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栽培基礎講座

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宿根草花の知識 作り方のポイント


宿根草花
作り方のポイント
宿根草の根株の形と株分け法
 宿根草の根株(根茎の形)には様々なものがあります。その形によって株分けのやり方が少し異なるので、よく覚えておきたいものてす。

 1. ひとかたまりの芽を中心に、根が放射状に広がっており、年々芽数が増えて株が大きくなるもの。
 2. フクジュソウ、ギボウシ類…二つ割り、四つ割り、放射状に分けます。
根株から地下茎や地表を這う匍匐(ほふく)枝が伸び、子苗が育つもの。
 3. キク、オミナエシ…子苗を分けて苗とし、新しく植える。
根茎が地中を横に長く伸び、年々遠くへ移動して行くもの。
 4. アマドコロ、ホオズキ…横走した地下茎にできた芽を分けます。
親株が残るだけで、子株はできないもの。
ハマギク、ゼラニウム…挿し芽をして苗を育てて植え込みます。

 1と4はまとまった株が育つもの、2と3は繁殖力が強く、どんどん移動する性質があります。

植え替えと株分け
 宿根草は年数がたつと株が大きくなり、たくさん茎が密生するために、日当たりは悪く1本ずつの力は弱くなり、花が咲きにくくなります。また、古根がいっぱいで新しい根の張る余地がなくなったり、土中の養分が吸い尽くされて育ちが悪くなってきます。株がすっかり衰弱してからでは手遅れですから、その前に株分けして、植え替え作業をしなくてはいけません。
 株分けの技術は、種類によってやり方が違いますが、根株の形の項目で述べたおおよそ四つのタイプにより、各タイプごとに共通です。初めからうまくできなくても、無理をせずに、分けられるところで分けてゆけばよいのです。土をよく落とすと、芽と根の位置関係がよくわかるので、分ける工夫がつきます。芽と根を等分につけることが大切で、小さな株に分けすぎると、力がなくなって宿根草としての利点を失い、株が育って力がつくまで花が咲かなくなるものもあります。
 一般的には1株に3芽がつくくらいを目安に分けますが、2芽でも、4〜5芽になってもかまいません。基本的には手で分けますが、ハサミやドライバー、古いナイフ、時にはスコップで割り分けたりもします。ギボウシなどの大株では無駄になる芽が出たりしますが、やむを得ません。
 株分けは繁殖のよいキクなどでは毎年、遅いもので4〜5年、普通のものは3年目くらいに行うべきでしょう。

植え付ける場所
 宿根草は種類も多く、性質も実に多様ですから、育てられる場所の条件に合う種類を選んで植え付けるのが成功のカギです。日当たりのよい場所、半日陰、乾燥地、崖地、さらには水湿地など、それぞれに適した種類が見つかるはずです。
 しかし多くの種類がよく育つ理想的な条件といえば、半日は日光が当たり、水はけがよくて、しかも乾きすぎず、適当に肥えた土地です。近くに小川があり、地中に水分が自然にしみ上がってくるような場所では、何も手入れしなくても驚くほどよく育ちます。しかしこのような場所は、地方の田舎にはあっても、現代の都市の中ではまったく無理な条件だといえます。
 
植え込みの準備
 植え込みは春の発芽前後か秋の活動前、あるいは休眠後に行うのが常識です。一度植え込んだら、長いものは4〜5年もそのまま据え置きにするものですから、植え込みの際には十分に元肥を与えておくことが必要です。
 まず場所を決めたら、大きな石や草木の根を取り除き、土の酸性を中和するために消石灰か苦土石灰を、1平方mに200gほどまき、30cmほどの深さに掘り起こしておきます。その後1週間くらいたったら、堆肥(有機物ということで、乾燥牛糞や腐葉土でもよい)を1平方mにバケツ1杯余り、緩効性の粒状化成肥料を200g程度全体にまき、よく耕して混ぜ込んでおきます。さらに1週間ぐらいたち、肥料と土がよくなじんだところで植えるのが、基本的な方法です。
 忙しい現代人の私たちは、これを1日でやってしまうことがままありますが、生の油かすを肥料に入れる(発酵して根を傷める)ようなことさえしなければ、まず枯れる心配はないでしょう。

