社会への貢献

医・食・農一体の取り組み
〜京都大原記念病院との連携が生んだグリーン・ファーム・リハビリデーション®〜

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作業のしやすさの工夫

夏の農園で作業療法士の人気No.1の野菜は、キュウリとマメ類です。高低差があるので、患者様の能力に合わせて難易度を調整しやすいためです(作業療法士 山中氏)。しかし、これらを普通に栽培した場合、左下図のように、患者様は身を乗り出して、なんだか辛そうな姿勢になってしまいます。車いすに乗っているため、これ以上畝に近づけないのです。そこで、一計を案じて、支柱を斜めに刺して栽培してみたところ・・・(中央下図)、もくろみ通り。通路からキュウリ・マメ類にアクセスしやすくなり、患者様は手先に集中して作業が可能となりました(右下図)

↑支柱を斜めに立てることで、緑のトンネルも作りやすくなります。

↑しゃがむのが難しい患者様には、立ち姿勢のままタネまきや追肥ができるパイプ利用をおすすめしました。

現場の声7
「作業療法メニューに農園芸作業が選択できるようになって」

京都大原記念病院リハビリテーション部 作業療法士 山中卓也 氏(左)

農作業に伴うタネまきや苗植えは、精神的にも肉体的にも効果が期待されています。また、農作業は習慣化しやすい活動の一つとして健康増進に繋がる可能性があるとも言われています。実際に屋外の農園に出て、農作業をした患者様からは年齢に関わらず「またしたい」といった満足感が高い声を頂いています。また、認知症によって季節を感じにくい患者様も実際に育っている野菜からは季節感を感じる時があります。
農作業に伴う運動にも注目しています。農作業は強い運動負荷量のある作業にも関わらず、楽しみながらできる作業としての魅力があると考えています。野菜の生長を目で見て楽しみながら行い、屋外で日照を浴びた患者様からは「いい汗をかいた」と運動後の充実感が伺える発言を耳にすることがよくあり、スタッフもその表情の変化に驚くことがあります。

また収穫した野菜を使って、調理訓練を行って頂くこともあります。自分で収穫した野菜を使うと普段行っている調理練習よりも楽しさが増すようです。
さらに、農園に隣接して行われている園芸作業も患者様には好評です。実際に採ってきた切り花を花瓶にいれてアレンジメントを楽しむ方もいます。
今後も「安心安全な農作物をたべたい」という思いと同時に「農作業で体を動かしたい」、「農作業でリフレッシュしたい」と思って頂けるような健康のための身体活動が出来るようにタキイ種苗(株)さんと協力してよりよい環境づくりに努めていきたいと考えています。
忙しく過ごす日々の日常では、健康に必要な栄養・食生活・心の健康・身体活動が十分にとりにくいことが挙げられます。これらの要素を満たしてくれる作業として、農作業はいずれの改善にも効果が期待できるものと考えています。