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野菜
病害虫・生理障害
各種元素の過不足と病害虫被害発生程度の関係
農薬の使用量をできるだけ少なくするために、無機元素と病害虫被害の関係も知っておきたい。肥料(無機元素)のやり方で病害虫の発生が多くなったり、少なくなる。下の表に、各種無機元素と病害虫の関係を示した。チッ素のやりすぎは一般に病虫害被害を増加させるが、カルシウムやケイ素は作物の病虫害抵抗性を増加する。マンガンやホウ素のような微量元素の欠乏も病気や虫にかかりやすくなる。土壌のpHも大切ですよ。
各種研究論文より作成(渡辺和彦)
元素 | 作物名 | 病名等 | 分類 | 傾向 | 備考(文献等の内容) |
---|---|---|---|---|---|
チッ素 (N) |
タマネギ | 貯蔵中の腐敗 | 細菌等 | N増で被害増 | 三要素を検討した結果、N増加で被害増大 |
イネ | いもち病 | 糸状菌 | N増で被害増 | N多施肥でSiとリグニン含量が低下し、被害増加 | |
作物一般 | さび病 | 絶対寄生菌はN施用で被害増大の傾向有 | |||
うどんこ病 | N欠では病原菌も生育不良 | ||||
イネ | セジロウンカ | 昆虫 | 若い葉を好む。可溶性N好む | ||
コブノメイガ | 葉色の濃い葉を好む | ||||
カボチャ | ヘリカメムシ | N欠で被害少、N多、S欠、K欠で被害増加 | |||
テンサイ | ウイルス病 | ウイルス | N欠で被害増 | N施肥で生育旺盛になると症状が隠れる | |
トマト | 斑点細菌病 | 細菌 | 細菌病の多くもN施用で若干の被害軽減傾向有 | ||
ゼラニウム | 細菌病 | N適量が良い | |||
作物一般 | 斑点病 | 糸状菌 | 条件寄生菌はN施用で被害軽減の傾向有 | ||
萎凋病 | 例外もあるが、生育旺盛な作物は被害少 | ||||
N施肥法 | ジャガイモ | そうか病 | 放線菌 | N欠で被害増 | 硫安の作条施用が土壌pHを低下し、Al活性化し被害減 |
コムギ | 立枯病 | 糸状菌 | 施肥時期により土壌pH低下し、Mn増加で被害減 | ||
うどんこ病 | pH低下でSi吸収増加のため被害軽減 | ||||
リン (P) |
ジャガイモ | そうか病 | 放線菌 | P増で被害増 | リン過剰で土壌中のAlが不活性化し、被害増 |
アブラナ科野菜 | 根こぶ病 | 糸状菌 | Pは土壌コロイドの陽荷電を減少させ、休眠胞子が土壌に吸着されにくくなるため | ||
タマネギ | 乾腐病 | リン過剰(130r以上)で被害多発 | |||
コムギ | 赤さび病 | P欠で被害増 | 三要素試験の無リン酸区で多発の事例あり | ||
キュウリ | 炭疽病 | 下位葉に50mMのK2HPO4またはNaHPO4散布で上位葉の発病抑制、うどんこ病には効果低い | |||
トウモロコシ | さび病 | 100mM葉面散布で被害軽減、病害抵抗性誘導 | |||
ブドウ | うどんこ病 | リン酸カリウム25mM散布で、被害軽減 | |||
(亜リン酸) | トマト | 根腐疫病 | 亜リン酸0.1mMで防除効果殺菌と病害抵抗性誘導 | ||
根腐病 | 養液栽培で、1mM亜リン酸カリウムで被害軽減 | ||||
カリウム (K) |
作物一般 | 斑点細菌病 | 細菌 | K欠で被害増 | K効果は生育適量まで、それ以上は効果認められない |
うどんこ病 | 糸状菌 | ||||
黒斑病 | |||||
イネ | 小黒菌核病 | ||||
ごま葉枯病 | |||||
コムギ | 黄さび病 | ||||
バミューダグラス | |||||
アブラヤシ | 萎凋病 | ||||
ダイズ | 黒点病 | 莢に生じる本病害は、K多量施用効果も認められている | |||
リンゴ | 根腐れ線虫 | 線虫 | K欠乏では被害大、K施用で被害軽減 | ||
ワタ | 根こぶ線虫 | K十分だと、線虫の数は多くても被害少ない | |||
カシの木 | カイガラムシ | 昆虫 | K欠土壌で被害大、N、Mg施用は被害を増大 | ||
イネ | トビイロウンカ | K欠乏では葉にアミノ酸多く、吸汁昆虫はそれを好む | |||
イオウ (S) |
カボチャ | ヘリカメムシ | 昆虫 | S欠で被害増 | S欠乏では、可溶性N増大し被害増。S欠はよくない |
カルシウム (Ca) |
トマト | かいよう病 | 細菌 | Ca欠で被害増 | Ca供給量増加で被害減、抵抗性品種はCa吸収多い |
青枯病 | Ca供給量増加(水耕20.4mM)で被害軽減 | ||||
インゲンマメ | 細菌病 | Ca含量増で、ペクチン分解酵素活性低下し被害減 | |||
ジャガイモ | 軟腐病 | Ca含量増加で被害軽減 | |||
ジャガイモ | そうか病 | 放線菌 | pH上昇で被害増 | 土壌pH上昇でAl3+不活性化し、菌増殖 | |
コムギ | 立枯病 | 糸状菌 | アルカリで土壌中の可溶性窒素が増え被害増加 | ||
