第4回

2017/07/20掲載

3.初めて相部屋を経験し他人を思いやる

新入生の多くは生まれて初めて2名の相部屋で寮生活を開始します。この際、お互い気が合うように部屋割りには大変気を遣います。また、折角の機会ですから幅広い交友関係を築いてもらうため、出身県が遠く異なるもの同士、高卒と大卒の組み合わせになるよう部屋割りします。

4〜5月は相方のいびきや歯ぎしり、寝言などで睡眠不足を訴える生徒が必ず出てきます。これが原因で彼らの関係が悪化しないよう、まずは早めに面接を行い、悩みを聞き、生活リズムを朝型に変え、本校の水に早く慣れるように指導するのが唯一の対処法と言えます。最近の生徒は幼少期から個室があることが当たり前で、プライベートな空間では他人への配慮に欠ける場合が多く、お互い自分の事を最優先になってしまいます。その結果それぞれがストレスが溜め、遂にはどちらか一方が部屋を出て消灯まで帰らないケースも生まれてきます。こうした気まずい関係にならないよう、自分のやりたい欲求を半分に抑え、相手の気持ちになって我慢することが上手くやっていける秘訣だと、折につれ話していました。昔に比べヤンチャな生徒は激減しましたが精神的に弱い生徒が多く、内にこもってしまう生徒が増え、寮生活、実習面とも生徒指導は大変難し時代を実感します。

一方、2年目の専攻生は個室が与えられますが、それぞれ1〜2部屋(2〜4名)の本科生を部屋員として受け持ち、寮生活、実習、勉強と卒業まで責任を持って指導に当たります。加えて、研究農場の若手場員が専攻生・本科生の部屋顧問に任命され、実習日誌の点検から生活指導、進路指導と広範囲にわたり相談役を務めます。

生徒たちが1年を過ごす青葉寮

こうして本科生は専攻生に支えられるわけですが、後期に入ってくると、本科生がどことなく指導を受けている部屋長の専攻生に似てくるから不思議です。それだけ感受性の豊かな年代の彼らは、僅か1年を共に過ごすだけで、部屋顧問や専攻生、部屋員同士強い絆で結ばれ、卒業後数十年たっても互いの悩みを打ち明け当時の気持ちで語り合えます。多くの生徒が生涯にわたり親友と呼べる人間関係を築けるのも本校の特徴といえます。

回顧録TOPへ戻る