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2026.08.06
“悩み”に応える、タキイの品種開発力
Vol.3 猛暑でレタスが“結球しない”問題に!レタス「ヒートガイ」

昨今、猛暑などの気候変動や物流環境など農業を取り巻く環境は大きく変化しており、生産現場に影響を与えています。また、単身世帯・共働き世帯の増加などによるライフスタイルの変化は流通や消費者の購買行動にも影響を与えています。
タキイ種苗では、こうした時代の変化に対応するため、品種開発に取り組んでいます。本シリーズでは、「なぜその品種が生まれたのか」という開発背景に着目し、社会課題やニーズとの関わりとともにご紹介します。
■“栽培環境”の変化 − 冷涼を好むレタスに厳しい高温 −
レタスは、サラダに欠かせない野菜の一つであり、近年は外食や中食の需要拡大を背景に、これまで以上に年間を通じた安定供給が求められています。一方で、レタスは冷涼で乾燥した気候を好むため、高温の影響を受けやすい作物です。
そのため夏場は、標高の高い高冷地や高緯度地域を中心に栽培されています。主要産地の一つである長野県では5月頃から出荷が本格化しますが、近年は冷涼地でも猛暑の影響による生育停滞や品質低下がみられ、生産量の減少や価格高騰につながることがあります。
さらに、秋に産地が一般地(※1)や暖地へ移る時期も、10月まで残暑が続く年が増えており、高温による栽培リスクはレタス生産地全体の課題となっています。
(※1) 一般地とは、栽培地を分類するうえで、高冷地・冷涼地・暖地などを除く地域で、一般には関東以西の平坦地をさします。

玉レタス栽培において、近年の暑さが引き起こす問題の1つに「不結球 」があります。不結球とは、本来であれば丸くしまった玉状になるはずのレタスが、十分に結球しない現象を指します。
レタスの結球には、外側の葉が大きく育ち、葉の立ち上がりにより、内側が遮光されることが重要です。しかし、近年は高温や干ばつの影響で生育が停滞し、葉の大きさや形、葉の立ち上がりが不十分になることで、結球の遅れや不結球が発生しやすくなっています。
結球が遅れると、計画的な出荷が求められる産地では収穫時期の調整が難しくなります。また、不結球のレタスは商品価値が低下し、廃棄につながる場合もあります。有効な対策の一つとして散水が挙げられますが、散水設備が整っている圃場は限られています。また、散水によって過度な多湿状態になると、べと病や軟腐病などの病害が発生するリスクが高まるため、散水による対策にも課題があります。
このように、気候変動の影響が大きくなる中、農業現場では従来の栽培技術だけでは対応が難しい課題も増えています。そのため近年は、環境変化に適応できる品種そのものの重要性が高まっています。
レタス「ヒートガイ」の開発
こうした栽培現場の課題に対応するため、タキイ種苗では、高温期でも安定して結球・肥大するレタス品種「ヒートガイ」を開発しました。
「ヒートガイ」は2024年に発表した品種で、高温条件下でも結球と肥大が安定しやすい特長をもっています。そのため、レタスの生育にとって厳しい夏の高温・干ばつ条件下でも、生産量や品質の安定が期待できます。
また、雨が続く条件下では斑点細菌病や軟腐病、べと病などの病害が発生しやすくなりますが、「ヒートガイ」はこれらの病害にも比較的強く、高温と病害の両方に備えることから、安定した出荷につながることが期待されています。
特に、高冷地の7〜9月、準高冷地の7月、9〜10月、一般地・暖地の10月中下旬収穫など、耐暑性と耐病性の両方が求められる栽培環境で、その特長を発揮します。
左:ヒートガイ、右:他品種
調査日:2024年9月27日
調査場所:茨城県
左:他品種、右:ヒートガイ
調査日:2022年9月17日
調査場所:長野県
「高温期でも結球が安定する」という特長は、単に栽培しやすくなるだけではありません。品質の維持や安定供給にもつながることから、気候変動の影響が大きくなる中、品種開発においてますます重要な価値となっています。
ヒートガイ レタス | 品種カタログ |
タキイの野菜【タキイ種苗】
■生産現場での「ヒートガイ」評価
〇JA長野八ヶ岳
JA長野八ヶ岳管内は、日本屈指の高原野菜の産地です。冷涼地として知られる八ヶ岳周辺でも温暖化の影響が顕在化しており、かつて6℃台後半であった年間平均気温が2023年には8.8℃まで上昇しています。
〇JA長野八ヶ岳組合員
2023年の夏は同じ時期に栽培していた他品種が猛暑で不結球を起こす中、「ヒートガイ」は結球しました。2024年は干ばつが予想される時期の出荷分や、これまで不結球が出ていた7月上旬〜8月上旬の定植(※1)分は、すべて「ヒートガイ」に切り替えました。
(※1) 定植とは、苗を畑に植える作業。
JA長野八ヶ岳 猛暑と不結球を乗り越え 新品種「ヒートガイ」八ヶ岳に登場! | 産地ルポ | 最前線WEB - タキイ種苗
〇JA岩井
当地の秋冬レタスは、10〜11月を中心に、12月まで出荷しています。ここ近年は温暖化の影響で最高気温が35℃を超える日が多くなっています。特に10月に収穫するレタスは、生育期間となる8月、9月は厳しい暑さの中での生育となり、不結球、分球
(※1)、抽苔
(※2)などの高温障害の発生が多くなり、出荷量が大幅に低下することが問題となっています。
「ヒートガイ」を試験的に導入した管内の生産者からは、「高温期でも不結球株や分球株の発生が少なかった」「玉の肥大は旺盛だが、抽苔しない」と結球性や晩抽性
(※3)を評価する声があり、2025年産から本格導入を進めています。
- (※1) 分球とは、複数に分かれて結球すること。
- (※2) 抽苔とは、気温や日長などにより花茎が伸びだすこと。
- (※3) 晩抽性とは、抽苔の遅い性質。
JA岩井 高温条件下で結球が安定しやすい「ヒートガイ」の導入で初秋の安定出荷を目指す | 産地ルポ | 最前線WEB - タキイ種苗
■“栽培環境の変化”に応える品種開発へ
近年、農業現場では猛暑や豪雨などの異常気象が頻発し、栽培環境は大きく変化しています。これまで安定して栽培できていた地域や作型でも、高温や多湿による病害の発生、品質低下、収量減少などが課題となっています。
こうした中で、品種開発にも新たな役割が求められています。従来の収量性や食味に加え、高温環境への適応や病害への耐性など、変化する栽培環境に対応できる特性が重要になっています。
高温期でも結球と肥大が安定するレタス「ヒートガイ」も、こうした時代の変化を背景に開発された品種の一つです。タキイ種苗では今後も、気候変動によって変化する生産現場の課題解決に向け、安定生産や品質維持に貢献する品種開発に取り組んでまいります。
※本記事に掲載の比較結果は、当社試験又は栽培現場での評価に基づくものです。栽培条件や環境等により結果が異なる場合があります。
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