ダイズ | 菌核病 | Ca欠で被害増 | Ca供給量増加で被害減、生理障害も減る | ||
トマト | 萎凋病 | 砂耕Ca1000ppmで被害軽減、pHは無関係 | |||
ピーマン | 白絹病 | 低pHで被害大、高pHで被害減少 | |||
ハクサイ | 根こぶ病 | 高pHで被害軽減、Ca供給量増加も関与 | |||
インゲンマメ | リゾクトニア根腐病 | Caがペクチン分解酵素活性を阻害 | |||
タマネギ | 黒かび病 | X線無機元素分析によると角皮層のCa含量低下が要因 | |||
レタス | 灰色かび病 | 養分バランス実験でCa含量低下で被害増 | |||
リンゴ | 黄腐病 | Ca含量大で貯蔵腐敗減、前処理効果有 | |||
塩素 (Cl) |
オオムギ | 根腐病 | 糸状菌 | Cl欠で被害増 | 体内の水分バランス、Mnの移動性の改善等が耐病性を増加すると考えられているが、機作は不明 |
コムギ | 立枯病 | ||||
赤さび病 | |||||
マンガン (Mn) |
テンサイ | ウイルス病 | ウイルス | Mn欠で被害増 | Mn欠と症状が類似、しかし、Mnの葉面散布効果有 |
ジャガイモ | そうか病 | 放線菌 | pH低下のみでなく、Mn施用も効果有 | ||
トウヒ | 心腐症 | 糸状菌 | Mn欠で被害増大、Mnが制菌作用 | ||
コムギ | 立枯病 | 菌がMnを不溶性化、Mn不足でリグニンが減少し被害増 | |||
キュウリ | うどんこ病 | 0.0025MMnCl2葉面散布で被害軽減 | |||
オオムギ | ムギシストセンチュウ | 線虫 | Mn欠乏で被害増加、Mn正常濃度では影響無 | ||
銅 (Cu) |
コムギ | 茎褐変病 | 細菌 | Cu欠で被害増 | Cu欠乏土壌で被害大、土壌施用より葉面散布が効果有 |
立枯病 | 糸状菌 | Cu欠土壌にCuSO4+CaSO4の土壌施用が効果有 | |||
うどんこ病 | Cuの土壌施用で軽減、Cuはリグニン合成に必要 | ||||
キュウリ | 0.0025MCuSO4葉面散布は、抵抗性を誘導 | ||||
亜鉛 (Zn) |
コムギ | 根腐病 | 糸状菌 | Zn欠で被害増 | Zn欠乏で被害大、Zn効果は生育適量まで |
レタス | ビッグベイン病 (ウイルス病でベクターは糸状菌) |
水耕液に2ppmZn加用で被害減少 | |||
クレソン | ウイルス病でベクターは糸状菌 | 作物の必要量以上のZn施用で被害減 | |||
パラゴムノキ | うどんこ病 | Zn欠乏の葉の表面には糖が溶出し、被害増加 | |||
ホウ素 (B) |
コムギ | うどんこ病 | 糸状菌 | B欠で被害増 | B欠乏では感染も増殖も早い |
キュウリ | 0.005MH3BO3葉面散布で被害軽減 | ||||
ハクサイ | 根こぶ病 | B30ppmは、遊走子嚢の生育を阻害 | |||
アブラヤシ | ハダニ | ダニ | B欠乏では、シアニジン少なく、被害増加 | ||
ケイ素 (Si) |
イネ | 葉しょう褐変病 | 細菌 | Si不足で被害増 | 止葉期の茎葉SiO2含有率6%以上で防除効果 |
いもち病 | 糸状菌 | Siは薬剤散布と同程度、苗いもちを抑制 | |||
紋枯病 | ナイジェリアでの陸稲での試験で効果有 | ||||
ごま葉枯病 | ケイ酸施用により特に大型病斑数が減少 | ||||
小粒菌核病 | Si施用により可溶性窒素含有率が減少し被害減 | ||||
オオムギ | うどんこ病 | 菌侵入細胞にSi集積、自家発光を観察 | |||
コムギ | 菌糸侵入部位にCa、Si、Mnの集積を観察 | ||||
キュウリ | うどんこ病 | Si施用、菌接種で抗菌物質(ラムネチン)生成 | |||
つる割病 | ケイ酸カリ450s/10a施用で発病抑制 | ||||
褐斑病 | ケイ酸カルシウム200s/10a施用で発病抑制 | ||||
根腐病 | 水耕液に1.7mM(100ppmSiO2)施用で発病抑制 | ||||
マスクメロン | うどんこ病 | 17mMケイ酸カリウムの葉面散布で菌抑制 | |||
ペポカボチャ | ケイ素1.7mMを含んだ培養液も効果有 | ||||
イチゴ | 培養液中のケイ酸濃度100ppmで被害皆無 | ||||
バラ | ケイ素の効果有り | ||||
ブドウ | 17mMの可溶性Si散布で、菌抑制 | ||||
イネ | ニカメイガ | 昆虫 | 珪質化の少ない、窒素の高い品種は被害大 | ||
トビイロウンカ | 作物中の可溶性Siを吸汁阻害物質として認める | ||||
コムギ | アブラムシ | 1%Na2SiO3の葉面散布で被害軽減 | |||
ジャガイモ | そうか病 | 放線菌 | Si増で被害増 | 灌漑水SiがAl3+を不活性化、被害増加 | |
アルミニウム (Al) |
ジャガイモ |
そうか病 |
放線菌 |
Al不足で被害増 | 土壌pH低下でAl3+活性化し、菌の増殖が抑制される |