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2013.04.10
タキイ種苗×農研機構東北農研 共同研究成果
ホウレンソウは「寒締め栽培」で機能性成分も増加
寒締め栽培※1では、糖度が増し良食味となることに加え
“ルテイン等の機能性成分の増加に有用であること”が解明されました
タキイ種苗は、農研機構東北農業研究センター(以下:東北農研)との共同研究※2で、ホウレンソウの寒締め栽培を行うことで糖度が増し食味がよくなることに加え、ルテインなどのカロテノイド色素も増加することを明らかにしました。

「寒締め栽培」は東北農研で開発された技術であり、ホウレンソウは糖度が増し、食味がよくなることがすでに明らかになっています。今回、ホウレンソウの寒締め栽培による各機能性成分(カロテノイド、ポリフェノール)や抗酸化能※3(H-ORAC値)の推移を調査した結果、寒締め栽培が食味の向上だけでなく機能性成分の増加にも有用であることが解明されました。

岩手県における調査の結果、ホウレンソウは寒締め栽培によって総カロテノイド量が増加傾向を示し、またH-ORAC値は最大で2倍程度に増加しました。またビタミンC含量も大きく増加し、ポリフェノールとともにH-ORAC値の上昇に寄与していることが示されました。糖はこれまでの報告と同様、シュークロースの増加が大きかったという結果が得られました。

ホウレンソウはカロテノイドの一つであるルテインを多く含む野菜として知られています。ルテインは失明の原因として患者数が増加して問題となっている加齢黄斑変性症※4の予防効果が期待され、注目が集まっている機能性成分※5ですが、本研究により寒締め栽培によってこの機能性成分も増加されることがわかりました。
本研究で用いられたタキイ種苗のホウレンソウ品種『弁天丸』は良食味、高ルテインの品種ですが、寒締め栽培でさらにその特性を生かせることが期待できます。
ホウレンソウ品種『弁天丸』は、寒締め栽培によってさらにカロテノイド量(ルテインなど)も増加
なお、本研究の一部は農林水産省委託プロジェクト「食料生産地域再生のための先端技術展開事業」の予算により実施し、園芸学会平成25年春季大会(2013年3月23日〜24日/於:東京農工大学)において発表されました。
講演タイトル: ホウレンソウの寒締め栽培による機能性成分の推移 
演者: 渡辺 満(1) 清水 恒(1) 六角 啓一(2) 片岡 園(3) (1,東北農研 2,タキイ種苗 3,野菜茶研)
タキイ種苗では、「野菜の消費拡大」、「健康で豊かな食生活」を目指し、野菜の機能性成分に注目し、従来品種よりも機能性成分が豊富に含まれる「ファイトリッチシリーズ※6」を展開しています。
今回の研究をもとに、おいしさに加え身体によいとされる成分を豊富に含む品種の育成を推進していきます。
ファイトリッチシリーズ資料
<注釈説明>
※1 寒締(かんじ)め栽培 ホウレンソウやコマツナなどが寒さに耐えるために葉に糖などを蓄える性質を利用して、ハウスの扉や窓を開放して冬の冷たい空気にさらすことにより、通常のものより甘くする栽培方法。農研機構東北農業研究センターが開発した栽培技術で、糖分以外にビタミンC含量も増加することが知られている。
※2 研究方法 ホウレンソウ(品種:『朝霧』『まほろば』『若草』)を寒締め栽培区、対照区の2区画に播種し、寒締めを行うまでは通常栽培を行った。寒締め7日後、18日後、33日後に収穫をし、収穫物を凍結乾燥後、カロテノイド含量はHPLC法、ポリフェノール含量はフォーリン・デニス法、抗酸化能はORAC測定によりH-ORAC値を算出した。また、糖、ビタミンC、シュウ酸についても分析を行った。
認められた結果を実証するため、品種を変えて(『弁天丸』『オーライ』)寒締め栽培を実施し、寒締め20日後に収穫、分析を実施した。その結果、寒締め区では総カロテノイド値はいずれも増加する傾向を示し、ホウレンソウのH-ORAC値は最大で2倍程度に増加した。総ポリフェノール量もH-ORAC値と同程度に増加し、ビタミンC量も増加した。えぐ味の元といわれている、シュウ酸は寒締め前後で差が見られなかった。
総ポリフェノール
H-ORAC値
(上記のデータはすべて『弁天丸』の調査データ、寒締め20日後)
※3 抗酸化能(H-ORAC値) ORACとはOxygen Radical Absorbance Capacity(=活性酸素吸収能力)の略であり、ORAC値とは、食べ物に含まれるフラボノイド、カロテノイドなどの総合的な抗酸化物質の能力を数値化したものです。ストレス、紫外線、喫煙などの影響で活性酸素種(ROS)が増えすぎると、体の中のDNA、タンパク質などにダメージをあたえ、その結果、細胞に傷害をもたらします。ROSによるダメージは、多くの病気の状態(癌、糖尿病、心疾患、動脈硬化、神経変性病など)を悪化させることがわかっています。
※4 加齢黄斑変性症 加齢により網膜の中心部である黄斑に障害が生じ、見ようとするものが見えにくくなる病気。欧米では失明原因の第一位とされる珍しくない病気であり、日本でも高齢化と生活の欧米化により近年急激に増加しつつあります。ルテインやカロテンといったカロテノイド色素による加齢黄斑変性症の予防効果が示されており、注目されております。
※5 機能性成分 食品中の生体調節機能に関わる成分を機能性成分といいます。ポリフェノールやカロテノイド、イソチオシアネートなどは、様々な生体調節機能を示す代表的な機能性成分です。
※6 ファイトリッチ 「野菜の消費拡大」「健康で豊かな食生活」を目指し、野菜の5つの色素成分に着目して機能性の研究・品種開発を行い、従来品種よりも機能性成分が豊富に含まれるタキイ種苗の野菜シリーズです。
(1)「ファイト」:植物(=phyto)、おいしい野菜で食を応援する。
(2)「リッチ」:従来品種より機能性成分が豊富(=rich)に含まれる。
(1) + (2)=健康で豊かな食生活を目指すという願いを込めた造語です。
商標登録(登録第5367922号、平成22年11月12日取得)
<ホウレンソウ『弁天丸』参考資料>
◆『弁天丸』の主な特長
べと病レース1〜10に抵抗性を持つ秋冬どり種。
葉柄がしなやかで折れにくく、結束調整作業が容易で、草姿は立性で収穫しやすい。
耐寒性が強く、厳寒期に発生しやすい凍害による葉柄部の破裂が起こりにくい。根張りが強く秋の多雨などによる過湿害にも比較的強い。
ホウレンソウ特有のアクが少なく、あっさりした食味で、低温下では特に葉柄の甘みが増す。
葉は濃緑色で葉面のしわが少なく、荷姿良好。
ホウレンソウのべと病はレース分化が起こりやすく、べと病抵抗性品種といえども登録農薬による 早期防除を心がけ、総合的なべと病対策に努めることをお奨めします。
『弁天丸』は、従来品種よりルテイン含有が多い(2012年東北農研調べ)
ホウレンソウ『弁天丸』について