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栽培基礎講座

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宿根草花の知識 作り方のポイント


宿根草花
宿根草花の知識
 草には一年草と多年草があります。一年草はアサガオやヒナゲシのように、タネから育って花が咲き、一年もたたない内にタネをつけてさっさと枯れてしまうもので、日当たりのよい花壇で育つ草花に多く見られます。
 それに対して多年草とは、一年で枯れることはなく、常緑性で生き続けたり、地上部は枯れても根株が休眠して残り、季節が来ると再び芽を出して育つものをいいます。このうちチューリップやダリアのように、根株が球形や塊状となって養分を蓄えるものを球根植物と呼んで分け、後に残ったものを宿根草として扱います。サクラソウやアヤメ、キクなどが代表的な宿根草です。

宿根草の長所
 宿根草が扱いやすく、すぐれていると思われる点を考えてみると、

 1. 一般的には、一度植え込めば毎年植え替える必要がない
 2. 主として株分けで増やせるので、一年草のように毎年タネをまいて苗を育てる必要がない
 3. 手間がかからず、丈夫な種類が多い
 4. 概してよく増える
 5. 種類が多く、草姿や性質にも多様な個性があり、飽きることがない
 6. 季節感にあふれ、情緒あるものが多い
 7. 庭の下草や植え込みになじむものがある
 8. 日陰に育つものや、湿地に育つものもたくさんある

などなど、たくさんの長所があげられます。いささか手前味噌といわれそうですが、私の家の庭で残って育っているものを確かめると、ほとんどが宿根草であるという事実からも、身近に楽しめる園芸植物として扱うにふさわしいのが、宿根草といってもよいと思います。

宿根草に適した日本の風土
 宿根草は丈夫で育てやすいといいましたが、これは日本の気候風土によるものだと思います。日本列島は全体としては温暖湿潤で、どこへ行ってもみずみずしい植物が豊かに茂っていて、草類では宿根草の占める割合が大変多くなっています。
 これに対して水分の乏しい乾燥地帯では、一年草や球根類の比率が非常に高く、一年のうちのある季節に短い雨期があり、この時に芽を出して花が咲き、再びタネをつけたり球根を充実させたりして、次の雨期が来るまで安全な形で休眠してしのぐわけです。
 日本の気候は、寒暖の差は大きくても湿潤なために、タネや球根の形で休眠しなくても十分しのぐことができ、そのために宿根草が多く育ったといえます。古来より日本で育成された園芸草花のほとんどが宿根草だという事実は、このことを最もよく裏付けています。
 日本産の球根植物とされるユリ類は、掘り上げて乾燥させると干からびてだめになってしまう不完全な球根植物ですし、一年草のアサガオは、本当は熱帯性の外来植物なのです。 

