第6回

2018/07/20掲載

3.キャベツ類の定植

定植前日に育苗床の雨よけ被覆を除去、目板ラベルの後ろに苗採りの紙ラベルを刺すための40cmの支柱を立てます。次ぎに定植後の活着を促すため、フォークで苗を浮かせ断根し十分潅水します。この断根作業により細かい新根が一晩で発根し活着がよくなり初期生育が旺盛となります。

定植は本隊の圃場係(社員2、専攻生2、本科生30)と、本隊をサポートする苗運搬係(トラック2台、社員2、専攻生1)、苗採り係(社員・専攻生全員15)に分かれます。圃場係は、条間・株間を標し、待ち肥・除草剤を散布後、定植穴を鍬で軽く掘り、圃場ラベルをたて、潅水ホースの準備を整えます。作物担当者は列植図とラベルの最終確認を終えます。

一方、苗採り係は当日、早朝に十分潅水し苗の萎れを防ぐと同時に苗採りを容易にするため土を柔らかくしておきます。苗採り用の紙ラベルを目板ラベルの竹支柱に刺し、苗運搬の播種箱を配り準備完了です。紙ラベルには系統番号、苗数、畝番号が記入され、定植のミスを防止します。

苗運搬係の社員は定植状況を随時見ながら苗採り係へ報告、両者のスピード調整を図り、出来るだけ苗が萎れないように配慮します。空の播種箱を回収し苗床へ返却、そのおり不足した苗を追加するなどが役目でした。

当時は土の状況が非常に悪く、定植穴は石ころだらけで1日定植すると生徒のツメはボロボロになるほどでした。今のように軍手、手袋をつける習慣はなかったので指先も相当痛かったはずですが当時の集中力に驚かされます。一反歩くらい定植すると潅水チームが出動です。炎天下の定植で潅水役に指名された本科生はウキウキ顔です。潅水役の専攻生へホースを伸ばす役目で、実習服は泥だらけになりますが冷たい水に触れることができたからです。この際、生徒は潅水ホースが絡まない効率のよい「8の字」巻を体得します。

定植時、社員と専攻生は萎れを防ぐために交代で昼食をとり休憩無しで潅水作業を行います。午後になると生徒は要領をおぼえスピードが上がり、掛け声で暑さを吹き飛ばします。「夏の陣」クライマックスに達します。運搬係は頃合いをみてもみ殻袋を準備、播種箱回収、苗床整理と走り回るのでした。

定植作業の最後は全員で乾燥防止のためのもみ殻散布です。各自、ドンゴロスに一杯詰まったもみ殻袋を引きずりながら、これまたもみ殻散布の競争開始です。天候に恵まれ整地、定植が順調に進む年でも定植完了は午後7時過ぎとなりました。天候不順だった年には、果菜、花卉から生徒が応援に駆けつけ、50名以上が作業に当たり運動会用のメガホンで指示を出すこともありました。そうというのも研究農場ですから一般農家と異なり育成中の交配種など、比較のためにも同じ条件になるよう定植日をそろえることが原則です。夜8時過ぎまでヘッドライトで圃場を照らし定植を終える年も度々ありました。大声を掛け合い勢いに乗って一気呵成に期日に定植を行う様子はまるで夏休み最終日の盆踊りのごとき熱気を帯びていたのです。8月下旬から始まった定植は9月中旬でほぼ完了し秋の到来を告げます。

回顧録TOPへ戻る