植え込み方
 適期によい苗を植えるのが基本です。株はよく調べ、腐った部分がないかどうか、白絹病の白い菌糸が取りついていないか、腐った古根や、ネマトーダが寄生したコブがないかを確かめ、よい芽が揃っていることも確認します。
 何種類も植える時は、育った時の草姿(特に草丈)を考え、低いものは前に、高いものは後方や中心に植えます。同時に花の形や色、開花期を考えて、効果的な配置をしなくてはいけません。同時に咲くものを3種類くらいずつ隣り合わせに植えておけば、その折々の見せ場を作ることができます。
 植える間隔は、大株に育った時を考えて広めにします。密植だと、葉が茂った時にお互いの株同士が日照を妨げ、風通しも悪くなって花の咲きを悪くし、衰退を早めます。大型のものは50cm以上、中型で30〜40cm、小型種は15〜30cm間隔とします。また、乾燥地ではやや低めに、湿った場所では株元を高めに植える工夫をします。
 植え穴は根株より大きめに掘り、根は深くまた広げて据え、いったん土をかけて根と株元をよく押さえ、根と土を密着させると根つきが早いものです。水は初めに十分与えておけば、あとはほとんど必要ありません。植え込み直後にはたっぷり与えて土を落ち着かせ、水がすっかり引いたら、根元が少し高めになるように整地します。その後は、雨が降らずに乾燥した時だけ水を与えますが、休眠中のものはほとんど雨だけで大丈夫です。
 秋植えでは、その後の冬の寒さと乾燥により、根張りの不十分な株は害を受けることがあります。株の回りに落ち葉や刈り芝、ピートモス、腐葉土などを寄せてやり、ササや木の枝を株の北側に立てて風よけにすると役立ちます。 


大株に育つギボウシ 普通は鉢植えで楽しむサクラソウ


鉢作りと大型プランター作り
 大型の宿根草はともかく、ほとんどの宿根草は鉢作りができます。またサクラソウやハナショウブ、キクのように、鉢作りが主流のものもあります。最近はフラワーポットや大型のプランターにいろいろ種類を寄せ植えすることが盛んになりました。
 単独で育てるには、小型の種類は5号鉢、中型で6〜7号鉢、大型のものは10号鉢以上に植えます。鉢作りで大切なことは、水はけよく植えることで、そのためには鉢底にゴロを2段くらい入れて排水層とします。ゴロとは土塊や鉢かけなど、指先大で多孔質のものがよく、木炭や軽石、発泡スチロールをちぎったものも使えます。アサリなどの貝殻は、すき間がたくさんできるので大丈夫ですが、堅い砂利はだめです。
 その上に入れる培養土は、草花が根を張って育つ土ですから、栄養分を含むよい土を使います。その地方の基本的な土、つまり庭土、畑土、田土、山土、赤土などを基本土として、これに30%ほどの腐葉土を加え、緩効性の化成肥料などをよく混ぜ合わせ、培養土として使います。
 土は細かくふるったり、微粒を除く必要はなく、大粒のものも入っている方がよいのです。関東では赤玉土が売られていてよく使われますが、私は建設残土といわれる赤土を手に入れ、2cmの亀甲目の金網を通したものを基本土とし、これに自家製の腐葉土を3割混ぜて培養土を作ります。
 培養土は一度に作っておいて、土と有機物や肥料分がよくなじんだものを使うのがよいのです。それぞれの土地で手に入りやすい基本土を使っていただくのがよいでしょう。
 植え方は、まず鉢底の穴に網などを当て、ゴロを2段ほど敷いたら少し培養土を入れます。その上に根株を置いて深さを調節し、根を広げて位置を定め、土をかけて回りから押さえ、さらに土をかけて中央部から少し高めになるようにならします。この時、土の面が鉢の上端より2cmほど低くなっていないと、水がしみ込まずに流れ出て、土もこぼれてしまいます。
 水は十二分に、鉢底から流れ出るくらい与えます。もし水が鉢内にたまって、鉢穴からすぐに流れ出ないようであれば、培養土が悪いか植え方が間違っているのですから、やり直します。
 植え込みの深さは、鉢植えでは浅くなりがちですが、浅すぎると根が乾燥しやすく、生育が中断することがあります。
 大鉢やプランターでの植え込みも、基本的にはまったく同じです。寄せ植えの際に注意すべきことは、同じ環境を好む種類を組み合わせることと、生長した時の草姿・草丈を考えて、前面は低く、中央や後方が高くなるように配置することです。もちろん、花や葉の色の調和も大切です。一年草の寄せ植えとは違って、宿根草では、生長によって草姿が大きく変化することを知っていることが大切で、何年もの経験がないと成功はむずかしいでしょう。

