社会への貢献

医・食・農一体の取り組み
〜京都大原記念病院との連携が生んだグリーン・ファーム・リハビリデーション®〜

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第5章 今後の展望

2015年に創業180周年を迎えたタキイ種苗は、「社会に必要とされる200年企業」を目指して新しいスタートをきりました。「農」の力で人々の健康寿命を延ばし、心身共に豊かな毎日を暮らしてほしい、その実現に向けて歩き出しました。それが今、医・食・農一体の取り組み「グリーン・ファーム・リハビリテーション®」を生み出したのです。

京都大原記念病院グループおよび京都府立医科大学の医療従事者の方々と連携させていただくうちに、農園環境や農作業についての新しい「気付き」が次々と生まれました。得られた気付きを次作で改良・検証・評価し、次々作で定着させる、という手順を繰り返してきた結果、リハビリテーションに向く野菜の種類・品種・仕立て方など、タキイ種苗として一定の成果を導くことができました。これらは、第2章「施設で農園芸のリハビリテーション利用を成功させる7カ条」でご紹介しています。これを読んでくださっている医療・介護・福祉施設様やご家庭での家庭菜園にも適用可能な実証モデル例として公開しておりますので、皆様がこの連携記録を生活に取り入れてくださり、野菜や花の生長を慈しむ豊かな毎日と健康寿命の延伸につながることを願っております。

今後、農作業をリハビリテーションに活用する環境は整いつつあります。また、食の分野ではタキイ種苗が開発したファイトリッチシリーズ®が同グループ内の食事メニューの強化に採用され嚥下食での活用も期待されるほか、より広義な「リハビリ栄養食」「健康長寿食」への利用の可能性も見えてきました。このように、「グリーン・ファーム・リハビリテーション®」プログラムの特徴は、QOL(生活の質)の向上やリハビリ栄養など、医・食・農に関する複合的な目標を立てて取り組んでいる点にあります。それはタキイ種苗が目指す「医食同源」そのものです。これらの取り組みを昇華し、皆様の生活の指針となるために、今後は同院・同大学との連携を継続し、「グリーン・ファーム・リハビリテーション®」に関する医学的な根拠を積み上げる段階へと進んでいく予定です。こうしたエビデンスの蓄積は10年単位の尺が必要ですが、得られた知見は随時公開させていただきます。

〜編集後記〜

農作業で表情が明るくなった患者様、会話が弾んだ利用者様、「患者様が農作業で得た達成感が次の能動的な行動につながっています」と教えてくださった作業療法士、理学療法士の方々など・・・、皆様の声と、シーズンが終わるごとに作業療法士の方々が記載してくださった農業とリハビリテーションの融合に関するアンケートは、医療分野に馴染みの薄かったタキイ種苗にとって貴重な財産となりました。この連携記録が、全国の皆様にとって、明日の健康な姿を描く一助となれば誠に幸いです。連携の実務と記録の編集にあたってご尽力とご指導いただきました京都大原記念病院グループおよび京都府立医科大学の医師、看護師、作業療法士、理学療法士、管理栄養士、介護福祉士、実務担当者の皆様へ、この場を借りて心より深く御礼申し上げます。
タキイ種苗は「農の力」を信じています。これからも、営利栽培のみならず、農業が有する多面的な可能性を惹き出し、少子高齢化、健康寿命と平均寿命のかい離、社会保障費の増大など、現代の日本が抱える課題解決に、本業の農業で貢献していく所存です。

2018年4月13日

タキイ種苗株式会社
CSR委員会
委員長 青池仁美