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2026.09.10
“悩み”に応える、タキイの品種開発力
Vol.4 夏ハクサイを襲う猛暑に!ハクサイ「黄づつみ 67」

昨今、猛暑などの気候変動や物流環境など農業を取り巻く環境は大きく変化しており、生産現場に影響を与えています。また、単身世帯・共働き世帯の増加などによるライフスタイルの変化は流通や消費者の購買行動にも影響を与えています。
タキイ種苗では、こうした時代の変化に対応するため、品種開発に取り組んでいます。本シリーズでは、「なぜその品種が生まれたのか」という開発背景に着目し、社会課題やニーズとの関わりとともにご紹介します。
■“栽培環境”の変化 − 高冷地でも“夏の厳しい暑さ” −
ハクサイは、鍋料理だけではなく浅漬けやキムチなどの加工用にも広く利用され、年間を通じた安定供給が求められる野菜です。
ハクサイは15〜20℃程度の冷涼な気候を好むため、夏場は標高の高い高冷地が主要な産地となります。高冷地では4月頃から定植(※1)を開始し、6月下旬から積雪前の10月中旬頃まで収穫が続くことから、夏から秋にかけての食卓を支える重要な産地となっています。
しかし、近年では高冷地でも30℃を超える日が珍しくなくなり、夏の厳しい暑さがハクサイの生育に大きな影響を及ぼしています。これまで冷涼な気候を生かして安定生産を担ってきた産地でも、高温による栽培リスクへの対応が重要な課題となっています。
(※1) 定植とは、苗を畑に植える作業。

高冷地のハクサイ栽培では、近年の暑さによる品質低下の要因として、「生育不良」と「病害」の二つが大きな課題となっています。
品質のよいハクサイにはしっかりとした「結球」が必要です。結球とは葉が集まり玉状になることを指します。この結球には、適した気温の中で葉が十分に生育することが重要です。しかし、近年は高温の影響で内側の新しい葉の生育が遅れることで、結球に遅れが生じたり、内側の葉の詰まりが不十分となるなどの「生育不良」が生じて品質の低いハクサイになることがあります。
また、「病害」の問題も暑さで深刻化しています。暑さで株が弱ることに加え、高温多湿の環境では病原菌も増殖しやすくなるため、病害のリスクが高まります。
主に問題となるのが、「黒斑細菌病」、「根こぶ病」、「軟腐病」です。黒斑細菌病は高温や局地的な大雨などの影響で発生が増えており、葉の奇形や先端部の枯死が生じることで、生育遅延や収穫量の低下につながります。根こぶ病は名前のとおり根にコブを形成することで根の養分吸収を妨げ、生育不良を招きます。軟腐病は高温多湿で発生しやすく、株が腐敗してしまい場合によっては商品価値を失います。
こうした病害を防ぐためには、株の健全な生育が重要です。しかし、近年は高温の影響で根張りが十分ではなく、株がバテてしまうことで病害にかかりやすくなっています。そのため、暑さによって増加する病害への対策は、ハクサイ栽培における重要な課題となっています。
ハクサイ「黄づつみ 67」の開発
こうした栽培現場の課題に対応するため、タキイ種苗では、高温条件下でも品質を維持しやすいハクサイ品種「黄づつみ 67」を開発し、2026年に発表しました。
開発ポイント① 高温乾燥条件下でも結球が安定
「黄づつみ 67」は、高温条件下でも内側の葉が生育しやすく、安定して結球する特長をもっています。そのため、暑さによる結球不良や品質低下が起こりにくく、収穫適期を迎えた後も品質を維持しやすいため、当初の計画とのズレが少ない収穫・出荷につながりやすいです。
葉の詰まり具合の調査
左 他品種、右 黄づつみ 67
調査日:9月12日
調査場所:長野県
開発ポイント② 黒斑細菌病・根こぶ病に強い
「黄づつみ 67」は、黒斑細菌病の耐病性を備えています。また、軟腐病などの細菌性病害にも比較的強いです。葉が肉厚で立性の草姿のため、雹や豪雨などによる傷がつきにくく、傷口からの細菌病などの二次感染の被害軽減も期待できます。さらに、根こぶ病耐病性をもつので、根の張りがよく外側の葉のしおれの軽減につながります。これらにより、高温期でも品質を維持しやすい特長をもっています。
軟腐病、黒斑細菌発生調査
左 他品種、右
黄づつみ 67
調査日:2025年9月12日
調査場所:長野県
根こぶ病発生調査
左 他品種、右 黄づつみ 67
調査日:2025年7月7日
調査場所:長野県
※根こぶ病は菌の種類や密度によって発病する場合があり、「黄づつみ」シリーズでも罹病する事例を確認しています。薬剤防除、耕種的防除を組み合わせた総合的防除を基本としてください。
気候変動の影響が大きくなる中、品種開発には収量性や食味だけでなく、高温環境への適応や病害への耐性など、安定した品質を維持できる特性も求められるようになっています。「黄づつみ 67」の特性も、こうした時代の変化に応える重要な価値の一つとなっています。
黄づつみ 67 ハクサイ | 品種カタログ |
タキイの野菜【タキイ種苗】
■生産現場での「黄づつみ 67」の評価
〈高冷地のハクサイ生産者①〉
夏に栽培するハクサイは品質が保ちにくく、出荷できないものが増えてしまうのが悩みでした。しかし、「黄づつみ 67」は形状が安定し細菌性病害に強いので、最も栽培が難しい暑い時期を乗り越えた9月にも出荷することができます。
〈高冷地のハクサイ担当者・生産者②〉
近年は高冷地でも、10年前では考えられない暑さになっており、8月のお盆過ぎでも32〜33℃、35℃になることも珍しくなくなりました。これまで当地の気候に適して良作だった品種でも、暑さが厳しいと外側の葉ばかりが生育してしまうことで結球に時間がかかり、収穫時の重量が軽くなってしまうなど、気候に対応できなくなってきました。「黄づつみ 67」は、栽培初期に葉数を増やすことができないと、サイズが小さくなる傾向があるものの、初期生育を順調に進められればそのあとは順調に内側の葉が詰まり、重量のあるハクサイの収穫につながります。また、梅雨明けの高温ではしなびの発生にも悩まされますが、「黄づつみ 67」はしなびに強いところも安心感があります。
■“栽培環境の変化”に応える品種開発へ
近年、農業現場では猛暑や豪雨などの異常気象が頻発し、栽培環境は大きく変化しています。これまで安定して栽培できていた地域や作型でも、高温や多湿による病害の発生、品質低下、収量減少など、新たな課題への対応が求められています。
こうした中で、品種開発にも新たな視点が求められています。従来の収量性や食味だけでなく、高温環境への適応や病害への耐病性など、変化する栽培環境の中でも安定した品質を維持できる特性が重要な価値となっています。
2026年に新発表したハクサイ「黄づつみ 67」も、こうした時代の変化を背景に開発された品種の一つです。高冷地でも猛暑の影響が避けられない時代を迎える中、タキイ種苗では今後も、気候変動によって変化する生産現場の課題解決に向け、安定生産や品質維持に貢献する品種開発に取り組んでまいります。
※本記事に掲載の比較結果は、当社試験又は栽培現場での評価に基づくものです。栽培条件や環境等により結果が異なる場合があります。
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