医科大学×タキイ種苗

【本件の要点】

  • 患者の社会復帰を支援する「回復期リハビリテーション」を担う京都大原記念病院では、2015年から敷地内の農園(約2,000㎡)で農作業に関わる全ての工程をリハビリテーションに応用。
  • 京都の病院、大学、企業が連携し、リハビリテーション医療のツールとして有効であるという科学的エビデンスを示すことを目指し三者の連携協定を締結。
  • グリーン・ファーム・リハビリテーションは医療法人社団行陵会の登録商標(登録第5953006号)。
療法士(写真左)付き添いのもと、サツマイモの収穫に取り組む患者(写真左から2人目)

【本件の概要】

11月1日、京都大原記念病院グループ(医療法人社団 行陵会 理事長:児玉博行、以下、同院)と、京都府公立大学法人 京都府立医科大学(学長:竹中洋、以下、府立医大)、及びタキイ種苗株式会社(代表取締役社長:瀧井傳一、以下、タキイ種苗)と、「グリーン・ファーム・リハビリテーション®に関する連携協定書(以下、協定)」を締結しました。

本協定は患者の社会復帰に向けた回復期リハビリテーションを担う同院で、約2,000㎡の農園をフィールドに、農業をリハビリテーションプログラムの一環として取り組む「グリーン・ファーム・リハビリテーション®(以下、GFR)」の有効性を検証するにあたり、三者が相互に協力し、成果を共有していくことを目的としています。GFRは、リハビリテーション訓練プログラムの一環として2015年から活動を本格化しました。同院敷地内の農園(約2,000㎡)で農地に関わる全ての工程をリハビリテーションに応用して取り組みを重ね、また、リハビリテーション医療の有効なツールとなることを期待し、府立医大の指導のもと研究活動も続けています。また、農作業の指導については、農園のデザインや品目・品種の選定、栽培管理全般をタキイ種苗が指導に当たっています。

農林水産省の「農業と健康についてのエビデンス把握手法等調査報告書(2012)」によると農作業と健康に関する研究はいくつかありますが、客観的にエビデンスを検証しようとする研究は非常に少ないとされています。本協定の締結により、三者の資源や機能の活用を図り、科学的エビデンスを示すことを目指します。

締結日

2020年11月1日

協定の内容

  1. 1. グリーン・ファーム・リハビリテーション®の研究に関すること
  2. 総括: 京都大原記念病院グループ(医療法人社団 行陵会)
    研究指導: 京都府立医科大学大学院医学研究科 教授 山脇 正永
    京都府立医科大学大学院医学研究科 教授 水野 敏樹
    農業指導: タキイ種苗 株式会社
  3. 2. グリーン・ファーム・リハビリテーション®のフィールドとなる農園の運営に関すること
  4. 3. その他、相互に連携及び協力が認められる事項に関すること

GFRの詳細と本協定締結の意義

活動の拠点となる農園

京都大原記念病院(以下、同院)が担う回復期リハビリテーションでは、医師の指示のもと療法士が、マンツーマンで1日最大3時間、患者個別のプログラムに基づきリハビリテーションを実施します。グリーン・ファーム・リハビリテーション®(以下、GFR)はその一環として、季節に応じて「タネまき」「定植」「農園整備(畝の準備・誘引・除草・片づけ等)」「収穫」を農園で行うほか、収穫物の「調理」や、屋外での作業が難しい酷暑・厳寒期は屋内での関連作業を実施しています。活動は療法士がマンツーマン指導し進めます。参加対象者は農業経験者に限らず、患者の状態や希望を考慮し、安全に活動できると主治医が判断した場合に参加いただきます。また、農園芸作業を幅広い患者に安定して活用いただくために、整地がされ、療法士と患者が十分スペースをとれて、車いすでの患者等幅広く参加いただける設計となっています。また、農作業がなるべく長期間継続できるような品目・品種選定やその栽培など、タキイ種苗より派遣される指導員の指導のもとGFR独自の工夫を施しています。

これまで府立医大の指導のもとでGFRによる身体的・心理的な効果の検討(課題指向型リハビリテーションの取り組み※1に取り組み、脳卒中患者に対し、週4回(40分/回)1か月間実施し、前頭葉機能※2に改善を認めた事例や、運動麻痺が軽度で歩行可能な患者に、週3〜4回(40分/回)1か月間実施し、平衡機能※3で良い結果が見られた事例などを報告してきました。しかし、いずれも1日最大3時間実施する訓練の一環として行うなかの傾向であり、GFRのみの効果と捉えることができておらず、その検証(エビデンスの収集)が課題となっています。患者の障害状況、天気や季節、農作業内容と3つの変動する要素が関与するため、短期間でのデータ集積は困難です。今回の協定締結を機に中長期的な視点で取り組みを重ね、農作業が、リハビリテーション医療のツールとして有効であるという科学的エビデンスを示すことを目指します。今後長期の見通しとして、栽培した機能性野菜※4の継続した喫食による回復効果への測定も期待しています。

夏に農園内に避暑を兼ねた活動場となるグリーン・トンネル。
活動について議論する山脇正永医師(写真右)と、同院スタッフ
タキイ種苗指導員(写真右から2人目)の指導を受ける同院スタッフ(写真左から1人目)

参考情報

  1. ※1 課題指向型リハビリテーション ^
    患者の状況や環境を考慮し、行動目標を明確にした上で、多様な条件下で課題を設定し、さらには難易度を調整しながら反復練習する。GFRでの活動は、定植(タネ撒き、苗植え)、収穫など行動目標が明確であり、患者の意欲的な参加により、脳の賦活、結果として身体的・心理的な効果へとつながることを期待している。
  2. ※2 前頭葉機能 ^
    注意・思考・感情のコントロールや、物事を整理・処理・実行する能力。
  3. ※3 平衡機能 ^
    バランスを保つ能力
  4. ※4 機能性野菜 ^
    本来は全く含まれない、もしくはごく微量にしか含まない成分を、何らかの技術を用いて高含有にした野菜。2015年4月食品表示法の改正と同時に、食品に「機能性表示食品」というジャンルができたことで、機能性野菜は「機能性表示可能な栄養成分をもつ、栄養機能食品の分類に入る野菜に限る」となった。タキイ種苗は、健康維持機能をもつ成分を多く含み、なおかつ食味にすぐれた「機能性野菜」の研究プロジェクトを約25年前にスタートさせ、機能性成分を多く含む「ファイトリッチ」シリーズを商品化。超高齢化社会へ向かう中、「健康寿命」の引き上げが求められる一方で、若年層の野菜摂取量不足という課題解決の手段としても「ファイトリッチ」が活躍するフィールドは確実に広がっている。