第5回

2018/02/20掲載

4.整地作業は専攻生の晴れ舞台!

けんひも、もっと引っ張って(1978年)
けんひも、もっと引っ張って(1978年)

トラクターの畝割が進むといよいよ我々本隊出陣の出番、整地の仕上げ作業です。先ず通路に落ちている石を平鍬とスコップを使って競争でさらいだします。次ぎに畝修正のため、専攻生と本科生がペアを組み、畝の両端にそれぞれ陣取り、棒に括り付けた幅1m×長さ25mのけんひもを両手で力一杯引っ張ります。ぴーんと張ったけんひもを目印に本科生10名を専攻生が指揮して土移動、畝幅修正、蒲鉾型形成の順に大声で次々指示を出していきます。けんひも役は一見引っ張るだけで楽なようですが緩まないよう25m張り続けるにはずっと続く綱引きの様なもので強靱な体力が必要です。この整地仕上げ作業は常に2チームで競争となるのですが、各チームの指揮官となった専攻生はここが日ごろの腕の見せ所。颯爽と晴れ舞台を演出します。暑さを吹き飛ばすため大声を張り上げ自分のチームの本科生たちを叱咤激励し盛り上げていきます。そして次々と全長25m、畝幅1mの蒲鉾型の畝が、133個一糸乱れぬ見事な形で仕上がって行きます。

こうして無事整地作業が終え、自分たちの仕上げた見事な畝が並ぶ姿を眺めたときの専攻生と本科生たちの誇らしげな表情。全力を出し切って汗をかき切った者のみが味わえる達成感だと思います。

「雨よけシートを用意!」観天望気を身に着ける

整地は常に天候との戦いです。この「夏の陣」で観天望気を体得しました。お盆過ぎの午後14時ごろ、研究農場から約3q南西に位置する阿星山(標高693m)の左手から入道雲がムクムク湧き上がると要注意です。1時間後に必ず雷雨を伴う激しい夕立が来襲します。(因みに、阿星山の右手側に発生する入道雲は草津市の夕立となります)しかもこの夕立は1時間遅れで3日連続することを体験しました。私の生まれ故郷鳥取方面で言う「夕立三日」です。こうした夕立に遭遇すると1週間は圃場に入れず整地・定植が遅れます。土を出来るだけ乾かし、練らずに適湿な状態で整地仕上げするのが栽培の基本だからです。

雨雲が近づき上空が暗くなりはじめ、一陣の冷たい突風がサーと吹き通り、雷鳴が轟き始めた降雨直前を見計らって、間髪いれず雨よけシート被覆の号令を発します。この号令のタイミングの良し悪しが生徒の信頼に結び付きます。

全員で雨よけシートの上に土嚢(どのう)を置き終えた直後、ポツリポツリと大粒の雨が降り始めた時の安堵感、生徒のやりきったという満足の表情は忘れられません。広い圃場で生徒と一心同体になれる時です。

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