手入れ
 一度植え込めば、あとはほとんど手入れの必要がないのが、一般的な宿根草の長所ですが、なお一層美しく育てるためには、いろいろな手入れがあります。
 まず、多数の茎が立ち、お互いに日当たりと風通しを妨げると生育が悪くなるので、芽が伸び始めたところで、細いものや曲がったものなどを根元から取り除いてしまいます。
 また、シャクヤクのように、一つの花を立派に咲かせたいものは、中心の蕾1個を残して、それ以外の蕾を全部かき取ってしまいます。
 草丈が高くなりすぎるものは、中途で摘芯(芽つみ)して枝分かれさせると、草丈を低く抑えるだけでなく、花をたくさん咲かせることもできます。

花が終わったら
 翌年も株が残る宿根草にとって、花が終わったあとの手入れはとりわけ大切です。株を充実させ、翌年元気よく育つ芽を育てておかなくてはならないからです。
 花が終わるとすぐに、タネがつかないように花がらあるいは花茎を取り除き、お礼肥という追肥を与えて元気をつけます。葉はできるだけ多く残して茂らせます。
 冬になって地上部が枯れたものは、地際で切り取って清掃し、病害虫発生のもとをなくしておきます。生育中でも、枯れた茎や枯れ葉、黄色になった葉などは、役目が終わっているので取り除きます。

元肥と追肥
 植え替えをしない株では、春の芽立ち前(関西から関東では3月初めごろ)に、その年1年の原動力となる元肥を施します(ただしシャクヤクでは秋の10月上中旬)。株の回りに2〜3個所浅い穴や溝を作り、堆肥と5〜10gほどの緩効性化成肥料を混ぜて埋め戻しておきます。堆肥といったのは有機物のことで、市販の堆肥や腐葉土、腐植土、乾燥牛糞などを使います。堆肥とはいっても肥料分は少なく、根張りをよくしてくれるものです。
 生長の途中で与える肥料を追肥といい、花が終わった直後のお礼肥や、枝を切り詰めて再び芽を勢いよく出させるための芽出し肥などがあります。これはすぐに効果が出るような速効性のものがよく、薄い液肥(1000倍くらいのもの)を1〜2回、または緩効性の化成肥料を少量与えます。 

病気と害虫
 植物がある以上、病気と害虫は必ず発生します。そこで予防に努めることと、発生したらすぐに防除できるように準備しておくことが大切です。
 ムシの害は、発生してからでもすぐに対処すれば駆除できます。アリマキ(アブラムシ)は何にでもつきますが、浸透性の殺虫剤を根元にまいておけば容易に防除できます。
 高温と乾燥のはげしい都市の中では、ダニ類が多く発生して汁液を吸い、葉が黄褐色となって株が弱ります。殺ダニ剤を使い、乾燥時には毎日葉の裏から霧水をかけると忌避が可能です。
 葉を食べるのはヨトウムシなどのイモムシ類で、葉がかじられ、糞が落ちているので分かります。小さい幼虫のうちなら、浸透性殺虫剤の水和剤を茎葉に散布しておくと駆除できますが、大きく育ったムシは手で取るのが一番です。ヨトウムシなら夜間に見回るか、地面に浅く潜っているのを見つけて捕殺します。


灰色かび病(ポトリチス病)が発生しやすいシャクヤク

 病気はカビとバクテリア(細菌)の寄生で、予防が第一です。よく出るのは灰色かび病(ボトリチス病・シャクヤクに多く発生する)と、若い茎葉に白いカビが生えるうどんこ病(フロックスやバラによく出る)です。ベンレートなどの殺虫剤を散布して予防します。症状が進んで黄化した葉は落ちるので、見つけたらつみ取って、そのあとに予防薬を散布しておきます。
 恐いのは根につく白絹病や菌核病で、ここ数年の暑い夏のせいか、発生が増えています。未熟な堆肥や腐葉土を用いると発生しますし、よそから苗や鉢植えについてくることも多いように思います。気がついた時はもう末期で、根元の地表面に粟粒ほどの菌核が一面に出ており、根には白い菌糸がまつわりついていますから、残さないようにさらって焼却場へ送ります。鉢土の場合は捨てるか焼くしか方法がありません。庭の場合はロブラールなどをまいて予防したり、木酢液で忌避できないかと試行中です。発生跡地には、最近発売されている粒状石灰チッソが使えるのではないかと思います。
 白絹病や菌核病は、暑さに弱い宿根草類では最も恐ろしい病気といえます。これに侵された株と、バクテリアに侵されたもの、ウイルスの発生した株は、できるだけ早く焼却場へ送るのが、他の植物を安全に育てるための良策です。
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