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医・食・農一体の取り組み
〜京都大原記念病院との連携が生んだグリーン・ファーム・リハビリデーション®〜
第2章 グリーン・ファーム・リハビリテーションの実際(農園編)
2作りやすい野菜(品種)を選ぶ
年間24種類47品種の野菜を3期にわたって栽培試験してきた結果、リハビリテーションに向く野菜の種類や品種が絞り込めてきました。夏野菜と秋冬野菜にわけてご紹介しましょう。
作りやすい品種
なにはともあれ、これが一番大切!
病院内の農園ですから、極力農薬の使用をなくすために、病気に強く草勢が強い品種を選定しました。特に夏野菜は、土壌病害の被害を避けるため、病気に強い接ぎ木苗※を購入しました。
※接ぎ木苗とは?
「接ぎ木苗」とは、病気や草勢旺盛な台木に育てたい穂木を接なぎ合わせた苗で、自根の苗より割高だが、病気に強く、栽培しやすい。
作りやすい品種
収穫物の一部は同院や関連施設で食事として提供するため、機能性成分が多く含まれる美味しいファイトリッチシリーズを優先的に取り入れました。機能性成分は色として表れることが多く、彩りは調理時の食欲増進にもかかわり、残食率低下にも寄与することになります。
夏の農園
初夏は作物がどんどん大きくなったり、鮮やかに色づく様子が目につきやすく、農園内を歩きたい患者様が増える時期
特徴
- 実を食べる野菜が多い
- 管理作業が多い
- 腰高〜背高以上に生長する
- 野菜が多い
- 苗から育てたほうが良い野菜が多い
大原特産の赤紫蘇を生かす
大原の特産。長い期間にわたり、連続的に葉をつまんで収穫できます。収穫後は紫蘇ジュースづくりなどを楽しみました。
地元赤シソ農家様より間引きの余り苗を提供していただき、この苗を定植しました。大原は赤シソ栽培が有名であり、農園でも毎年育てています。赤シソは定植・水やり・除草・収穫と患者様に一部作業を行ってもらいました。特に収穫は指先で摘まんでの作業となり高次脳障害で入院された患者様へのリハビリテーションに適していました。ゼリーとして食事提供しました。
現場の声4
「患者様を農園に誘うために、魅せる工夫を追求」
京都大原記念病院グループ 総務部農園担当 岡本渉 氏
夏は日差しがきついので、患者様を農園内に誘う仕掛けとして、キュウリとマメ類でトンネルをつくりました。夏の強烈な日差しよけになると大好評でした。
秋の農園
タネから育てる野菜が多く、晩夏〜初秋にかけてのタネまきや間引きがリハビリテーション作業として向きます。寒くなるにつれて利用者は減りますが、散歩しながら鑑賞するだけでも、日々の変化に期待が生まれます。
特徴
- 葉や根を食べる野菜が多い
- 管理作業が少なく、鑑賞に向く
- 腰高より低い高さで生長する野菜が多い
- タネから育てる野菜が多い
「秋〜春にかけての農園」
11月まき、5〜6月収穫
「仏国大莢(紫花、つるあり)」
キュウリと並んで、作業療法士の支持No.1の野菜。紫花が可憐で、菜園を歩く患者さんの目を惹いていました。たくさん採れました。
「グルメ(白花、つるあり)」
キュウリと並んで、作業療法士の支持No.1の野菜。歯切れがよく、甘みが強い。スナップエンドウとしては、莢長9-10cmと長めの品種です。
注意点、およびリハビリテーション利用に難しかった野菜
1 夏の農園
ナスやズッキーニはトゲや毛が手・腕に当たり痛いとの声がありました。ナスは「とげなし千両二号」という品種なら、トゲの心配なく安心して作業に入れます。
「苗半作」と言われるくらい苗のよし悪しが生育を左右します。夏野菜は土壌病害の被害が大きいため、病気に強い接ぎ木苗を購入し、定植するのがおすすめです。マメ類は、患者様がタネまきから参加できて、収穫がしやすい野菜です。
2 秋の農園
秋野菜は、早まきや遅まきを避け、タネまき時期・定植時期を厳守することが、立派な野菜を作るための最大のポイントです。
レタス、ミズナなどの葉もの野菜は生で食するものが多いですが、病院では加熱が必要ですので、加熱調理に向く品種が望まれました。
現場の声5
「運動負荷に合わせた調整が可能な野菜」
京都大原記念病院リハビリテーション部 作業療法士 山中卓也 氏
農作業に伴う運動は、「ゆっくり歩く」「しゃがむ」「手を伸ばす」「収穫物を運ぶ」といった要素があり、いずれも運動負荷量がある作業です。中でも、しゃがみながら行う作業は運動負荷量が高く、段階付けとしては難しい部類に入ります。キュウリ・トマト・マメ類(スナップ・キヌサヤ・モロッコ)といった植物体に高低差がある野菜は、患者様の能力に合わせて難易度を調整しやすい作業かと思います。一方、スイカやカボチャ、ズッキーニなど、地這いで育てる野菜は、足場が無く、葉が多くて果実が見つけにくい、収穫しにくいなどの難点がありました。しかし、大きい果実ゆえ、収穫できた時の患者様の喜び度は格別でした。
3 観賞用の花たち
野菜だけでなく、草花の観賞とそのお手入れも心身のリハビリテーションに一役かったようです。特に、秋のコスモス畑での歩行訓練は、同院の風物詩となりつつあります。
現場の声6
「四季折々の花で、施設周辺の景観を美化」
京都大原記念病院グループ 総務部農園担当 榎並宏之 氏
農園の周囲には、草花を植え付けることにいたしました。初春から夏の終わりまではビオラを外周路沿い(写真左)に、秋には農園一面コスモスが満開になり(写真右)、散歩に来られる患者様、ご利用者様、ご家族様にはもちろん楽しんでいただけましたが、関心も一気に高まった気がします。
京都大原記念病院グループ 広報企画担当 祖悠 氏
コスモスの満開時期は、ご利用者がご家族と一緒に散策され、切り花用にと持ち帰られる姿が見られました。
時折、地域住民の方も「散歩をしていると、きれいなコスモス畑が見えたので。」と立ち寄られる姿もあり、関わる人の輪が広がりを見せているように感じています。
農業を基点とする「大原ならでは」の取り組みが広がる中で、広報活動においても様々な機会が増加しています。広報活動は社会とのコミュニケーション手段であり、最大のミッションはブランド力向上です。大原に拠点を構える者として、地域のアドバンテージを活かすこと、すなわち「大原ならでは」の取り組みは「京都大原記念病院グループならでは」と置き換えることができるものと考えています。
これを念頭に、引き続き今後の挑戦を継続的に追い続けようと考えています。