社会への貢献

医・食・農一体の取り組み
〜京都大原記念病院との連携が生んだグリーン・ファーム・リハビリデーション®〜

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2017年度の栽培日記 農園管理のリーダー岡山渉氏(京都大原記念病院)の記録をベースに紹介いたします。

7月 〜多くの人を引き寄せる農園の魅力〜

  • 夏野菜の収穫が始まり農園が賑わいだすと、患者の中には収穫作業をしなくても、野菜や花を見るために菜園に足を運び、不整地歩行訓練をされている方が増えました。また、入院患者の面会に訪れたご家族、関係者、近隣に住まわれている方など、多くの方が農園を見学に来られました。この賑わいは9月ごろまで続きました。農園はリハビリ意欲を掻き立て、人を集める効果が大きいと感じた7月です。
  • タキイ研究農場を関係者で訪問いただき夏野菜の見学を兼ねた情報交換を行いました。次年度夏野菜には、収穫量の見込めるオクラの栽培を取り入れることが決まりました。リハビリスタッフ・看護師目線から見た品目の選定も必要ということも次第にわかってきました。
菜園周りの散歩道にはひまわりやサルビアが栽植された。
スイカやマッカなど地面を這うつる物は畝内に看者が踏み込みにくく、農作業リハビリ用途には向かない。栽培法の工夫が課題となった。

8月 〜グループ内施設で収穫物を活用、インゲンを再度播種〜

  • 増え続ける収穫物を有効に活用するため、リハビリテーション部と栄養課が連携。京都大原記念病院グループ内施設で、農園からの収穫物を使った献立や行事食をより多く提供しようと、生育が不十分だったトマト・ピーマン以外のキュウリ・ナス・そうめんカボチャ・モロッコインゲン・シカクマメを主に食材として提供していきました。収穫物の消費循環の大きな流れが徐々に整備されていきました。
1)トマト:通路に近い位置に苗植えと支柱を立てる。

甘とう美人(トウガラシ)、ピー太郎(ピーマン)、シカクマメ、フルティカ、千果、オレンジ千果(トマト)、ダイナー(ズッキーニ)、とげなし千両二号(ナス)、そうめん南瓜、紅しずく(スイカ)、VR夏すずみ、Vアーチ(キュウリ)、モロッコ(インゲンマメ)、ラッカセイ
紅はるか、パープルスイートロード(サツマイモ)は10月に収穫。

この年から菜園の中央に日よけの休憩所テントが設けられた。
この年から菜園の中央に日よけの休憩所テントが設けられた。
周囲が山に近いこともあり、農園が整備されるにつれカラスや鹿の被害という問題も発生した。
周囲が山に近いこともあり、農園が整備されるにつれカラスや鹿の被害という問題も発生した。
  • 15日ごろ、景観用にコスモスを播種。リハビリ部門からオーダーのあったハーブ畝が作られました。
  • 20日に秋ダネのニンジン(オランジェ・京くれない)を播種。夏野菜の収穫が終わった畝から順に秋冬野菜の準備を開始。人気の「モロッコ」インゲンは10月に収穫できるようもう一度播種。つるありインゲンは、コンスタントに収穫が続き農作業リハビリに向く品目で、マメ類の中では連作障害も少ないことから、菜園に欠かせない品目といえます。
室内作業ではポプリを作る看者も現れたプランターによるハーブの栽培。プランターは乾きが早く、アグリシートに穴をあけての設置となった。
室内作業ではポプリを作る看者も現れたプランターによるハーブの栽培。プランターは乾きが早く、アグリシートに穴をあけての設置となった。

9月 〜秋冬野菜に切り替え、秋のイベントに向けて〜

  • 夏野菜を終わらせ秋冬野菜の畝へと準備開始。5日に秋冬野菜を播種・定植作業。
  • 11月の公開講座と農作業リハビリ体験に使用予定のミニの赤ダイコン「紅三太」を多めに播種。17日にハクサイ苗を定植し秋冬野菜の生育が始まりました。
栄養管理士監修による赤シソの自家製ゼリー。
ミニダイコンの「紅三太」は収穫しやすい手軽なサイズ。秋の収穫イベントでも活躍。

10月 〜車イス患者向けにプランター栽培を試す〜

  • リハビリテーション部からの要望で、車イスに座ったままでできる農作業を検討。プランター栽培を取り入れてみることになりました。プランターへの土や肥料の混入、タネまきや水やりなどの一連の作業をしてもらい、水やりなど管理の度に都度農園に足を運んでいただくという内容で開始しました。しかし、プランター栽培は畑に比べ生育が遅く短期の患者だと収穫時期を待たずに退院されてしまうため農作業リハビリには向かないということがわかりました。
  • 大原ホーム老人デイサービスセンター利用者など高齢者施設利用者のレクリエーションとして、月末にサツマイモを収穫。焼き芋にして楽しまれた。

11月 〜農作業プログラムに高い関心〜

  • タキイ研究農場で秋冬野菜の紹介と意見交換。台風対策などが話題となりました。新開発の香りがするペチュニア「ブルームーン」に関心を持っていただける場面もあり、将来的には「香り」もリハビリの要素となるかと話題になりました。
  • 23日に京都大原記念病院グループ主催のリハビリテーション公開講座が大原の病院施設で行われ、「グリーン・ファーム・リハビリテーション®」が来場者に紹介されました。スタッフ・看護師らが来場者を案内し、使用品目やファイトリッチ品種の説明をしていただきました。この日150名ほどの方が来園され、農園も大いに賑わいました。来訪者アンケートでは非常に楽しかったという声が多数集まったようです。
リハビリ患者だけでなく施設利用者のご家族からも農園は高い関心を持たれた。
リハビリ患者だけでなく施設利用者のご家族からも農園は高い関心を持たれた。
タキイ種苗は種子アートの体験講習を行って老若男女問わず訪問者で大盛況となった。室内における手先のリハビリにも活用が期待される。
タキイ種苗は種子アートの体験講習を行った。老若男女問わず訪問者で大盛況となった。室内における手先のリハビリにも活用が期待される。
  • 26日、京都大原記念病院グループの御所南リハビリテーションクリニック看者が農園を訪問され、農作業リハビリを体験。「三太郎」ダイコンの収穫と洗浄・袋詰めまでの一貫作業を楽しまれました。

12月 〜厳寒期に室内でできる作業〜

  • 冬になると農園へ足を運ぶ患者が極端に減ります。収穫作業もほぼない状態のため室内で可能な農作業リハビリが検討されました。結果、マメ類への防寒対策用に使うわら帽子の作成や菜園から株ごと収穫したメキャベツ(子持ち甘藍)を摘果する作業が実施され、リハビリにも有効活用できました。こうした作業療法室での作業の利点として、患者同士のコミュニケーションが図りやすく有効です。メキャベツは茎がかたすぎて切れないものはレンジで加熱し、切りやすくするなど患者自ら工夫されました。実は患者の中に元調理人の方がおられたのです。その方は茎部分を包丁で切ることで、現職復帰にむけてのリハビリにもなったそうです。
  • 収穫された「ファイトリッチ」シリーズの「オレンジクイン」ハクサイがデイサービスセンターのイベントで「ちゃんこ鍋」に使用されました。「おいしい、甘い!」「火が通ってもオレンジ色がきれい!」と大好評。管理栄養士からシスリコピンやカロテンなど機能性成分の説明もいただき参加者の関心をさらに高めていただいたそうです。このイベントは好評につき、毎年恒例行事となっています。