宿根草を楽しむには?
 様々な宿根草は、植える場所やその条件、好みによって選びだし、組み合わせて楽しむことができます。

 1. 庭植え
  庭園の下草に植えられているのは、すべて宿根草といってもよいほどです。私たちの庭では、庭木の間やその前面に、好みの宿根草を植えています。条件に合うものは増えて毎年咲きますが、合わないものは何度植えてもだめで、場所を変えなくてはなりません。1種類ずつが単によく育つだけではなく、他の植え込みと調和したり、お互いが一層引き立て合うように植え方を工夫すると、誰が見ても庭らしくなるものです。
 2. 花 壇
  庭の中でもよく日光が当たり、そこに花壇があることがポイントとなって庭の景観が引き立つように作ります。しかも、最小の面積で最大の効果があがるように、大きさや形、植える種類も厳選します。草姿が乱れず、花期の長いものを選ぶことも大切です。公園や道路端、河川沿い、学校、工場などの広い場所では、大型で大規模な花壇よりも、大型で丈夫な宿根草の横に連続した植え込みが、美しい景観を作ります。ここでも、周りの景観によく調和することが大切です。
 3. 池や流れ
  水生植物の多くも宿根草です。ハス、スイレン、フトイなどを主役にすれば、夏には涼しさを感じる景観が楽しめます。家庭でもレンガとビニールで1〜2平方mの浅いプールを作れば、多くの水草類を集めることが可能です。
 4. 鉢植え
  庭を持たない方は、当然ながら鉢植えで育てることになりますが、サクラソウやキクのように、多くの品種を鉢作りにして、それを飾りつけて観賞するものでは、鉢作りにしなくてはならない理由があります、寒い季節に咲くフクジュソウやクリスマスローズ、夜に咲くギボウシのタマノカンザシなどは、鉢植えにすれば室内や玄関に持ってきて花や香りを眺め楽しむことができます。
 5. プランターやフラワーポット
  植木鉢より大型のものは、人工地盤の上や屋上にも置くことができ、組み合わせを楽しむことができます。ただ、宿根草というのは継続して育てていけるところにメリットがあるのですから、ある季節だけ植えてあとは片づけるというのでは、一年草とまったく変わらず、宿根草を植える意味がありません。丈夫な宿根草は、長く栽培してそのよさを活用していただきたいのです。
 6. 崖地と斜面
  丘陵地や坂の途中の住宅地では、庭や道路沿いは崖地や斜面で、石を積んだり、よう壁であったりします。こうした階段状の地形を利用すると、乾燥に強い宿根草のロックガーデンが可能です。多肉質のベンケイソウの仲間(セダムなど)、ナデシコ類、カンパヌラ、ベロニカ、アイリス類、シバザクラなど、乾燥して風が通る条件を好むもの、匍匐(ほふく)性のもの、つるが伸びてからむ性質の宿根草など、かえっておもしろい庭ができることでしょう。
 7. 切り花
  切り花を目的として宿根草を育てると、それは花畑ということです。家庭では、空いている場所に様々な宿根草を雑然と植えて、きれいに咲いた時に切って部屋に飾るという人もたくさんいます。私たちの庭というのは、庭園というようなものではなく、どこも雑然とした庭か花畑というのが実情で、花好きな人ほどこんな形になるはずです。むしろ花を楽しむ園芸というのは、この雑然とした中にあると私は確信しているくらいです。自分の育てた花は、もったいなくて切れないこともあります。でもたくさん咲いた時は、間引きするように切って、ご近所や知人に差し上げて喜んでいただけるという楽しみもあります。

花壇でも鉢植えでも
楽しめるガーベラ
鉢植えで作って飾る
大ギク
つるが伸びてからむ
クレマチス

入手方法
 宿根草はどこにでもありながら、いざ欲しいとなると、希望の種類が案外求めにくいものです。カタログや園芸店では最近人気のある種類が売られていますが、古くからのものや、行き渡って売れなくなったものは扱われません。そのようなものは、ご近所や知人などをたよって、気に入った種類を分けてもらうようにするとよいでしょう。
 いずれにしても、植え替えの適期があり、春の3〜4月、秋は9〜10月ということを忘れずに、注文したり約束するようにしましょう。強引に分与を要求したり、持ってきてしまうというのは、園芸の道に反します。美しさをほめてお願いすれば、分けられるものならいただけるはずです。
 宿根草は株分けで増やすのが基本ですが、タネまきや挿し芽で苗ができるものもあります。タネから花の咲く親株にまで育てるには年数のかかるものもありますから、この方法は、早く育つものや、大量の苗が必要な時に行います。
 挿し芽はどんな種類でもできるものではありませんが、移植ができない生長期にも可能で、節を持っているものなら、試みると意外に成功します。キク、ナデシコ、シソ科のもの、リンドウなどの類は容易で、山野草などにも応用できます。旅行中に見つけたものなどは、芽先の3節ほどを切って、切り口に濡らしたちり紙を当て、ビニール袋に入れて持ち帰り、切り直して水揚げしてから挿し芽をします。 
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