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2025.03.13

2025年も温暖化の影響で野菜の生育に大きな課題?!
タキイ種苗の「暑さ対策」品種開発:トマト編
〜黄変果の発生が少ない『桃太郎ブライト』〜

2月に気象庁が発表した暖候期予報によると、今夏も暑くなることが予想されています。昨今の暑さは、私たち人間だけでなく農作物の生産現場にも多大な影響を及ぼしています。タキイ種苗は、猛暑によって引き起こされるさまざまな農作物への影響に対応するため、日々野菜の品種開発を進めています。今回は、トマトについてご紹介します。

トマト

好きな野菜ランキング1位を獲得する(※1)など、食卓に欠かせないといえる野菜の一つです。トマトの原産地は、南アメリカのアンデス山脈という、標高が高く、日照量は豊富で、比較的冷涼でかつ湿度の低い地域です。そのため、果菜類の中でも高温は苦手で、生育適温は15〜25℃、高温下ではさまざまな生理障害や病害が発生しやすくなります。2023年の調査によると、高温により発生した「着花・着果不良」の影響は全国で4割程度みられました(※2)。また、同調査では「不良果」や「日焼け果」も全国で2割程度発生しており、トマト生産現場において近年の高温化は大きな問題となっています。
(※1)タキイ種苗株式会社 2024年度「野菜と家庭菜園に関する調査」
(※2)農林水産省「令和5年地球温暖化影響調査レポート」

黄変果(おうへんか)

右の画像のトマトのようにヘタ周りが黄色くなっているトマトを見たことはありませんか?これは、気温が高い時期に発生する生理障害の一つで「黄変果」と呼ばれます。
黄変果発生のメカニズムは、高温条件下ではトマトの赤色の元になるリコピンが生成されにくくなる、または緑の色素であるクロロフィル分解が遅くなるという二つの現象によるもので、これらの要因により直射日光が当たり果実温度が上がりやすい肩部分(果底部)が着色不良を起こし、黄色くなります。
遮光や換気によりハウス内環境を改善・適正化するなど、栽培管理によって発生をある程度抑えることは可能ですが、資材費用や労力の増加を伴うため、トマトの性質上、根本的な解決には至りません。

下の画像のトマトのようにヘタ周りが黄色くなっているトマトを見たことはありませんか?これは、気温が高い時期に発生する生理障害の一つで「黄変果」と呼ばれます。
黄変果発生のメカニズムは、高温条件下ではトマトの赤色の元になるリコピンが生成されにくくなる、または緑の色素であるクロロフィル分解が遅くなるという二つの現象によるもので、これらの要因により直射日光が当たり果実温度が上がりやすい肩部分(果底部)が着色不良を起こし、黄色くなります。
遮光や換気によりハウス内環境を改善・適正化するなど、栽培管理によって発生をある程度抑えることは可能ですが、資材費用や労力の増加を伴うため、トマトの性質上、根本的な解決には至りません。

黄変果
黄変果

黄変果の発生が少ない冬春栽培向けトマト『桃太郎ブライト』の開発

『桃太郎ブライト』は、栽培が長期化する傾向にある冬春栽培において重要な形質となる「スタミナ」と「着果性」をコンセプトに育成を進め、開発した品種です。また、この品種は、ショルダーグリーン(肩部の濃緑部分)のない均一な着色性を備えています。これにより、着色にムラがでにくく、ヘタの周りまで赤く色づくため、春先に問題となる黄変果の発生が少ないという特長をもちます。

トマト『桃太郎ブライト』
トマト『桃太郎ブライト』

桃太郎ブライト品種カタログURL
https://www.takii.co.jp/CGI/tsk/shohin/shohin.cgi?breed_seq=00000918

◎4〜6月の黄変果発生による秀品率低下が問題となっていた、冬春トマトの主要産地の一つ熊本県八代地域で、黄変果に対する品種比較調査を行った。『桃太郎ブライト』導入後の2021年・2022年の2年を通して、他品種と比べて明らかに黄変果の発生が少ないことが確認された。

各品種 黄変果の発生グラフ

※2021年と2022年にJAやつしろ管内で行われた品種比較調査での黄変果発生率
(熊本県野菜振興協会八代支部調べ 実施期間4/11〜6/13、n=10)

『桃太郎ブライト』で出荷の手間とコスト削減!

黄変したトマトは規格外となり、商品化率を低下させる要因となります。また、出荷できたとしても外観が悪い印象を消費者に与えてしまい、産地のイメージ悪化を招く要因になります。某大手青果会社では、黄変果の発生する時期には1玉ずつ確認してから流通販売されています。この作業には、非常に手間とコストがかかり問題となっていましたが、『桃太郎ブライト』の導入により、確認作業をはじめ労働時間と人件費の削減につながりました。また、販売店からのクレームが減ったとの声も寄せられています。

北海道産地の事例(上)桃太郎ブライト(下)他品種
北海道産地の事例
(上)桃太郎ブライト
(下)他品種

タキイ種苗の今後のトマトの品種開発 「スムカラ」シリーズ誕生

タキイ種苗では、『桃太郎ブライト』のように黄変果の発生が少なく、ヘタの周りまで赤く色づく特長をトマトの果実品質維持の1つとするため、「スムカラ」としてシリーズ化しました。「スムカラ」は、「スムーズカラー」の略称で、温暖化が進む条件下でも生産現場から流通、販売に至るまで、安定出荷に貢献できる「スムカラ」シリーズのトマト品種拡充に向け引き続き取り組んでまいります。

「スムカラ」アイコン

※「スムカラ」はタキイ種苗の登録商標です。