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2009.01.22
日本で初めて緑茎のトマト台木を開発。台木用トマト「グリーンガード」を新発売(青枯病、コルキールートに高い耐病性)
タキイ種苗は、トマト台木の新品種『グリーンガード』を発売します。
栽培期間の長いトマトには、生育中の気温、湿度など環境条件の違いにより、さまざまな種類の病害が発生しますが、発生する所から土壌病害と地上部病害の2種類に分けることができます。それらの病気に対応するため、トマトは現在、最も耐病性育種が進んでいる野菜の一つです。
特に、連作によって引き起こされることが多い土壌病害は、発生してからでは農薬による防除が難しいため、定植前の土壌消毒か耐病性品種を栽培することによって防ぎます。トマト生産者はこの土壌病害(※夏秋栽培や※抑制栽培で被害が多いのは、※青枯病や※コルキールートが挙げられます)を防ぐ手段として、耐病性※台木に接ぎ木をして回避する方法が主流になっています。国内栽培面積の約半分が土壌病害回避のために接ぎ木栽培を行っています。トマトの接ぎ木栽培は、年々、増加傾向にあり、台木を使用することによって、生産者が土壌病害から安心して栽培でき、安定した収量を上げ、さらには産地の維持を図ることができます。
しかしながら、接ぎ木をする際の問題点として、台木品種は幼苗期の胚軸(茎)の色が紫色であり、穂木品種(紫色)と同じことから識別がしにくく、穂木と台木を間違って反対に接ぎ木することがありました。台木品種の果実は中玉やミニが多く、たとえ収穫しても果実は品質的に販売できません。
今回、新発売のトマト台木「グリーンガード」は、幼苗期の胚軸(茎)の色が緑色であり、穂木品種(紫色)との識別が容易であることから接ぎ木間違いが発生せず、育苗業者や自家育苗する生産者にも安心してお使いいただけます。
また、耐病性においても青枯病やコルキールートに、非常に強いだけでなく※萎凋病レース3にも高い耐病性を発揮し、試験栽培をしていただいている産地では、土壌病害の被害が減少するなどの結果が出ています。
今までに、日本には緑茎の台木品種はなく、弊社が初めて品種化に成功しました。今後は、生産者が間違いなく接ぎ木していただけるうえ、強い耐病性をもっていることで、より安心してトマト栽培できるようになると考えられます。
今後も生産者のニーズに対応するために、緑茎に新しく耐病性を付加したものや耐病性をさらに強くしたトマト台木の開発を進めています。
グリーンガード 接ぎ木したグリーンガード(下の部分)
『グリーンガード』の主な特長
国内で流通しているトマト種子は、発芽するとすべて胚軸色は紫色になりますが、「グリーンガード」は幼苗期から胚軸の色が緑色になるため、穂木との識別が極めて容易で、接ぎ木間違いが発生しません。また、胚軸が柔らかく、接木作業もしやすくなっています。
接ぎ木したグリーンガード(左)とこれまでの台木品種(右)
青枯病(B)とコルキールート(K)に対して高い耐病性を示し、この2つの病気が併発する夏秋栽培や抑制栽培で能力を発揮します。その他、半身萎凋病(V)、萎凋病レース1(F1)・レース2(F2)・レース3(F3)、根腐萎凋病(J3)、サツマイモネコブ線虫(N)、トマトモザイクウイルス(ToMV)Tm-2a型に耐病性の台木用トマトです。「グリーンガード」は草勢がおとなしめの台木なので、2本仕立て栽培には適しません。
青枯病の耐病性は、産地ですでに栽培されている弊社の強耐病性品種「Bバリア」「ボランチ」と同レベル、コルキールートの耐病性は強耐病性品種「ドクターK」に匹敵する強さです。萎凋病レース3は、「プロテクト3」と同じ強さで、レース2耐病性品種が侵されている産地においては安心して導入することができます。
 
  コルキールートはもともと低温期に発病する病気でしたが、今では青枯病の発病適温でも発症するなど病原力が強くなり、青枯病と併発する産地が広がってきました。
このような場所では、青枯病とコルキールートの複合耐病性台木が使われていますが、青枯病に強い台木は、コルキールートの耐病性は中程度、もしくはそれ以下であり、より強いコルキールート耐病性をもつ台木の開発が求められていました。
 
 
青枯病 コルキールート
※台木・・・植物を接ぎ木する場合、根の部分の所を台木という。病気を回避したり生育を旺盛にするために台木が使われる。台木に接ぎ木する植物は穂木という。

※夏秋栽培・・・初夏から秋にかけての時期に栽培すること。トマトやキュウリなど温度を必要とする果菜類の栽培に一番適している。

※抑制栽培・・・夏の終わりころから初冬にかけての時期に栽培すること。ハウスを利用する場合は収穫時期が冬にわたる。

※青枯病(あおがれびょう)・・・ナス科作物の重要病害で、土壌伝染性の細菌病。多くの作物を犯す多犯性の病原菌。導管部が侵されて先端からしおれ、ついには枯死する。病勢の進行が速く、茎葉は黄化することなく緑色を保って萎れるところから、「青枯病」の病名がついた。

※コルキールート・・・褐色根腐病とも言われ低温期の施設栽培で発生が多い。下位葉から黄化して徐々に枯れ上がり、日中には上位葉まで萎凋(いちょう)する。さらに病勢が進むと、萎凋は回復しなくなり、枯死に至る。根の部分は、細根が腐敗、脱落して、太い支根や直根のみになる。これらの根は褐変し、褐変部には多数の亀裂を生じ、表皮がコルク化する。

※萎凋病(いちょうびょう)・・・糸状菌(かび)の一種であるフザリウム菌によって発病する土壌伝染性の病気。この病原菌には、抵抗性品種に対する病原性の異なる3系統(レース1、2、3)の存在が知られている。葉の萎れは徐々に上部に、またほかの側の葉にも及ぶ。地際部から萎凋、黄化した位置くらいまでの茎と葉柄の維菅束は褐変し、かたく木化している。発病を繰り返すと、土壌中に病原菌が蓄積し、被害が大きくなる(連作で被害が大きくなる)。
<種子価格>
品種名 量目 希望小売価格(税込み)
グリーンガード 1000粒 12,600円