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野菜栽培マニュアル

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イチゴ

■菜園向けイチゴ栽培カレンダー

栽培カレンダー

花と果実

[イチゴの果実]

イチゴ(バラ科の植物)の果実は、花床が肥大、発達して果肉となったもので偽果になります。花床上にはそう果が付着していて、その中に1個の種子を含んでいます。果実の肥大には種子の形成が必要で、花床上の種子数が多いほど果実は大きく肥大します。受粉・受精が完全に行われて種子が形成されると果実は正常に発達しますが、部分的にしか行われないと正常に肥大せず奇形果となります。受粉が行われないと花床は肥大しません。

[花と果実の構造]

花芽分化

イチゴは夏の高温・長日条件下ではランナーによる栄養繁殖を行い、初秋から晩秋に平均気温が25℃付近まで下がると短くなった日長に反応して花芽を分化するようになります。25℃以上の高い温度では、イチゴの花芽形成は完全に阻害され、温度が12〜15℃以下となると日長にかかわらず花芽を分化します。品種間差はありますが、15〜25℃の範囲においてのみ短日条件化で花成誘導が起こります。

イチゴの花

[花が咲かない]

露地栽培では秋遅くに老化苗を植えると、苗の生長は低温の影響で定植後すぐに止まり、花芽の数が少なくなります。また定植が早すぎたり、多肥で栄養生長にかたよると花芽分化が遅くなり花数が減ります。

休眠(短日と低温)

自然条件下で生長するイチゴは晩夏の温度と日長の低下に反応して花芽分化し、秋の短日・低温条件に反応して葉が小さくなりわい化して(ロゼット:不良環境への耐性が強まった状態)、休眠に入ります。次第に休眠を深めていき、休眠は11月ごろに最も深くなります。秋から冬にかけて光合成産物は根に転流し、根量が増加して糖やデンプンが根に蓄えられます。春の再生長と開花結実に備えて貯蔵分を蓄積することも根の重要な機能となっています。その後、冬の低温で休眠打破され、春になって温度が上昇すると開花結実します。休眠は生育に不適な冬の低温に対する適応であり、生き残るためのものといえます。

生育

[露地(普通)栽培]
■生育適温
18〜25℃(最低温度5℃、最高温度35℃)
■地上部の生育適温
20〜25℃
■果実の肥大適温
昼間 20〜24℃ 夜間 6〜10℃
■果実の成熟適温
15〜20℃

■施肥量
元肥として10uあたりチッソ120〜160g、リン酸200g、カリ180gを目安に施します。栽培が半年程度になるため肥効が長く続く緩効性肥料や有機質肥料を施用するとよいでしょう。イチゴの根は肥料焼けに弱いので、施肥は定植の2週間前までに行います。

苗と定植

[イチゴ苗]

初めてイチゴを栽培するときは、園芸店や種苗店などで苗を購入するとよいでしょう。その際、ウイルスフリー苗を選ベば安心して植え付けることができます。

イチゴのポット苗

[畑の準備]

イチゴの根系は比較的範囲が狭く、大部分が地表面から30cm以内に分布するため、乾燥の影響を受けやすいので、土壤水分を保つことが大切です。定植後の乾燥防止と収獲の際、果実の汚れと病気の予防も兼ねて黒マルチを利用するとよいでしょう。排水の悪い畑では、うねの高さを30cm程度の高うねとし過湿を防ぎます。

[定植]

株間30〜40cm程度で苗を定植します。葉の付け根のクラウン部分(葉の成長点)を地上に出すように植え付けます。この部分を埋めてしまうと生育が悪くなったり、病気にかかりやすくなるので注意します。
イチゴはランナーが伸びる方向に花房を出して果実をつけるので、収穫同じ向きで定植します。植え付け後はたっぷりと水をやり、根の活着を促します。保湿や保温のため、マルチ穴にモミガラなどを施すとよいでしよう。土壤からの水分蒸発を防ぐほか、雑草を防ぐ効果もあります。

[トンネル保温と栽培管理]

休眠が開けた2月上中旬には、保温するためにトンネル支柱を1mごとに立ててビニールなどで被覆します。冬の寒さには強いですが、地上部が伸長をはじめると低温に弱いので、トンネルで温度を確保するとよいでしょう。半月ぐらいは密閉し、葉が伸びはじめたらトンネル内の温度の上がりすぎを抑えるため両側のすそを少し開けて換気するようにしましょう。タ方は保温のため、すそを閉じるようにします。
春先に、休眠から覚めて新葉が展開してきますが、その新葉が5〜7枚のころになったら、老化した葉や枯れ葉を株元から取り除いて風通しをよくし、病気を予防します。

[追肥]

追肥は2回行い、1回目は11月に根を張らせて越冬させるため、2回目は2月に新葉の生長を促すために施します。1回にチッソ成分で30g/10mを目安に肥料が根や葉に直接触れないように注意し、株元から10〜15cm以上離れたところに施用します。液肥を利用すると効果が高くなります。

開花と収穫

4月、平均気温が10℃以上になると開花をはじめます。この時にランナーが次々に発生しますが、果実の栄養を取られるため早めに除去します。この時期、トンネルのビニールは開放するようにします。

[人工受粉]

花が早く咲いて訪花昆虫がいないときは、形のよい果実を作るため雌しベに花粉を付けます。やわらかい筆の穗先でやさしくなぞって花粉をとり、中心部の雌しベに受粉させます。

イチゴの受粉

穂先の柔らかい絵筆などでやさしくなぞって花粉を取り、たくさんあるめしべに付ける

[収穫]

赤く完熟したものから収穫していきますが、ナメクジの食害が多いので注意します。露地栽培では、収穫期間は約1カ月程度になります。開花から成熟までの日数は温度による影響を受け、積算温度600〜700℃で収穫期に達します。着色をよくするためには、果実への日当りをよくすることが必要です。

収穫した果実

イチゴの苗作り(5〜9月)

栄養繁殖性の強いイチゴは、親株の株元(クラウン)の葉えきからほふく茎(ランナー)を発生させ、その先端に根、葉、茎をもつ新しい株(子株)を形成します。この子株を採取、育苗して定植するのが一般的です。2年目以降は生育がよく、よい果実をつけた株を選んで親株とし、伸びてくるランナーが込みあわないよう誘引、配置します。1節目の子苗(太郎苗)はウイルス病などの病害に感染している危険性があるので使うのは避け、2節目以降(次郎苗、三郎苗)を育てます。イチゴは暑さと病気に弱いので注意して育苗しましょう。
苗床で育てる場合は、苗を2回移植します。1回目は条間10cm、株間10cmで親株のランナーから切り離し植え付けます。2回目は、株間を広げるため約1カ月後に条間15cm、株間15cmで移殖し、成苗まで生育します。高温期は炭そ病や萎黄病が多いので殺菌剤を定期的に散布しましょう。苗作りを行う場合は、何年も続けてとると育ちが悪くなってきますので2〜3年を目安に親株を更新します。

[苗床育苗]

果実をとり終わった健全な株を親にする

[成苗]

親株側はランナーを2cmほど残して切り、もうー方は短く切る。 短く切った方向に花房が出る

[ポット育苗]

苗床で育てる代わりに、培養土を入れたポットに子苗を受けて育苗する方法もあります。植え込んで株が浮き上がらないようにランナーを曲げた針金などで固定します。
20日ほどで根が活着したら、ランナーを切り離します。

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